仲間が軍隊へ“指揮棒を銃に” ウクライナで約20年指揮者をつとめた日本人「音楽家にできることは-」

吹奏楽団「ナゴヤディレクターズバンド」で指揮をとる髙谷光信さん(45)。
髙谷さんは約20年にわたり、年に4、5回、ウクライナで指揮者として活動してきました。
ロシアの侵攻後、指揮をしていた楽団の女性たちは近隣の国へ避難。男性たちの多くは兵士になり、軍隊に所属したといいます。
共に楽団で指揮をとったアンドレイ・シェヴコービチさんもその一人。
今は、持ち慣れた指揮棒を銃に持ち替えウクライナ・北部の街「チェルニヒウ」を守っているといいます。
アンドレイさんとは侵攻以降、ほぼ毎日連絡を取ってきました。
「なにが僕たちにできるんだと、「君は銃をつかったのか」と厳しい質問をした。「すべて順調だ」といって、銃を撃ったことについては答えなかった」(髙谷さん)
いつも支援の話や将来の話をすると「すべて順調だから」と返ってきていた返信。
取材中にアンドレイさんからある返信がー。
「今の練習中に首席指揮者のアンドレイくんがこのように言ってきた。『ドローンで爆撃するためにドローンを私たちの軍隊のために買うことはできるのか』と。衝撃で言葉にならないです。これには答えられない」(髙谷さん)
アンドレイさんがいるという「チェルニヒウ」。
先週、現地メディアのAP通信は「街の約7割が破壊された」と報道しています。
メールで兵器の話が出るようになったのは、ここ数日のことだといいます。
そんな中、19日、岸防衛大臣は会見で新たに化学兵器などに対応するための防護マスクや防護服、それにドローンを提供すると明らかにしました。
ドローンについて防衛省は「市販のもので防衛装備品にはあたらない」と説明しています。
「彼らの口からドローンがほしいなんて言葉がでるとは思わなかった。そういうことを言わざるを得ない窮地に陥っているということですね」(髙谷さん)
日本ウクライナ音楽協会の理事長を務める髙谷さん。
音楽の力をつかった支援を目指しています。5月30日にはチャリティーコンサートを開き、集まったお金をウクライナの音楽関係者への支援につかいたいと考えています。
そしてそれを決して“武器や銃弾”にはしないと堅く決意しています。
Q.願うことは
「平和ですね、その一言につきると思います。音楽家にできることはそれしかないし、銃や弾薬に変えてはいけないんですね。それを音に変える。それこそ音楽家のつとめだと思っています」(髙谷さん)