キズも塗り直しも見逃さない! 独・スタートアップの最新装置で中古車を丸裸に 狙いは人手不足解消

中古車業界はいま、検査員の人手不足に悩まされていますが、解決に向けてある装置が日本に上陸しました。どんな装置なのでしょうか?

中古車を丸裸に
一台の車が入っていったのは…真っ白な楕円形の空間。ターンテーブルに載った車が回り始めると次の瞬間、白や青の光が明滅しました。
外にあるモニターを見てみると…次々と先ほどの車の画像が映し出されていきます。これは一体何なのでしょうか。
「車両をいろいろな角度から撮影した写真です」(双日 自動車本部 真鍋昌奨主任)
ドイツのスタートアップ企業「ツインナー社」が開発した主に中古車を検査するための装置「ツインナースペース」です。
センサーで車のサイズを寸分違わず計測しつつ、自動的に2台の高解像度カメラで360度パノラマ撮影。内装は車内に置いたカメラで、車体の下は車が入るときにまたぐカメラで撮影しすべてデータ化されます。
その間、最大でも10分ほどです。AIで処理された画像によって、マフラーのさびまでくっきり見えます。
さらに赤外線と紫外線を車に当てての撮影も行います。その画像データによって、車の塗装の経年具合を測ることができます。
「ドアごと丸々変えたのか、もしくは何か(新しく)塗ったのか、そういったことが検知できます。飛び石の傷もひとつひとつくっきり見えます」(双日 真鍋さん)
人の目ではわからない細かい傷やへこみまで、車の外観を丸裸にできるんです。

総合商社双日が日本での販売権を獲得
「ツインナースペース」は総合商社の双日が資本業務提携し、日本での販売権を得ました。
実は双日がこの装置を手掛けようとしたのには理由がありました。
「いま新車がなかなか購入できないことで中古車の人気が上がっているが、検査員の人数が十分ではないと聞いている」(双日 自動車本部 高橋亨担当部長)
世界的な半導体不足やアジア圏でのコロナ感染拡大による新車の減産により、手に入りやすい中古車の市場規模は2021年に4兆円を突破。高止まりが続いています。

中古車業界の救世主となるのか
中古車仲介業者、JU岐阜羽島オートオークションのカープールには、見渡す限りずらりと中古車が並びます。
毎週土曜日に行われるオークションに出品されるのは、1日平均およそ5000台。いまは1台1台、人の目で検査をしています。
「1日あたり1人の検査員が約50台から60台の検査をする。午前9時から午後6時くらいまで。体力的なことや1日の中でモチベーションを維持しながらやるのは非常に困難なので、検査員になろうという人が減っているのは事実です」 (JU岐阜羽島オートオークション 熊崎尚樹社長)
人手不足によって引き起こされるのが、車の査定のバラつき。企業の信用問題に直結するといいます。
「検査員が検査できなかった部分が後から発覚して査定と差異があるとクレームがあることも。(ツインナースペースが)人間では見えない、できないところをシステムで可視化できることに感動した」
日本経済新聞社 門岡春花記者が解説します。
「車の検査において電力系統や動力系統などの検査は、人の目や手による確認が必要な部分がある。ただ、中古車業界の人手不足解消と検査の質の確保という点では、ツインナースペースにかかる期待は大きい」
果たして「ツインナースペース」は中古車業界の救世主となるのか。双日は国内で30機ほどの納入を目指しています。