
「寝る間も惜しんで働く…は本当にナンセンス」専門家が睡眠のギモンに回答 1時間半周期説は「都市伝説」

日本人の平均睡眠時間は、OECD加盟33カ国中最下位。筑波大学の柳沢正史教授が、睡眠不足が脳や体に与える影響、そして「寝だめ」や「1時間半周期説」の真実を語ります。
■日本人は睡眠不足!?…平均睡眠時間7時間42分
OECDのデータによると、調査をした33カ国の平均睡眠時間は「8時間29分」。一方、日本人の平均睡眠時間は「7時間42分」で、33カ国中最下位でした。
「ショートスリーパー」や「寝だめ」など、睡眠にまつわる様々な疑問について、睡眠研究の世界的権威・筑波大学の柳沢正史教授に伺いました。柳沢教授は、睡眠メカニズムの解明で世界を牽引し、“科学界のアカデミー賞”とも呼ばれるブレークスルー賞をはじめ、国内外で数々の権威ある賞を受賞。毎年、ノーベル賞の有力候補として注目される「睡眠のスペシャリスト」です。
柳沢教授: 「寝る間も惜しんで働くという、日本にありがちな美徳はナンセンス。一晩眠らないだけで、次の日の脳のパフォーマンスはアルコール血中濃度0.1%相当まで下がる。ワインボトル一本分で、完全に酔っぱらっている状態ぐらいまでパフォーマンスが下がってしまう」
■「ショートスリーパーに悪影響は?」
柳沢教授に、視聴者から寄せられた睡眠の疑問に答えていただきました。まずは、50代の男性からの質問です。「ショートスリーパーですが、体に悪影響はありますか?」
柳沢教授: 「1日4時間しか寝ないような寝不足が続くと、5日目・6日目くらいには徹夜明けと同じぐらいまで下がってしまうことが知られています」 睡眠不足は“睡眠負債”として蓄積され、記憶の定着や創造力の低下など脳のパフォーマンスやメンタルの不調にもつながるといいます。 そして、睡眠不足が長期的に続くと。
柳沢教授: 「“寝ない大人は横に育つ”。食欲を増進するホルモン“グレリン”が増えちゃう。いわゆるメタボリック症候群。高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症など、長期的にはがんのリスクも上がる」
免疫細胞の働きが低下し、感染症にかかりやすくなるほか、認知症の原因となる物質が脳内に溜まりやすくなることで、認知症のリスクが高まるともいわれています。
■「夜中に何度も起きてしまうのはなぜ?」
続いては、70代女性からの質問。「夜中に何度も起きてしまう。若い時のようにぐっすり眠れないのはなぜ? 」
柳沢教授: 「“ぐっすり力”みたいなものは、20代ぐらいがピークで、30代、40代、50代、60代とどんどん落ちていってしまう。これは病気でもないし、 “健常な加齢現象”。だから、50代・60代で夜中に1回や2回目が覚めるのは当たり前だし、そこまで気にする必要はない」
■「寝だめはできるか?」
最後は、20代の女性からの質問。「寝だめはできますか?」
柳沢教授: 「“寝だめ”っていうと睡眠を貯金しているように聞こえますが、睡眠は貯金できない。人間は睡眠が足りていたらそれ以上眠ることはできない。寝だめっていうのは、今まで足りてなかった分の借金を返している状態」 長時間の睡眠は、あくまで蓄積された睡眠不足を補っているだけ。「明日は帰りが遅くなるので今夜は早く寝よう」と思っても、睡眠は必要以上に溜め込むことができないそうです。 ちなみに、よく聞く「1時間半周期で起きるといい」という説については。 柳沢教授: 「“1時間半の倍数で起きると良い“というのは、全くの”都市伝説“。1時間半ってよく言われるのは、”ノンレム睡眠“と”レム睡眠“のセットでワンサイクルです。不規則に揺らぐので、全然当てにならない」
柳沢教授は、「1時間半周期」説は都市伝説ときっぱり否定しました。 2025年10月30日放送





