生まれたばかりの赤ちゃんを救うため 「出生後6時間の壁」を超えるための挑戦が結実、岐阜県で防災ヘリによる新生児搬送が開始

中京テレビ
08.28(金)02:00

 8月、生後間もない赤ちゃんを救うために病院に駆けつけた岐阜県の防災ヘリ。

 心臓に病気を持って生まれた赤ちゃんを、多治見市内にある病院から、手術の設備が整っている「岐阜県総合医療センター」に緊急搬送しました。

 実は岐阜県では、6月から新生児内科の医師が防災ヘリで患者の元に駆けつける、新しいシステムの運用が始まっています。このシステムを考案したのは、岐阜県総合医療センター新生児内科の山本裕医師です。

「早く患者さんにファーストタッチができる。早く診察ができて処置が行えるのが一番大きい」(山本裕 医師)

 駆けつけた医師が、ヘリの中で治療行為を行うことができるという、東海3県で初めての試み。なぜ山本医師はこのシステムの導入を考えたのでしょうか。

「遠隔地の搬送で時間がかかってしまい、そのために命を落としたり、後遺症を持った状態でおうちに帰られたお子さんを見て、できる限り早く安全な形で搬送できる方法はないのか(と考えた)」(山本医師)

 

 “新生児医療の最後の砦”ともいわれる、NICU(新生児集中治療室)。

 重い症状を持った赤ちゃんを治療するために欠かせない施設ですが、岐阜県内には岐阜県総合医療センターを含め5か所しかなく、その全てが県の南部に集中しています。

 これまではドクターカーで患者を搬送していたため、NICUに到着するまで5時間以上かかることもあり、命が危険にさらされるリスクが高い状況でした。

 防災ヘリを活用することで、30分以内で飛騨地域に到着。患者を通報から2時間程度でNICUに搬送できるようになったといいます。

 

 しかし新生児医療では通常の医療行為とは異なる機材と専門医の経験が必要になるため、山本医師には数々の苦労がありました。

「特注の台を作り、こちらに最新式の保育器を載せています。それ以外に生体監視モニター、人工呼吸器、点滴を入れる機械を取り付けています。全部で80キロ。指針とか全くなくて、試行錯誤しながら設計を行った」(山本医師)

 山本医師が新システムの導入に力を入れるのには、過去の苦い経験がありました。

 20年前、山本医師が医師として働き始めたころ、岐阜県総合医療センターでの新生児の死亡率は全国のNICUでワースト3ともいわれるほど、新生児医療が遅れていました。

「新生児搬送で運ばれてきたお子さんもいて、そういうお子さんほど重症で生まれる方が多かった。そういったところを整えなきゃいけないと考えました」(山本医師)

 

 出産後仮死状態で生まれた新生児の場合、低体温の状態で治療をいち早く始めないと脳に障害が残ったり、命にかかわるといわれています。そのタイムリミットは出産してから6時間以内。その壁を越えたいとの思いから関係各所に働きかけたのです。

「(医療に)地域の格差がありますよね。人口との問題があって、永遠に埋められるものではありませんが、攻めの医療として評価すべきことだと思いお手伝いさせていただきたいと思いました」(岐阜県総合医療センター 救命救急センター長 豊田泉医師)

 

 こうした動きに、岐阜市から遠く離れた飛騨地域の医師も期待しています。

「通常の陸送ですと、お願いしてから(岐阜市まで)6時間くらいかかるんじゃないかなと。(重症仮死の場合)出生後6時間以内がゴールデンタイムといわれていますので、生まれてから治療が開始できるまで時間が短い方がありがたい。ヘリコプターを使っていただけるとそれが早くできるということになります」(高山赤十字病院 第一小児科 山岸篤至 部長)

 

 実際にこのようなヘリコプター搬送を積極的に展開して救命率を上げているのが、離島を多く抱える九州地方。2016年の熊本地震では各県からヘリが熊本県にも応援に駆けつけ、被災した病院から新生児を搬送しました。

 過去に、山本医師も鹿児島の病院で新生児のヘリコプター搬送を学び、今回の導入の参考にしたといいます。

 

 20年越しで実現した新生児のヘリ搬送。山本医師は、これから多くの命を救っていきたいと話します。

「命からがら着いたんだけど心肺蘇生をやってもなかなか効果なく、こちらで看取ったという症例は何人もいます。もっと良い状態、苦しい思いをさせないで救命できていたんじゃないかなと。遠方の地域で重症なお子さんがいれば、ぜひヘリコプターを使って早く安全に新生児を運べることをどんどんやっていきたい」(山本医師)

 小さな命を守るための山本医師の活動は、まだ始まったばかりです。
 

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