“ドン横キッズ”どこへ… たまり場の閉鎖でさまよう若者 行方を追跡すると新たな動きが 名古屋・中区

居場所場をなくし、夜の繁華街をさまよう若者たち。散り散りになった彼らの行方を追いかけました。
10月の夜11時、名古屋市中区栄。“ドン横キッズ”を追いかけ、取材を継続していた私たちは、自他ともに“ドン横の王”と認める少年を発見しました。
“ドン横の王”と名乗る17歳の少年。ドン横キッズになって、ちょうど1年といいます。
「ニートです。高校やめました。友達の家に住んでいて、長いときは1か月泊まっている」(ドン横の王という少年)
「ドン横」とは、ドン・キホーテ栄本店の付近にあった栄広場のこと。
“ドン横キッズ”と呼ばれる中学生から20歳ぐらいの若者たちが、深夜までたむろするたまり場になっていました。
過去には、SNSで有名なドン横キッズが、未成年の少女にみだらな行為をしたとして逮捕されたことも。
ドン横に集まる若者たちが非行に走ったり犯罪に巻き込まれたりするおそれがあると、警察や行政も警戒していました。
今年6月、ドン横の広場は高層ビル建設のため閉鎖。
今のドン横について、“ドン横の王”と呼ばれる少年に話を聞くとー。
「栄広場がなくなってから、昔みたいに大きな集まりがなくなっている」(ドン横の王と呼ばれる少年)
たまり場がなくなり、ドン横キッズは、どこへ行ったのでしょうか。
情報をもとに、ドン横から数百メートル離れた「オアシス21」に向かうと、そこには少年たちの姿が。かつて、ドン横に集まっていたドン横キッズです。
集まって何をしているのか、聞くとー。
「音楽聞いているか、酒飲んでいるかぐらい」(19歳という少年)
未成年にもかかわらず、カメラの前でたばこを吸い始める場面も。
ドン横キッズの姿は栄から離れた名古屋駅にも。
少女に話を聞くとー。
「ドン横でODしまくって。オーバードーズ」(少女)
オーバードーズとは、精神的な苦痛から逃れようと、かぜ薬などを過剰に摂取する危険な行為。
「救急車呼ばれて、広場に2台ぐらい来た。ドン横は薬がはやっているから、他のかいわいから“お薬界隈(かいわい)”と呼ばれていた」と話します。
つらい現実から逃げるように、オーバードーズをしてしまう少年少女も多かったといいます。
「連絡しなくても集まれる場所があったけど、いまはそれがないから、それぞれで連絡とって、集まれる人が集まる」と話す少女。
ドン横の広場がなくなってからは、オアシス21や栄周辺のほか、白川公園や名古屋駅、さらに金山駅のまわりなどで、事前に連絡を取り、少人数で集まっているといいます。
そんな中。
「最近、大きい集まりをつくったんですけど。25人とか30人とかいっていた。新しい場所をつくりたい、広場を。みんなの居場所がなくなってから、みんなも楽しくなさそうなんで」(ドン横の王)
場所を変えてまでドン横キッズが集まる理由を“ドン横の王”にたずねるとー。
「親関係でつらくて、広場あったときも親がつらくて、ここに逃げてくる人が多い、。自分の家がつらいから、逃げ場所をつくるために広場に来る。地元に友達がいないから、ドン横の子がリア友(本当の友達)なんですよ。行けなくなったら家のストレスしかない。友達にも会えない」(ドン横の王)
さらに、自ら“巨人”と名乗る大柄な少年も。
路上に集まって寒くないのかたずねてみるとー。
「もっと寒いところにいたから。鑑別所。(鑑別所から)出てきて最初に遊んでって感じだから」(“巨人”と呼ばれる少年)
来たきっかけをたずねるとー。
「友だちが『来る?』みたいな感じで。興味あったから見に来たら面白かった」(“巨人”と呼ばれる少年)
ドン横キッズのなかには、社会に居場所がないと感じている若者も。生きていることを実感したいと自傷行為に走る若者もいるといいます。
少女に腕を見せてもらうと、刃物で傷つけたとみられる無数の痕が。さらに、自ら、たばこを押しつけたという痕も。
精神的に追い詰められた若者たちが再び集まることで、危険な行為が再発するおそれも。
こうした問題を受けて、警察は補導職員とともに、夜の街に集まる少年少女に声を掛けるなどの取り組みを行い、行き場のない若者に寄り添おうとしていますがー。
「取り締まりすごいから。すぐオアシスに警察来るし。親に家出している人とかの情報いったり、ばれたら警察に捕まっちゃう」(ドン横キッズ)
警察官たちによる声掛けは、ドン横キッズにとっては“取り締まり”。大人たちを警戒しているようです。
ドン横の広場が閉鎖されて5か月。散り散りになった若者たちは、きょうも居場所を探して、街をさまよいます。