
愛知の公立中高一貫校、2026年度から9校に 佐鳴予備校の担当講師に聞いた「合格者の共通点」

愛知県で公立の中高一貫校が注目されています。2025年度に4校が開校し、2026年度から9校に増えます。
東海地方を中心に展開する「佐鳴予備校」で、公立中高一貫校の受検を指導している河内将郎さん(49)に、受検の傾向と対策、そして合格者に共通することを聞きました。

愛知県立の中高一貫校は、2025年4月に4校が開校しました。
・明和高校附属中学校(名古屋市)
・津島高校附属中学校(津島市)
・半田高校附属中学校(半田市)
・刈谷高校附属中学校(刈谷市)
そして2026年4月から、次の5校が加わります。
・豊田西高校附属中学校(豊田市)
・西尾高校附属中学校(西尾市)
・時習館高校附属中学校(豊橋市)
・日進高校附属中学校(日進市)
・愛知総合工科高校附属中学校(名古屋市)
初年度は10倍を超える高倍率も

Q:2025年度に開校した県立中高一貫校は、明和の倍率が17.05倍、刈谷の倍率が10.23倍という高さでした。
倍率については、愛知と同じく公立人気の高い埼玉県の公立中高一貫校の初年度が約20倍になったところもあったため、愛知もかなりの高倍率になる可能性があることを生徒・保護者に伝えていました。
ただ、「とりあえず受けてみよう」という受検者も少なくなかったと思うので、実質的な倍率はもう少し低いのではないでしょうか。
私は主に刈谷地区を担当していますが、2024年度の刈谷本部校の「公立中高一貫校受検対策クラス」には、刈谷高校附属中学校を目指して豊田市や豊橋市の小学生も通っていました。この地域でも、中学受検熱は年々高まっていると感じます。
2026年度から時習館や豊田西も

Q:2026年度から、豊田西や時習館など5校が加わります。
豊田市や豊橋市などの小学生にとっては、地元の人気校が加わるので、受検を考える人がさらに増えるでしょう。佐鳴予備校でも、小学4年生から始まる受検対策クラスの受講生が増えています。
ただ、2025年度は普通コース80人だった募集定員が、2026年度は70人に減ることになりました。公立中学校の1クラスの人数を40人から35人に引き下げる国の方針に沿ったものです。このため、狭き門がさらに狭くなると言えます。
適性検査の出題傾向は?

Q:公立中高一貫校は、1次選抜(適性検査)と2次選抜(個人面接)がありますが、2025年度の適性検査はどのような出題だったのでしょうか。
適性検査は2部構成で、適性検査1(45分)では、主に国語的な読解力、算数的な論理力、資料の読み取り力など、教科横断型の総合的な思考力が問われました。
適性検査2(45分)では、より実社会や生活に関連する課題解決型の問題が多く出題されました。
どちらも論理的思考力・情報把握力を試される非常に良い出題でしたが、愛知県の公立中高一貫校入試の最大の特徴である「マークシート方式」で最も試されたのは、「ふさわしい答えを選ぶ」取捨選択力だったと思います。
愛知県のホームページで公開されている問題を見ていただくと実感できるかと思いますが、まず文章が非常に長く、量が多い。そしてそれを45分という限られた時間の中で、複数のグラフや表・図などの資料も含む情報として瞬時に理解し、ふるい分けてミスなく処理する必要があります。
私立の中学入試は、「特殊算」と呼ばれるようなテクニックを知らないと解けない問題や、単純に知識量の差が合否を分ける問題も多いですが、公立中高一貫校はどれだけ広く深く知っているかということよりも、「読み取る・考える・判断する」という「情報処理の三段階」をいかにスムーズにできるかどうかに重きが置かれたように思います。
中には、ちょっとした工夫や整理によって早く正確に解ける問題もみられましたが、こうした適性検査の特性をきちんと把握し、準備していくことが大切です。
この出題傾向は2026年度も変わらないと思います。
出題の傾向を理解し、模擬試験などで実戦感覚を養うことが合格への近道となるでしょう。
合格者はどんな子だった?

Q:2025年度の合格者はどんな生徒でしたか。
まず、合格者全体に言えることは、自ら目的意識を持って学んでいること。そしてそのための学習にかける時間や量が非常に多かったということです。
公立中高一貫校は、どの中学校も「探究学習」を重視しています。
入学後、生徒たちは教師のサポートを受けながら、「何を・どう学ぶか」を常に自ら考え、視野を広げて深めていきます。それにはベースとなる学力の土台が絶対に必要です。
佐鳴予備校の刈谷本部校には、刈谷附属中に通う生徒を対象にした専門クラスがあり、大学受験も見据えた先取り学習をしています。学校の授業の進度と直接リンクしない部分もありますが、彼らは常に先を見据え、自らの意志で学んでいます。
このクラスに通う生徒たちからは、「学校の授業が楽しい」とよく聞きます。グループワークが多く、生徒たちが教科書をもとにプレゼンテーションするなどして、自分たちで授業を進めるそうです。
こうした学び方は学習指導要領にも示されていますが、ある程度の訓練をしなければ成立しません。
受検する小学生へのアドバイス

Q:受検する小学生には、どのようなアドバイスをしますか。
自分がなぜその中学校に行きたいのか、入ってからどうしたいのか、常に考えてほしいですね。先ほどもお話ししましたが、大切なのは「目的意識」です。学力を伸ばす、勉強へのやる気は、そこから生まれてきますから。
受験期を通じて最後まで伸びる子は、たとえスタートが多少遅かったり、ハードルが高くて普通なら追い込まれたりしそうな状況でも、「こうするとこんな風に早く解けるんだ、面白い!」などと目をキラキラさせて授業を受けていることが多いです。
生徒同士がうれしそうに解き方を教え合っている姿も、よく見られる光景です。
とりあえず解ければいいと、しゃにむにやるのではなく、1問1問に真摯に向き合う姿勢が大事だと思います。
保護者には「長期的な視点を」

Q:保護者にはどのようなアドバイスを。
伸びる子の共通点は、「自発的にやっている」という感覚を持っていることです。
もともと言われなくてもやる子なのか、もしくは保護者がうまく促しているのか、そこは我々から見えにくい部分ではありますが、いずれにせよ保護者が「もっとやりなさい」というパターンはまず伸びません。
ほとんどの小学生にとって、受検することの意味というのは、最初はわからないと思います。
佐鳴予備校に入ってくる生徒も、最初は「友達が受けるから、気になって」くらいの軽い気持ちの子も見られます。ただ、そうした子も、次第に周りの子の影響を受け、志望校の良いところを知ったり、そこに向けて頑張る先輩や友達に憧れ、あるいは純粋に学ぶ楽しさを見出したりして、次第に切磋琢磨していくようになります。
そういう意味では、「お互いにプラスの影響を与え合い、学び合い、達成感を得られる環境を用意してあげる」というのが、保護者の方ができる一番大切なサポートかなとも思います。
私立中学だったら併願するのは当たり前で、選び方を間違えなければどこかに合格する可能性は高いでしょう。
しかし公立中高一貫校は1校しか受けられません。
保護者が「中高一貫校合格」をゴールにしてしまうと、そうならなかった場合に、子どもが対応できなくなってしまうかも知れません。
中学受検はあくまで1つの「通過点」に過ぎません。子どもにとってのゴールはもっと先にあり、その夢にたどりつくには、どんな道から行ってもいいのです。
保護者の価値観は、子どもに大きく影響します。受検する子どもの保護者には、ぜひ長期的な視点を持ってもらいたいと思います。





