アルミ缶の持ち去り、名古屋市で年間300トン 監視パトロールに密着、持ち去る側の言い分は

近年、金属の市況価格が高騰したことで、一層大きな問題になっているのが、アルミ缶の持ち去りです。年間の被害が300トンに及ぶとみられる名古屋市のパトロール現場にカメラが密着しました。
11月7日午前8時半、 名古屋市熱田区の住宅街を走っていると…。
「(あれ持ち去りとは)違うか?」「違わないですよ」
「アルミ缶を持って行ってはダメなんですけど」(パトロール隊員)
さっそく、アルミ缶持ち去りの現場に遭遇しました。
大量のアルミ缶を積んだ自転車を発見。
「ちょっとちょっと!」(パトロール隊員)
「本当はやってはいけないけど、わかっているけど…」(持ち去ろうとした人)
「生活のためというのはわかるんだけど、これは名古屋市のものだから」(パトロール隊員)
「わかっています」(持ち去ろうとした人)
名古屋市によりますと、この5年で、金属の市況価格が3倍以上になるなど高騰。
価値が高まるにつれて、名古屋市では2021年ごろからアルミ缶の持ち去りに関する通報が増加し、6件だった2020年度から、2024年度は25倍以上の152件に達しました。
「黙ってみんな持って行っちゃうもんね。みんな見て見ぬふりしている」(市民)
「一人一人が、いわゆる再生利用して、資源をリサイクルしようと思って市に協力して出してきたものを、特定の人が自分の金もうけのためにもっていってしまうのは腹立つ」(市民)
名古屋市は罰則付き条例案を提出へ

増え続けるアルミ缶持ち去りは、市民生活にも影響を及ぼしているようです。
「(2024年度の推計で)少なくとも年間300トンほどの空き缶の持ち去りがある。少なくとも5000万円程度の影響額があると考えている。市が適正に回収してリサイクルに回せば、市の歳入になっているはずのものなので、ほかの市民サービスに使えたのではないかと考えている」(名古屋市環境局 作業課 河合幸樹さん)
名古屋市には、持ち去る際にアルミ缶をつぶす騒音などへの苦情も多く寄せられているといいます。
こうした状況を受けて、名古屋市はアルミ缶を含めた資源ごみの持ち去りを禁じる条例案を提出する方針です。
勧告や命令に従わない場合、50万円以下の罰金を課す内容で、2026年4月の施行を目指しています。
生活困窮者の“収入源”の側面も

規制の強化に先立ち、名古屋市は2023年からパトロールを始めました。
10月24日、瑞穂区をパトロール中にも大量のアルミ缶を自転車に載せて持ち去ろうとしている人の姿が――。
「あかんでね。こういうことやめて、市役所行って」(パトロール隊員)
「政府の金、生活保護をもらうのは恥ずかしい」(持ち去ろうとした人)
「そうじゃなくて区役所行って相談すればちゃんとやってくれるから」(パトロール隊員)
アルミ缶を持ち去る人の中には、生活に困窮しながらも行政の支援を受けるのに抵抗がある人たちもいます。
名古屋市は、アルミ缶を持ち去る人に「適切な支援を受けてほしい」とパンフレットを手渡し、呼びかけていますが…。
約1時間後…。
「そこにおるやん。さっきの人」(パトロール隊員)
先ほど注意を受けたばかりの人が、すぐ近くで再びアルミ缶を集めていました。
自転車で運べるのでしょうか…袋はどんどん大きくなっていきます。あの後もアルミ缶を集めていたのでしょうか?
Q.注意された後もアルミ缶を集めていたんですか?(記者)
「…今帰ります。少し入れた」(持ち去ろうとした男性)
Q.ダメと言われていたのになぜいれたんですか?
「来週ここでやらない」
Q.これでいくらくらいになる?
「今2500円くらい」
男性はそのまま大きな袋を自転車に乗せ、走り去っていきました。
名古屋市「適切な支援を受けてほしい」

持ち去りは、別の区でも…。
生活保護など行政の支援を受けずに、持ち去ったアルミ缶で生計を立てようとする人が後を絶ちません。
「生活のためアルミ缶をとって売ってお金にしている。年金とか生活保護じゃない“路上生活”。やらないとしょうがない。名古屋市の資源とわかっているけど、そんなことを言っていられない」(持ち去ろうとした人)
持ち去られたアルミ缶は、金属買取業者などに持ち込まれ、1kg200~250円前後で取り引きされているといいます。
ホームレスなどの生活困窮者にとって貴重な収入源になっていることが、持ち去りが減らない原因の1つとなっています。
行政による支援を拒み、アルミ缶を持ち去る人が減らない現状の中、規制強化は問題解決の一手になるのでしょうか。
「本人の意思を尊重しながらになるが、福祉施策の案内チラシを渡して支援につなげていければと考えている。なかなか難しいが、(市民からの)通報件数が増えている。市民が分別ルールを守って出していただいたものは市が適正に収集して処理する責任があると考えているので、市民の期待に応えていきたいと考えている」(名古屋市 河合さん)





