【解説】不正に個人情報を入手する「闇の名簿屋」が存在 「名寄せ」で情報の精度を上げ詐欺グループへ流出

特殊詐欺犯が活用している名簿について、特殊詐欺や悪質商法に詳しいジャーナリストの多田文明さんに話を聞きます。
闇の名簿屋がお金に困った人に常にアプローチ 個人情報を売買
―――カンボジアでの特殊詐欺犯の摘発で名簿が押収されました。そもそも名簿はどこから、なぜ流出するのでしょうか?
特殊詐欺グループには、不正な方法で個人情報を入手するような闇の名簿屋という存在があります。国に届け出を出している正規の名簿屋もいますが、それ以外の闇の名簿屋が問題になっています。流出方法としては、お金に困った人たちが名簿を不正に持ち出して売って流出させています。
最近も、消防署の職員が高齢者名簿のコピーを持ち出したこともありました。私自身も情報提供者から見せてもらいましたが、病院のカルテ情報の流出もあり、さまざまな人が名簿を売っていることがわかります。
―――一般の方が闇の組織と関わりのある人に売っているのでしょうか。
特殊詐欺的な闇のグループというのは、常にお金に困っている人たちにアプローチしているという側面もあります。そこで誘われてしまって、どうしようもなく売る人や、積極的に売り込む人もいます。
電話で家族構成や本人の性格を聞き出す「名寄せ」

情報
―――名簿には名前、電話番号、住所、生年月日が記載されているとのこと。基本的な情報のようにも感じますが、この情報だけでも詐欺が可能なのでしょうか。
これだけの情報があれば、十分に詐欺は可能です。ただ、組織的詐欺グループにおいては、効率的に騙したいという思惑があります。実際の詐欺グループが持っている名簿は決して新しいものではなく、昔の名簿の場合もありますので、それを最新のものにアップデートしようとしています。
個人情報のアップデートは、「名寄せ」と呼ばれる方法で行います。名寄せとは、何か高額なものを買ったリストや、あるいはクレジットカード情報など、名簿にさまざまな情報を足していくものです。たとえば、電話をして、家族構成や独り暮らしなのか、あとは本人の性格を聞き出します。良い人は騙しやすいと思われ、狙われる危険性があります。このように精度を高めて名簿を一本化していきます。
―――電話で聞いた内容だけでなく、受け答えの様子も情報として加えられているということでしょうか。
古い名簿だと高齢者一人暮らしになっていても、今は息子さんが一緒に住んでいる可能性もあります。そうなると、詐欺のアプローチを変えないといけなくなります。そこで、より騙しやすくするためにいろんな情報を名寄せという方法で付加していきます。
―――詳細な情報が書いてある名簿の個人情報は、1人あたりどれくらいの値段で売買されてしまうのでしょうか。
最低限の情報だとかなり安いと思います。詐欺グループにとって名寄せした名簿はとても大切になります。特にクレジットカード情報や家族の情報は大事になってきます。特に日本人のクレジットカード情報は、「ダークウェブ」で世界でも1番高く売られていると言われています。
平均で大体8500円という調査もありますが、さまざまな情報が付加されている場合、1件当たり1万円以上というのもあると推測できます。
すでに個人情報が漏れていると意識する

防御策
―――不審な電話や訪問には対応しないことが、防御策として大切になるのでしょうか
情報が増えれば増えるほど、詐欺グループとして騙しやすくなります。現状は個人情報保護法がありますが、それ以前は個人情報の規制がなかったので、垂れ流しの状態になっていました。長い期間、住所や電話番号を変えてない人は、完全に漏れていると意識した方が良いと思います。