ジビエの流通を変える、ハンターと飲食店をつなぐサービスを全国へ
ジビエの流通を変えようとしているベンチャー企業を紹介します。 北海道に生息する、エゾシカ。一見可愛らしいですが、農作物を食い荒らす厄介者でもあります。 野生動物の肉、ジビエの人気は高まっています。フランス料理などでは高級食材として使われることもあります。 ここは札幌・すすきののジンギスカン店。メインはもちろん羊の肉ですが、もう一つの看板商品を教えてもらいました。 「ラム肉とシカ肉のセットです。手前がシカ肉です。シカ肉もラム肉も高たんぱくで低カロリーだが、(シカ肉は)より鉄分が多い」佐藤厚子店長 この肉を卸しているのは、ベンチャー企業のFant(ファント)です。代表の高野沙月さんは元々東京でデザイナーをしていましたが、狩猟の魅力に取りつかれ、ふるさとの北海道に戻ってきました。 「東京だとやっぱりどうしても狩猟ができるような場所ってすごく少ないので、だったら北海道に帰ろうと」高野代表 自身も狩猟をするうちに、ジビエの流通に課題を感じるように。 「需要と現場のつながりっていうのがなかなか薄くて、どうしても飲食店が欲しがっているものがハンターに伝わっていないという課題もありました」高野代表 Fantが始めたのはハンターとジビエを必要とする飲食店を、オンライン上で仲介するサービスです。飲食店が欲しい部位や量を入力すると、ハンターが期日までに狩りをします。
Fantが始めたのはハンターとジビエを必要とする飲食店を、オンライン上で仲介するサービス
報酬はハンターにとって魅力的
報酬はハンターにとって魅力的
高野さんの活動拠点、北海道 十勝の上士幌町。帯広から車で約1時間。町の76%が森林という、自然豊かなまちです。 その山にこの日、一人のハンターが。普段は別の仕事をしながら、月に数回狩りをしています。 「今までFantを使って捕ったシカが3頭。飲食店から僕のことを評価してくれた数が2件あり、評価は星5のうち3.1」ハンターの鈴木さん 「シカが角をこすった痕ですね。下から上にささくれ立っている」鈴木さん 痕跡こそ見つけましたが、この日シカを撃つことはできませんでした。 狩猟には装備品など多くの費用がかかります。 しかしこの日のように空振りの日もあるほか、仕留めた獲物は飲食店などの注文に関係なく、すぐに加工しなければならないため、価格は不安定でした。 Fantの報酬はシカ1頭で1万1000円ほど。需要に合わせているため肉の価格が安定し、ハンターにとっては魅力的です。 「例えば頭を狙っていたけど(シカに)ちょっと動かれてしまい、背中を打っちゃったという場合、そうなってしまうと価値の高いロースの部分が食べれないっていうことがあって、それでは買い取ってもらえないこともあったので」鈴木さん 「Fantができた後だと例えばロースじゃなくても肩肉が欲しい方がいる」鈴木さん Fantのサービスは、飲食店にとっても仕入れの安定につながります。 どこで、どのように捕れたかというストーリーも説明でき、付加価値の向上も期待できます。
サービスを全国へ広げる計画
サービスを全国へ広げる計画
「ジビエは高たんぱくな食材として人気が高まっていて、小規模な居酒屋でも提供する店が出てきている。Fantを使えば(飲食店は)ジビエに参入しやすく、部位などを細かく指定することもできる。ハンターの収入の安定も期待でき、今後全国に広がりそうです」日本経済新聞札幌支社 神野 恭輔記者 現在、Fantに登録しているハンターは1300人ほど。今後、北海道外の加工場とも提携し、サービスを全国に広げる計画です。