
「見方変えれば不安も人生の中で必要。怖がらなくていい」大垣共立銀行・境頭取 本から学ぶ物事の捉え方

境頭取の私の一冊は「日日是好日」

大垣共立銀行 境敏幸頭取
経済界で活躍する企業のトップや功労者たちは、どんな本を読み、どのような影響を受けてきたのか?その人にとっての「特別な一冊」をインタビュー形式で紹介します。 今回は、斬新な挑戦に取り組む大垣共立銀行を牽引してきた境敏幸さん。境さんの特別な一冊は「日日是好日」。いま生きていることを実感するベストセラーエッセイ。「毎日が良い日」と五感で味わう感動を綴った一冊です。 お茶の世界から学んだ境さんがビジネスや私生活での「捉え方」について語っています。 私の一冊:「日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」森下典子著
いいことも悪いことも今は未来につながっている

「日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」森下典子著
「日日是好日」は人の生き方を柔らかく素直に教えてくれる本だと思います。この本の中で、著者がいろいろな経験をされて、悩んだり発見したりしていく過程を見ると、それぞれの人に当てはまることばかりだなと思います。 悩むことは誰しもあるし、世の中理不尽で思うこともたくさんあるし、努力してもうまくいかないことも多い中で、それを受け入れていく。受け入れながらやり過ごして、その時分からなかったことが後で分かってくる。いろいろな発見が常にあるというのは共感できます。 仕事の中でもそういうことが多々あります。自分も若い頃は「何でこんなことやっているんだ」と思うことはよくありましたし、「上から言われたから、とりあえずやっていた」ということもありました。 私も65歳なので、振り返れば良いことも悪いこともたくさんありました。ただ、いろいろ経験した中で、悪いことだと思っていたことが、今の自分にとって役に立つ経験もあって、大事なものになっています。 人に教えられたことはやはり抜けていく。自分のものにならないと最後は自分で考える。自分で考えて感じるところまでいかないと、自分のものにはならないです。 ビジネスでもそうですが、お客様のニーズを我々も体験して感じないと、ビジネスに対しての想像力が働かない。いろいろな体験をすることが、いいサービスの提供につながります。 本の中にも「長い目で見て今を生きろ」という言葉がありましたが、いいことも悪いことも今は未来につながっている。そう思えば、へたりそうな気持ちを立て直す、いいきっかけになるのではと思います。
悪いことも見方次第 見方を変えた時に全く違うものが見える

見る場所が変わると見え方も変わる
ポジションや役割が変わった時、見る場所が変わると、今まで見えていたものが違うものに見えることがあります。また、新聞雑誌等で同じ事件を見ていても、見方を変えた時に全く違うものが見えることがあります。 そういう経験をしておくと、この本にあるように、悪いことだと思った裏側に、実はいいことがあると必ずわかります。 今までダメだと思っていたこと、ミスも実は経験として非常に有効で、挑戦をしていく中での失敗は次につながっていく。長い目で見たら、何がいいか悪いかなんていうのは、後にならないと分かりません。
面白くビジネスして、楽しく生活する

自分の成長を感じることが、一番人を幸せにする
経験し続けていくための原動力は、個々人の好奇心、面白いと思うこと、楽しいと思うこと。自分の成長を感じることが、一番人を幸せにすると思います。 起きている時間の相当な割合を皆さん仕事に費やしていると思うんですね。やる仕事が面白くなければ幸せを感じられないと思うので、「辛くても面白い」と思えれば、それに立ち向かっていけます。 やはり第一は自分ですから、自分が幸せにならない限り、人を幸せにすることはできないので、自分が幸せを感じられるためには、同じ感覚を共有していくことが、今求められているのかなと思います。 争うのではなしに、受け入れて、どう自分の中でこなしていくか。しなやかで柔らかい心をつくっていく意味で、この本は非常に勉強になるなと思いますね。
希望も不安も見方次第 悩みもいい経験に

境頭取と著者の森下典子さん
若い方々は人生の経験がまだ浅いので、この先どう変わっていくか、過程に対する不安が大きいと思うんですね。希望もあれば不安もある。でも見方を変えれば、希望も不安も自分の人生の中で必要なことになる。それに対して怖がる必要はないです。 未来は変わっていくけど、全て「日日是好日」でいいことだと思える。自分の心の在り方を柔らかくして、しなやかさを持てば、いろんなことに挑戦もできるし、今辛いなぁと思っていることも癒される。いろんなことに悩んでいる方も多いと思うんですね。でも、それもいい経験になると思います。 私は生かされない経験はないと思うんです。今を諦めなければ未来につながっている、そう感じてもらえたらいいなと思います。
本には経験を超えた感動と共感がある

多面的に物事を考えて、経験するために読書をする
本はいろいろなことを教えてくれます。自分が経験してないことを、代わりに本の中で経験させてくれます。もう一つが、この本のように自分の経験を具体的にイメージさせてくれる。もしくは思い出させてくれる。自分の持っている世界を広げてくれる。 本の世界には自分の経験を超えたいろいろな感動、共感、もしくは新しい挑戦の素がいっぱいあるので、たくさん本を読むのがいいかなと思います。 私は仕事に関連した活字を読むことが多いんですけども、多面的に物事を考えようと思うと、いろんな見方を得る、もしくはできれば経験したい。それを叶えてくれるのが本ではないかなと思います。