一番人気は三代目が作る“カレーうどん” 創業77年の喫茶店 初代から受け継ぐ“もうひとつの人気メニュー”は… 三重・伊勢市

70年以上続く老舗喫茶の人気メニューは、コーヒーではなく、なんと“カレーうどん”。そして、当時は珍しかったという、初代から受け継ぐ“もうひとつの人気メニュー”とは。
11月1日、三重県伊勢市でリニューアルオープンした「食事と喫茶 寿」。
こちらの一番人気のメニューは、なんとカレーうどん。
「この店だけのカレーうどんの味がするし、中もすごく具だくさんで、めっちゃおいしい」「味が辛いけど、くどさがない。おいしかった、ほんとに」と、お客さんに大人気なんです。
カレールーには数種類のスパイスを加え、4種類のかつお節をブレンドしただしでルーを溶いたスープは、もちもちとした細めの麺によく絡み、極上の味になります。
カレーうどんに、そそり立つような天ぷら。さらに天巻きや小鉢、デザートまでついて、なんと1000円。
さらに、クリームうどんは、ここだけのオリジナル。シチューを食べているような絶妙な味わいが人気なんだそうです。
うどん作りに精を出すのは榊原弘詳さん。実は、リニューアルオープンとともに三代目として店を継いだばかりです。
二代目店主の保さんは82歳、奥さんの伊津子さんは78歳。
お互いに80歳前後ですが、毎日元気に店で働いています。
喫茶「寿」は終戦から間もない1945年の暮れに、初代の徳三さんが創業。実は、伊勢で最も古い喫茶店といわれているんだそうです。
「めでたい言葉ですもんな、寿ってな。そういうふうなんで、おやじが昔は“寿屋”そういう屋号でやっていました」(二代目 榊原保さん)
当時は「甘党喫茶」として、ところてんやあんみつ、ぜんざいなどが人気でした。
70年代になり、二代目を継いだ保さんが、自家製ソースの鉄板焼きそばや特製たれの伊勢うどんなど、新たな看板メニューを生み出し、食事も楽しめる喫茶店として受け継いできました。
伊津子「家へ帰ってきたような感じ」
保さん「ぬくもりとか温かさがあるっていうて」
店内は昭和レトロの雰囲気を醸し出して、近年では、若いお客さんの来店も増えているといいます。
二代目として60年以上、店を続けてきた両親。朝から夜まで休みなく働くそんな姿を見てきた弘詳さんは、一大決心をしたのです。
「ずっと考えてはおったんですけど、いろんなタイミングが重なって、今が一番いいのかなと思って」(三代目 弘詳さん)
2012年に開業した松阪市の「麺処さかきばら」。カレーうどんの名店で修業し、のれん分けをしてもらいました。すると、瞬く間に評判になり、常連客でにぎわう店となったのです。
しかし、弘詳さんは今年7月末、その人気店をたたんで実家へ戻り、三代目を継いだのです。
「両親も高齢になってきたんで。こっちへ帰って来た方がいいんじゃないかなって」(三代目 弘詳さん)
松阪の店を閉めても、その味を追いかけて、わざわざやって来るお客さんも多いという三代目のうどんも人気ですが、どうしても今、初代から受け継いでおかなければいけないメニューがありました。
それは、ホットケーキ。1956年に、初代が当時はまだ珍しかったのをメニューに加えると、瞬く間に評判となり、看板メニューとなりました。
卵に薄力粉、砂糖、そしてベーキングパウダーに牛乳を入れて、よく混ぜていくのですが、「これが硬とうても軟らこうてもいかんし、微妙なところですね」と保さんはいいます。
ホットケーキを焼くのは特注の鉄板。手のひらで温度を確かめ、食べやすい大きさに焼いていきます。
さっぱりとした甘さが特徴の自家製シロップをかけると、パンケーキでは味わえない、どこか懐かしいホットケーキになります。
初代、そして二代目と受け継いできた喫茶店文化の味。それが今、三代目へと受け継がれようとしています。
「コラボして、やっぱり麺と喫茶でやっていきたいと思うんで。ほんとに居心地のいい店づくり を日々ちょっとやりやすい方に考えていきながら、やっていきたいとは思っていますね」(三代目おかみ 由佳さん)
笑顔が絶えないアットホームなお店の雰囲気に常連客も期待しています。
11月1日にリニューアルオープンした老舗の喫茶店。四代目を目指して保さんの孫娘・佑奈さんも現在、見習い中です。
「私も小さいときからパパ(弘詳さん)の背中見てきて、(店を)継ぐのは夢ではあるので。がんばります」(保さんの孫娘 佑奈さん)
「ほんとに力を合わせて頑張っていきたいと思っています。みなさん、どうぞよろしくお願いいたします」(保さん)
今年で創業77年、伊勢で最も古いといわれる喫茶店。昭和、そして平成と愛されてきた味と心を、これからも守り続けていくことでしょう。
中京テレビ 「キャッチ!」 11月23日放送より