骨がもろくなり、背骨や手足の骨が次々と折れてしまう「ドミノ骨折」。
高齢者に多く、歩きにくくなったり、寝たきりになったりして寿命を縮めてしまうことも。
その原因は「骨粗鬆症(こつ そしょうしょう)」。どのような対策をすればいいのでしょうか。

骨粗鬆症は女性に多く、50代以降で増え始め、60代以降でさらに多くなります。
「女性の病気」と思われがちですが、骨粗鬆症による骨折患者の約2〜3割は男性といい、性別を問わず注意が必要です。
名古屋市名東区の国立病院機構「東名古屋病院」は、医師や薬剤師、理学療法士、管理栄養士ら様々なスタッフが連携して、骨粗鬆症の治療と予防に取り組んでいます。
骨粗鬆症の薬

まず、薬剤部長の林誠さんに、どのような薬があるのかを聞きました。
骨粗鬆症の薬は、大きく分けて三つの種類があります。
1. 骨を壊すのを抑える
2. 骨を再生して強くするのを助ける
3. 骨の材料を補う
「薬だけで大丈夫と思わないで」

骨は固くてずっと変わらないようにみえますが、常に生まれ変っています。
古くなった骨はカルシウムに分解されて血液に流されていて、「骨吸収」といわれます。
そして、血液中のカルシウムが新たな骨になっています。これは「骨形成」といわれます。
「骨吸収」を抑えるためによく使われるのは、「ビスホスホネート薬」です。
主に飲み薬ですが、林さんは「続けるのがなかなか難しい」といいます。
普通の飲み薬は1日2~3回、食前か食後に服用しますが…。
「ビスホスホネート薬」は1週間もしくは1カ月に1回服用というものがあります。
服用の間隔が長く、しかも空腹時と決められていて、自宅で過ごしていると忘れてしまうことがよくあるそうです。
このため、近年は通院して注射してもらう人もいるそうです。
「骨形成」を促す薬は注射が中心です。
最近は、自宅で自ら注射できるものもあります。
ただ、骨吸収を抑える薬より高価なものが多く、費用対効果の面から検討することも重要だといいます。林さんは「医師とよく相談した上で、自分に最適な治療法を選択することをお勧めします」と話します。
そして、林さんはこう強調します。
「骨粗鬆症は、薬だけで大丈夫だと思わないでください。治療と予防に大事なのは、食事と運動です」
骨粗鬆症を防ぐ食事は?

では、骨粗鬆症を防ぐ食事のポイントは何でしょうか。
管理栄養士の藤原沙央理さんに聞きました。
特に重要な栄養素は、この三つです。
・カルシウム
・ビタミンD
・たんぱく質
カルシウムは乳製品がおすすめ

カルシウムは、骨の主な材料です。
1日あたり700~800ミリグラム(mg)が必要といわれていますが、日本国民の平均摂取量は1日489mgと、不足しがちです。
藤原さんが勧めるのは、乳製品です。
牛乳は1パック(200ml)に220mg、ヨーグルトなら1 パック(100g)に120mgのカルシウムが含まれています。
ほかにも豆腐や納豆などの大豆製品、魚介類、野菜、海藻類に多く含まれています。
乳製品の特長は、他の食品と比べ、カルシウムが体内に吸収される割合が40%と高いことです。
「子どもは給食で牛乳を飲みますが、大人になると離れてしまうことが少なくありません。牛乳やヨーグルト、チーズは調理する手間がかかりませんし、食事や間食にぜひとってください」(藤原さん)
「牛乳でお腹をこわしてしまう」という人もいるかも知れません。
藤原さんはそんな場合、豆腐や納豆、青菜などを意識して食べるようにアドバイスしています。
一方で、カルシウムの吸収を妨げたり、排出を促したりしてしまう食品には注意が必要です。
アルコール飲料やカフェイン飲料、インスタント食品、スナック菓子です。
「高齢の方は食が細くなりがちなので、間食(おやつ)は悪いことではありません。インスタント食品やスナック菓子ではなく、ヨーグルトやチーズなどを積極的にとってください」(藤原さん)
カルシウムの吸収を促す「ビタミンD」

