ハワイでも大活躍の”食べられる器”…水を入れても2時間以上破れない! 「将来的には経営の軸に」
プラスチックごみの増加が問題となる中、「食べられる器」が注目を集めています。活躍の場は海外にも。その実力とは?
魚介たっぷりのパエリアに、焼きたてのみたらし団子。3月5日、碧南市の漁港で地元グルメなどを集めたイベントが開かれました。
訪れた人を観察していると、なんと器を食べてしまいました。食べられる器、その名も「イートレイ」です。
器を食べる様子
製造しているのは碧南市にある丸繁製菓。アイスクリームの「もなか」などを手掛けています。
製造現場にカメラが入りました。
材料の粉
「食べられる器」の材料の粉です。
専用の金型に入れて、180℃で熱すると、3分ほどで焼きあがりました。
焼きあがった様子
一見、アイスクリームのコーンやもなかのようにも見えますが…。
「一般的なアイスクリームのもなかは、主原料が小麦粉とコーンスターチ。食べられる容器は主原料が馬鈴薯でんぷんと呼ばれるジャガイモのでんぷん。製品の特徴である耐水性を培っている」(丸繁製菓 榊原勝彦専務)
「ジャガイモ」の、でんぷんは、小麦粉よりも粘り気があり、焼き上げると、適度な固さと耐水性が生まれます。碧南の特産品・えびせんべいにも使われていることがヒントになりました。
どのくらい水に強いのか。一般的なもなかと食べられる器に液体を入れて実験をしてみました。
一般的なもなかに液体を入れた場合
普通のもなかは20分ほどで液体が漏れてしまいました。
「食べられる器」に液体を入れた場合
一方、「食べられる器」は2時間たっても大丈夫!
「おいしく食べていただく可食性と容器としての機能を両立させるための固さが難しくて、一番いい加減をみつけるのが大変でした」(榊原専務)
開発のきっかけは、ゴミとして出されるプラスチック容器の増加。日本では、1人あたりのプラごみが年間およそ32キロと、アメリカに次いで世界ワースト2位です。
「どうしても食品業界というのはゴミが必ず発生する業界なので、自分たちの技術で何とか課題解決できる問題じゃないのかなと」(榊原専務)
食品を入れるプラ容器でも…食べてしまえばゴミが出ない! このコンセプトが、うけました。
「最近はSDGsという言葉もご理解いただいているようで、すごく利用される機会が増えている」(榊原専務)
マツモトシェイブアイス 「食べられる器」導入
今、丸繁製菓が進めているのは、世界展開です。
ハワイで人気のかき氷店「マツモトシェイブアイス」。プラスチック容器を減らそうと、一部の商品で「食べられる器」を使っています。
「かき氷も全然1時間以上置いていても固いままの皿。地元の人も珍しがって「ワオ!」と言っている。ゴミの量も1/3ぐらいに減った。エコで頑張っているように見てもらえる」(松本悟子さん)
「台湾、シンガポール、香港、オーストラリアも海外輸出をしたことがある。今後はヨーロッパとかそういった方面も輸出したいと思っている。アジア圏だと宗教の問題があったり、ヨーロッパだと食品を包むための袋に指定が入ったり、その国にあった商品に作り替えていくような形は取っていく必要がある」(榊原専務)
「環境に配慮した商品は、開発や製造にどうしてもコストがかかるため商品に価格転化せざるを得ません。今回の食べられる器の販売価格は1つ100円ほどでプラスチック容器に比べると割高になっています。国や自治体が補助制度を導入したり大量生産できる体制を整えることによっていかにコストを削減できるかが普及のカギを握りそうです」(日本経済新聞社 名古屋支社 清水涼平記者)
「今はまだまだ食べられる食器、この可食容器事業は会社の柱になる状況ではないが、今後2~3年後には会社の中心になるように色々と展開している」(榊原専務)