
“骨髄移植”で救われた女性がドナー登録を呼びかけ 「悩み」「経験」「希望」…自らの経験を伝えたい 若年層の登録が少ない現状 骨髄バンク設立30年

競泳の池江璃花子さんも乗り越えた「白血病」。かつて不治の病も「骨髄バンク」の誕生で、つながる命となっています。愛知県在住ののぞみさん(仮名)もそのひとり。コロナで減少傾向にあるドナー登録を呼びかける一方で、自らの経験も伝えたいと、ボランティア活動にも力を入れています。
先月19日、名古屋市中区の栄広場で開催された「全国学生クリスマス献血キャンペーン」。
そこでは、“骨髄バンクへの登録”も呼びかけられていました。
骨髄バンクとは、白血病をはじめとする血液疾患などのため「骨髄移植」などが必要な患者と、それを提供するドナーをつなぐ事業。
日本に公的な骨髄バンクができて、先月18日で30年という節目を迎えました。
「白血病」といえば、競泳の池江璃花子さんも3年前、「急性リンパ性白血病」を患い、苦しい闘病生活を乗り越えて、東京オリンピックの舞台で活躍しました。
骨髄バンクのドナー登録をご主人と一緒に呼びかけたのは、愛知県内に住むのぞみさん。
実は、のぞみさんもかつて「白血病」を患っていたのです。
高校2年生の時、「急性骨髄性白血病」を発症しました。
「(病名を)言われた瞬間は、ほんとに頭が真っ白になるっていうのは、こういうことなんだな。え!っていう衝撃がすごかった」(のぞみさん)
抗がん剤治療を始めると、副作用で吐き気や脱毛が始まりました。
やがて症状も安定し退院するも再発してしまい、医師から勧められたのが「骨髄移植」でした。
「骨髄移植」とは、ドナーが全身麻酔をして注射器により骨髄液を吸引。採取した骨髄液を患者の静脈へ点滴注入する治療法。
移植の条件は、提供側と患者側で白血球の型が一致しないといけません。
ところが骨髄の適合者は、兄弟間では4人に1人。他人の場合は、数百人から数万人に1人という確率。
ドナー提供する人は、全身麻酔をして、腰骨にボールペンほどの太さの針を刺して骨髄液を取ります。そのため、3泊4日の入院が必要となります。
献血に来てドナー登録をした人はー。
「ちょっと職場と相談ということになって、実際にできるかどうか。その時になってみないとわからないですけど、一応登録だけしておこうかなと思いました」(ドナー登録した人)
適合する患者が見つかれば、一日でも早い移植が望まれます。しかし、提供者側のスケジュールが合わなければ、助かる命も救えないのです。
コロナ禍で献血する人も減り、当然、ドナー登録をする人も減ってきているのが現状。
さらに、提供できる年齢も55歳以下までで、若年層のドナー登録者が少ないため、このままでは、いつか頭打ちになってしまうおそれがあります。
「入院をするんであれば、お仕事をお休みしていただくことがあって、“ドナー休暇制度”だったり、“助成金制度”というのが、いま、広がってきていて、提供しやすい環境にはなってきてますけど、まだやはり、そこがもっと広がっていかないと」(あいち骨髄バンクを支援する会 水谷久美 事務局長)
のぞみさんは運良く半年後に適合するドナーが見つかり、骨髄移植も成功。
救われた命の大切さを知ったのぞみさんは、社会人になったとき、ドナー登録を呼びかけるボランティア活動を始めました。
趣味で始めた演劇サークルで骨髄バンクの啓発劇を作ろうとした時、脚本を書いてくれたのが今のご主人です。
3年前に結ばれた二人。実は幸せの裏には人知れぬ苦悩がありました。
「自分がそれを告白することで、相手がどういう反応をするのかが全くわからなかったので、ちょ っとすごく怖いなと思いながら言ったんですけど」(のぞみさん)
それは「妊孕性(にんようせい)」。「妊娠するための力」のことをいいます。
妊娠するためには、卵子と精子だけでなく、性機能や生殖器、内分泌の働きも重要です。
のぞみさんは白血病の抗がん剤治療に骨髄移植の治療で、妊娠することができなくなっていたのです。
「(のぞみさんを)守っていくんだなって思っている状態の話なので、その“妊孕性”の話なんか も、もう一部でしかないですよね」(のぞみさんのご主人)
病気の全てを受け入れてくれました。
のぞみさんはドナー登録を呼びかける一方で、自らの経験も伝えていきたいといいます。
「今は卵子保存なり精子保存っていう形で、可能性を残すことができる時代にもなっているので、それも合わせて知ってもらって、自分の退院後の未来のことも、患者自身も家族も考えられるように伝えていかないといけないと思う」(のぞみさん)
骨髄提供を求める白血病患者らの登録者は、去年11月末現在で1714人。
ドナー登録者は約53万8000人ですが、移植が実現しているのは希望者の6割弱にとどまり、若い世代の登録が少ないのが現状なのです。