アシックスが挑むDX改革 人の「心の状態」に牛の「発情期」もデータで解析

スポーツ用品メーカー「アシックス」 データビジネスへの挑戦
大手スポーツ用品メーカー「アシックス」が今、スポーツの分野で培ってきたデータ分析のノウハウを生かし、異分野への参入を進めています。新たな事業の柱に育つのか。その挑戦を追いました。
心の状態を「見える化」するビジネスシューズ

ビジネスシューズ「ランウォークオルフェ」価格は6万1600円
昨年10月に、アシックスからテスト販売された「ランウォークオルフェ」。価格は6万1600円とビジネスシューズにしてはお高いですが、購入者の反応は…
「靴から健康状態がここまで分かるのは驚き」
実はこの靴、内蔵したセンサーで、体だけでなく「心の状態」までを“見える化”するというんです。
(草野拳さん)
「今までスポーツで培った知見をもとに、パフォーマンスを上げるとかフィジカルだけではなくて“心”にもしっかりアプローチしていこうと」
足の動きで心の状態が分かる 目指すはデジタルドリブンカンパニー

かかとの接地角度が大きいと心のスコアがアップ
スポーツシューズなどを手掛けてきたアシックスは、いまデータビジネスに参入。その最前線が「スポーツ工学研究所」です。
人間の身体や動きを最先端の機器で分析するアシックス研究開発の心臓部。あの金メダリスト・高橋尚子さんのシューズもここで生まれました。新開発のシューズも歩行テストの真っ最中。どうやって“心を見える化”するのでしょうか?
「中敷きの下にセンサーが入っていて、歩行速度であったり足が地面に着いた時の角度を計測して、そこから心がどういう状態なのかアプリ上でスコア化をしていく」(草野拳さん)
靴のセンサーが歩き方を検知し「体」と「心」の状態を100点満点で採点するんです。AとBの歩き方で採点の違いは?
“心の状態”は「B」が5ポイント上。わずかな差を生んだのは、細かな足の動きでした。
例えば、気分が落ち込んでいる時は「すり足気味」になる傾向があり、逆に「かかとの接地角度」が普段より大きければ、“心の状態がいい”と判断され、スコアが上がる仕組みです。
「ゆくゆくは、今の状態に合わせたトレーニングをオススメするとか動画を表示するとか、整えるための処方を充実させたい」(草野拳さん)
「アシックスは「デジタルドリブンカンパニー」に生まれ変わる目標を掲げています。背景には、スポーツ製品の分野では欧米メーカーとの競争が激しく、先行きがしづらい状況があります。一方で、データをいかして新たなサービスを開発していくことで“モノ”だけではなく、“サービス”の分野で第二・第三の柱が育っていく可能性があります」(日本経済新聞・川野記者)
牛の歩数のデータ化にも挑戦 発情期を見極めて乳量を確保

歩数のデータ化で発情の兆候を探る
アシックスのデータビジネス、次なる展開は酪農の現場!
「牛の脚にセンサーを取り付けておりまして、そこから歩数を受信して発情期を検知している」(吉田栄太さん)
狙いは安定した「乳量の確保」。それには発情期を特定して出産させる必要がありますが、つぶさに行動を観察して発情の兆候を探るのは根気のいる作業。
そこで、「発情期に運動量が増える」牛の習性に目を付け、歩数からそのタイミングを特定することで、作業時間の短縮につなげる狙いです。
「日別の牛の歩数。14、15日は棒グラフの高さが上がっています。実際に15日に発情が確認されました。次のステップとしては、歩数が増える日っていうのをAIを使って予測ができないかというのを試みている」(吉田栄太さん)