ビタミンDは、カルシウムの吸収率をアップする効果があります。
1日の目標は15~20マイクログラム(μg)ですが、日本国民の平均はその半分以下の1日6.2μgしかないそうです。
藤原さんのイチオシは、魚のサケ。
1切れ(70g)に23.1μgも含まれています。
ただ、毎日サケを食べ続けるのは難しいでしょう。
そこで藤原さんは卵も勧めています。1個当たり1.9μgあります。
ビタミンDの特徴は、日光に含まれる紫外線で、皮膚でもつくられることです。
「美白」はいいのですが、藤原さんは「過度に日光を防がないでほしい」といいます。
「夏なら10~20分ほど日光を浴びれば十分。例えば、洗濯物を干したり取り入れたりする時だけでも肌を日に当ててはどうでしょう」
ただ、冬は日光だけで十分なビタミンDがつくれないそうです。
食事でビタミンDを意識してとるようにしましょう。
一方で、ビタミンDはとりすぎに注意です。
ビタミンCなどの「水溶性ビタミン」は尿で排出されますが、ビタミンDは「脂溶性ビタミン」で体内に蓄積されやすく、1日100μgを超える量をとらないようにしてほしいそうです。
たんぱく質の必要量は人それぞれ

たんぱく質は、骨に必要なコラーゲンの成分です。また、筋肉のもとになって、転倒を防ぐことにもつながります。
カルシウムやビタミンDと違い、たんぱく質は一律の目標値は定められていません。
1日の必要量は一人ひとり違い、体重1kgあたり1.0g程度とされています。体重60kgなら1日60gです。
乳製品や魚のほか、肉にも多く含まれています。
運動で予防・回復を

骨粗鬆症の治療・予防に必要な運動について、理学療法士の森勝俊さんに聞きました。
運動は骨に刺激を与え、再生を進めて強くします。
また、筋力もついて転びにくくなります。
骨を強くする運動は、どのようなものでしょうか。
森さんは「力学的な負荷が重要です。プールよりも陸上の運動、陸上では長距離・中距離より幅跳び・高跳びの方が骨に強い刺激が加わり、効果的です」といいます。
バレーボールやバスケットボール、ダンスといった跳躍が多いスポーツもいいそうです。
ただ、こうした運動は負荷量が強く、バランス能力も必要です。
若いうちから続けられればいいのですが、高齢になってからだと逆にけがをしてしまう恐れがあります。
運動習慣がない人について、森さんは「散歩や軽いジョギングで骨に刺激を与えてください」といいます。
「片足立ち」は効果的

自宅でできる運動の一つに、森さんは「片足立ち」を勧めています。
片足立ちを1分間続けると、太ももの骨(大腿骨)に加わる負荷は、散歩を53分続けたのに匹敵するといいます。
転ばないように片手を壁やテーブルなどに置き、交互に片膝を上げましょう。
かかとをゆっくり上げ下ろし

また、「かかとの上げ下ろし」もいいそうです。
椅子などに手を置いて体を安定させ、背伸びをするように両足のかかとをゆっくりと上げて、下ろします。
「無理なく続ける」

スクワットも効果的です。
足を肩幅に広げて立ち、ひざを前に出すのではなく、お尻を後ろに引くようにして、ゆっくりひざを曲げ、ゆっくり戻します。
森さんはこうアドバイスします。
「運動は無理なく、痛みが出ないようにしてください。負荷がかかりすぎてもいけないし、逆に負荷が軽すぎても効果がありません」
「そして運動を続けることが大事です。骨粗鬆症以外の疾患がある場合もあるので、医師や理学療法士と相談して、それぞれに合ったメニューで取り組むことをおすすめします」
(メ~テレ 山吉健太郎)


