高校生が育てた牛の価値は… “松阪牛”の品評会 過去には5000万円の値がついたことも

11月27日に行われた松阪牛のトップを決める品評会。最高の牛には5000万円もの値がつく、この会に、三重県の高校生たちが挑みました。手塩にかけて育てた牛につけられたその値段とは。
三重県多気町の相可高校「松阪牛専攻」。
3年生6人が、地元名産の松阪牛を育てています。
実は、年に一度のビッグイベントが迫っていました。
それは、その年の最高の松阪牛を決める品評会「松阪肉牛共進会」。松阪牛を育てる農家の晴れ舞台ですが、コロナ禍で、去年とおととしは中止を余儀なくされましたが、3年ぶりに開催されることに。
相可高校では、共進会の出場に向けて仕上げの作業中。気持ちよさそうに体を洗われているのは、共進会に出場する松阪牛の“きんかん9号”。
シャンプーをすることで毛の質が良くなり、ボリュームがでるそうで、大切に行っているといいます。
人一倍手入れに熱が入っているのは、3年生の松田琉世くん。共進会で手綱を握る大役を任されています。
「だいぶかわいいですね。1年生の頃は怖かったんですけど、これだけ触れ合っていると、いとおしいですね」(相可高校 3年 松田琉世くん)
松田くんは松阪市出身で、共進会は子どもの頃から身近なイベントだったといいます。
相可高校が共進会に出場するのは今年で20回目。過去には757万円の値がつけられたこともありました。
順調に準備が進んでいるように見えますが、体重を量る土原くんには気になることがー。
「633(キロ)です!ちょっと増やしてほしいですけど」(3年 土原晃大くん)
680キロほどを目指していましたが、夏場に食欲が落ち、体重が伸び悩んだといいます。
そして、共進会当日。
ビタミン剤を与えるなどして体重は10キロ増えました。さらに体格がよく見えるよう、当日も毛並みの手入れには余念がありません。
共進会は、午前の審査会で50頭の中から優秀賞が選ばれ、午後には1頭ずつ順番に落札されていく競りが行われます。
過去には1頭5000万円の値がついたことも。
日本一の松阪牛に選ばれるために必要なことはー。
「内臓が大きいじゃないですか。それを保てるように、しっかりした背骨を持っているかも見極められる」(相可高校 逵兼一郎 先生)
体の重さだけでなく、体格や見た目も評価の対象だといいます。
果たして、相可高校の “きんかん9号”は入賞することができるのでしょうか。
厳しい視線で体格や肉付きを見ていく審査員たち。
松田くんもちょっと緊張気味です。
結果、50頭の中から今年最高の松阪牛の称号が贈られたのは、大紀町で育った体重678キロの「ここの3号」。
「(共進会が)2年間なかった。餌代も高いし非常に苦しいです。それでも自分なりになんとか工夫して、牛が好きやもんでやっています」(優秀賞一席を受賞した岡田一彦さん)
プロが育てた最高の松阪牛。予想以上の大きさに高校生たちは驚くばかり。
「入賞はしたかったけど逃してしまったので、次は競りで少しでも高く売れるように、より大きく見えるように手入れしたり、触ってリラックスさせられるように頑張っていきたい」(松田くん)
午後1時。農家が丹精込めて育てた牛に値がつけられる競りが始まりました。
最高額をたたき出したのは優秀賞一席を受賞した「ここの3号」。価格はどんどん跳ね上がり、2600万円。津市の精肉店が落札しました。
競りが進む中、松田くんの姿は、ずっと、きんかんのそばにありました。
「一応、最後なので(きんかん9の)経過を見てようかなと。(優秀賞)三席とかでも400万円なので、気合、入れて、手入れするしかないなと」(松田くん)
そして、いよいよ相可高校の順番。
きんかんについた金額は300万円。
「300万円いけばいいなと思っていましたけど、本当にいっちゃったので、まさかというか、驚きと感謝でいっぱいです」(松田くん)
落札したのは、20年以上前から高校の牛を購入している精肉店でした。
「(相可高校の牛を)歴代見ているが、良い牛ばかりなんですよ。すごく手塩にかけられているのがよくわかる。それだけ愛情があればあるほど霜降り、おいしさにつながるのではないかと」(きんかん9号を落札した「霜ふり本舗」瀬古守伸 社長)
3年間、生徒たちが愛情を込めた結果が実りました。