「音楽だけでは食べていけない」現実に立ち向かう 喫茶店の“流し”から夢の大舞台に挑む型破りなトランペッター 副業で食いつなぐ若きサックス奏者 音楽の世界に生きる二人のリアル

仲間からは革命家と呼ばれ、ファンからは孫のように可愛がられる、 “流し”の喫茶店トランペッター。彼がクラシック最高峰の舞台で開いたコンサートは、涙あり、笑いあり。しかも、若い人材を守りたいという思いから、子どもや若手音楽家は入場無料という大盤振る舞いです。

そこには、音楽だけでは食べていけないという現実がありました。

一流オーケストラにも出演するプロ1年目のサックス奏者。演奏活動の傍ら、楽器店などで副業しながら生活を支えています。その悲しいギャラ事情とは…。

知られざるミュージシャンの世界に迫ります。

“流し”のトランペッターの挑戦! 喫茶店から最高峰の夢舞台へ

「音楽だけでは食べていけない」現実に立ち向かう 喫茶店の“流し”から夢の大舞台に挑む型破りなトランペッター 副業で食いつなぐ若きサックス奏者 音楽の世界に生きる二人のリアル

2年前、取材班は愛知県内のとある喫茶店を訪れました。そこで、観客一人一人に語りかけるように演奏していたのは、春日井市在住のトランペット奏者・嶺元大和さん。

情感たっぷりに演奏したかと思えば、「今日はカメラ入ってますけど、みなさんお化粧とか大丈夫ですか~」と、流ちょうにMCもこなします。

もともとは、名古屋フィルハーモニー交響楽団などにも出演するクラシック奏者でしたが、当時、コロナの影響で演奏の場が激減。そこで、県内の喫茶店を中心に自ら営業をかける、「流しのトランペッター」として活動するようになったのです。

常連客が多い喫茶店でファンを獲得できたら、長く愛されるのでは…。それが大和さんの作戦ですが、クラシック奏者が自ら営業なんて異例中の異例。しかも、アポもとらずに飛び込みで営業をかけるスタイルです。

トランペッター 嶺元大和さん(当時31):

「アポイントをとると、そこで『ウチ音楽は…』って(断られる)。自分の顔とか人柄で判断してほしいので」

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あれから2年がたった2026年2月。再び大和さんに取材を申し込むと、なぜか愛知県清須市の城の前で待ち合わせすることに。

実は大和さん、半年ほど前から各地の名所で演奏し、その様子を撮影してSNSで配信しているのです。

城での撮影許可は直前に取ったばかりという、相変わらずの飛び込み営業スタイル。

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この日は、大須でも営業をするというのでついて行ってみると、向かったのは、芸事にもゆかりがある万松寺。受付に向かうと、「私、トランペットをやっております大和と申しますが…」と慣れた様子で話し始めます。

交渉すること14分…なんとか許可が下りました。

めったにない出来事に万松寺の担当者もビックリ。「御朱印を待ってる方もいるので、楽しんでいただけるならいいかな」と許可してくれたようです。

寺という独特な雰囲気の中、大和さんが選んだ曲は「もののけ姫」。突如始まった数十秒間の演奏会に、参拝客は「何事だ?」といった感じでしたが、徐々にひきこまれていきます。

さらに、商店街の中にある人気うどん店でも演奏。コンサートのチラシまで置かせてもらっていました。

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“流し”の喫茶店トランペッターだった大和さん。喫茶店以外にも営業をかけていたのには理由がありました。

トランペッター 嶺元大和さん(33):

「3月に大きなコンサートが待ち受けていて。1800人も入る、世界に誇る名古屋のホール。東海3県のエンタメが盛り上がることが一番大事」

なんと、クラシックの最高峰、愛知県芸術劇場でコンサートを開催するというのです。大和さんによると、客席数は喫茶店のときの約90倍。会場費は1日100万円ほどかかるのだとか。

そこで、大和さんはクラウドファンディングを利用。喫茶店で知り合った人などの支援で300万円が集まりました。

愛知県芸術劇場の関係者によると、スポンサーなしの単独公演は記憶にないほど“稀”なケースだといいます。

ですが、大和さんの型破りな試みはとどまることを知りません。なんと、子どもと若手音楽家は入場無料にするというのです。

大舞台でのコンサートは成功するのでしょうか…。

プロ1年目のリアル オーケストラのギャラ事情

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東京を拠点に活動しているプロサックス奏者の北島実幸さん。2025年に関東の音大を卒業したばかりの若手です。

