【解説】書店が生き残るには返品率を下げ利益を上げる 蔦屋書店を手掛けるCCC AIで返品率半分以下に
街の書店が生き残るために必要なことは
街の書店が生き残るためにはどうすれば良いのでしょうか。蔦屋書店やTポイント事業などを手掛ける企業、カルチュア・コンビニエンス・クラブの鎌浦慎一郎さんに話を聞きました。鎌浦さんは書店部門の責任者として新規書店店舗の立ち上げ計画にも携わっています。
原因は書店の利益率の低さ 返品数を減らせば改善の可能性も
利益率
―――街の書店が少なくなっていますが、書店がなかなか儲からないということなのでしょうか。
率直に言うと儲からなくなってきている状況だと思います。
―――なぜ儲からないのかについてですが、利益がかなり少ないとのことですね。
例えば1000円の本が1冊売れた場合、800円は出版社の利益になります。20%である200円が書店に残りますが、そこから人件費や雑費など経費がかかり、引いた金額は10円程度になります。つまり1000円の本が売れたとしても、1%程度しか書店の利益にはならないことになります。1%の利益はかなり少ないと思います。
文具などの商材であれば、400円ほどが利益になる状況なので、本は厳しい状況だと思います。
―――出版社の利益になる80%を少なくすればいいのではと思いますが、難しいのでしょうか。
基本的に書店で仕入れたものは、売れなかった場合は全て返すことができるようになっています。そのリスクは全て出版社が負担することになっています。その返品率は40%になり、年間で書店に送られる本は約2兆円になりますので、8000億円分の本が返品されてくるため、出版社もコストがかかり、書店へのマージンを上げることができない状況になっています。
―――出版社が書店を守るためのお金が、1冊の本が売れた時に出版社の得る利益に含まれているということですね。では、返品数が減ればwin-winの関係が築けるということなのでしょうか。
私達はそこに可能性があるのではないかと考えております。
AI活用で返品率が40%から13%に ニーズの把握と読書習慣の啓蒙も必要
返品
―――どのようにすれば返品する本を減らすことができるのでしょうか。
書店に足を運んでもらうためのニーズに合ったお店作りが欠かせないと思っています。また、これからの時代、書店員が目利きをして品揃えを行うことは難しくなってきていると思いますので、テクノロジーを活用した発注の仕組みを作ることも必要ではないかと思います。
―――ニーズに合った店作りについてですが、名鉄百貨店本店にあるTSUTAYA BOOKSTORE名鉄名古屋店では、児童書を多く取り揃えていると伺いました。
以前より世代を超えて愛されている百貨店への出店になり、親子3世代のご来店も多い店舗で、お子様向けやお孫さんへのプレゼントとして、絵本の需要が非常に高い店舗になります。そのため、児童書のスペースを広く取ったり、子供が本を読めたりするスペースを作ることによって、読書習慣をつける取り組みもさせていただいています。
―――このような取り組みで返品率は下がっているのでしょうか。
ベースとなる発注システムは本部でAIを活用した形で導入をしています。AIのテストの段階で、40%の返品率は半分以下である13%という結果にもなっていました。今後、より学習を深めて成果を出していきたいと思っています。
―――大手の書店の場合、AIやビッグデータを使うことができると思いますが、街の書店ではどのように活用していくべきなのでしょうか。
書店というのは、図書館も含めてですが、日本の活字文化や読書習慣の高さがビジネスを支えているとも言えます。そのため、私達の独自の取り組みをオープンにしていくことも大事なのではないかと思っています。TSUTAYAに限らず、様々な書店と一緒になって、子供をはじめとした多くの方に紙の本を読んでもらえるように、体験書店を盛り上げていくということが必要だと思っております。