【戦後75年特集】戦争に翻弄された東山動物園の人気者たち 対照的な運命をたどったライオンとゾウ…伝え継ぐ「戦争の記憶」

中京テレビ
08.18(火)03:00

 戦時中、人間の都合で殺された動物たちがいました。そんな時代があったことを信じられますか。

 

 たくさんの動物が出迎えてくれる名古屋市千種区の「東山動植物園」。

 正門からライオン舎へと向かう坂道の先に、戦争を伝えるものが残っています。

「奥にありますので、気づかずに通り過ぎて行く人も多いかなと思います」(東山動植物園 教育普及担当主幹 今西鉄也さん)

 それは、東山動植物園で死んだ動物たちの霊をまつる慰霊碑。その中には、戦争で死んだ多くの動物たちも含まれています。

 慰霊碑の隣にあるのは、戦争後に建てられたレリーフ。彫られたゾウとライオンは、戦時中、まったく異なる運命をたどったのです。

 

 東山動植物園が開園したのは、日中戦争が始まった1937年。当時としては、とても珍しかった動物園に連日、多くの人が詰めかけました。その数、1か月で46万人。

 このとき、動物園と戦争は無関係だと、誰もが思っていました。しかし…。

 

 開園から4年後の1941年。太平洋戦争に突入。徐々に戦況は悪化し、全国で空襲がはじまります。

 名古屋市は、空襲によって建物の40%が焼失。死者は約8000人と壊滅的な打撃を受けました。

 

 そんな中、人間が起こした戦争に、動物たちも無関係ではなくなっていきます。

「訓練時の写真がちょうど、この角度で残っています。当日も、おそらくここから狙ったのではないかと思います」(東山動植物園 今西さん)

 ここはライオン舎の前。開園時から変わっていない場所のひとつです。

 戦時中、まさにこの場所で、猛獣を射殺するための訓練が行われました。

 万が一、空襲によりライオンが逃げだしたら、射殺しなくてはいけません。

 

 しかし、戦火が近づくにつれて、市民の声は、職員が思ってもみなかった方向に進んで行きます。

「動物園は、最初は楽しいものだったのだろうと思いますが、猛獣がいるから危険な場所なんだと認識が変わったのかもしれない。まずは自分たちの命を守るのが第一になるのは当然と思います」(東山動植物園 今西さん)

 動物園に対する市民の扱いが、娯楽から危険なものへと変化したのです。

 新聞には、空襲時の危険を訴える市民の投書も掲載されるように…。

 そして、ライオンやクマなどの一部の猛獣たちは、空襲がひどくなり始めた1944年12月、射殺されてしまいました。

 

 一方、奇跡的に戦争を生きのびたのが、動物園の人気者、アジアゾウ。

「非常に芸達者で、人だかりが、ゾウたちの周りに映っている写真が残っていますので、そこから人気ぶりが分かります」(東山動植物園 今西さん)

 サーカスからやってきた4頭のゾウは台に乗ったり、逆立ちなどの芸を披露し、動物園のスターでした。

 しかし、そんな人気のゾウにも軍から処分の要請が…。

 

 なんとしてもゾウは守る!動物園側は常時、鎖で前足を拘束することを約束し、処分の見送りを訴えます。

 その結果、ゾウの処分は見送られることになったのです。

 

 しかしこのころ、食糧事情が悪化。

 そのため、園内の空き地のほとんどがエサを得るための畑になりますが、1日約100キログラムのエサを食べるゾウのおなかを満たすのは不可能でした。

「(当時の職員たちは)自分の子どもに食べ物を与えられないぐらい情けなかったり、申し訳なかったと感じたのではないかなと思います」(東山動植物園 今西さん)

 殺処分の危機から守ったゾウですが、深刻な食料不足で、徐々にやせ細っていきます。

 そして、職員たちの努力も報われず、飢えと寒さなどから、4頭のうち2頭のゾウが死んでしまいました。

 

 1945年8月、日本は終戦を迎えます。

 奇跡的に生きのびた2頭のゾウは、再び動物園の人気者に。

 戦争を経験し、元気に生きのびたゾウは日本中で東山動植物園だけでした。

 

 今年で戦後75年。

 人間の都合で殺されてしまったライオンと、人間の愛情により生きのびたゾウ。

 レリーフに刻まれたライオンとゾウは、対照的な運命をたどったのです。

 楽しい場所であるはずの東山動植物園。しかし、ここには、戦争の犠牲になった動物たちがいました。

 この慰霊碑は、私たちに平和の尊さを伝えてくれているのです。


 

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