この日は、久しぶりに音大の同級生3人と再会しました。その中の1人から、音楽の教員になるという報告が。プレーヤーとしてではなく、教える道を選んだ同級生。他の二人も、運送会社や美容クリニックで働いているといい、北島さん以外、楽器を置いていました。

プロサックス奏者 北島実幸さん(23):

「同期が30人ぐらいいたんですけど、楽器を続けているのは1割ぐらいですね」

音楽で食べていくのは、それほど過酷ということなのでしょうか。

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北島さんの拠点は東京ですが、家賃が高いため都内には住めていません。神奈川県川崎市にある自宅を訪ねたとき、北島さんが昼食で食べていたのは、具がタマネギだけのペペロンチーノ。生活はかなりかつかつな様子です。

東京の一流オーケストラに出演したときのギャラを見せてもらうと、3公演分で4万2651円(1公演約1万4000円)。これでもかなり高額なのだとか。この月の演奏による収入は、これだけだといいます。

クラシック業界は、客層の高齢化やスポンサー企業の撤退などで、年々演奏の場が減少。

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北島さんの生活を支えているのは、楽器店などでの副業です。注文を受けた譜面や部品を手配したり、練習スタジオを管理するなど、月15万円から20万円ほど得ています。

働きづめの毎日ですが、空いた時間に楽器店のスタジオで練習できるのが救いなんだそう。

プロサックス奏者 北島実幸さん(23):

「今、個人の練習をする時間があまり取れてなくて、学生時代の練習の貯金を切り崩しているみたいな感覚」

観客も参加! 涙と笑顔の型破りコンサート

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3月22日、大和さんの単独コンサート当日を迎えました。会場は、クラシック最高峰の舞台、愛知県芸術劇場コンサートホール。

開演5時間前になると、大量の機材が急ピッチで搬入されます。この公演に関わるスタッフや演者は30人ほどですが、そのすべてを主催の大和さんが指揮します。

トランペッター 嶺元大和さん(33):

「でかいですね。オーケストラとかでは 何度もやったことありますけど、やっぱりソロでとなると 全然違いますね」

その様子を覗いていたのは、東京からやってきた北島さん。準備の様子から見てみたいということで、特別に見学させてもらえることになったのです。

プロサックス奏者 北島実幸さん(23):

「演奏会って100~200人集まれば上出来と言われる中で、挑戦的なことをやるミュージシャンは減ってきている気がして(見に来た)」

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そして、ついに本番の幕が上がりました。大舞台に響く大和さんのトランペット。ピアノとのしっとりとした曲から、ドラムや弦楽器なども取り入れた迫力満点のオリジナル曲など、全17曲を演奏しました。

特に盛り上がったのが、観客と一緒に曲をつくる企画です。「ドレミファソラシ」の中から3人が好きな音を選び、最後にタイトルをつけると、大和さんが即興で演奏するというもの。

選ばれた音は「レ、ラ、ソ」。タイトルは名前にちなんで「大和魂」に決まりました。

すると、迷う様子もなく演奏を始める大和さん。お客さんとつくるこの日だけの特別な一曲に、客席は大盛り上がり! ここでも大和さんらしさが光りました。

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来場客数は約700人。ホール席数の半分以下でしたが、コンサートを楽しんだ人たちは…

熱心なファン:

「尊敬してます。一歩一歩積み上げてきた結果だと思うので、これからも応援し続けたい」

楽器を練習中の子ども:

「自分もたくさん練習して、いつか大和くんとトランペットを一緒に吹けたらいいな」

プロサックス奏者 北島実幸さん(23):

「誠実であるべきだなと、今日のコンサートですごく思いました。お客さんを大事にするとか。びびらずに何でもやっていこうと」

確実に 思いは届いているようです。北島さんは、オリジナルCDの制作を決意。全国のホールに営業をかけたいと笑顔を浮かべました。

演奏を通して、多くの人に感動と希望を与える大和さん。今日もどこかで飛び込み営業をしているかもしれません。

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