【解説】空港スタッフが人手不足のワケ 飛行機運航に支障も コロナ5類移行もセントレアに人手戻らず

空港スタッフの人手不足の問題について、帝国データバンク営業企画部長の上西伴浩さんに話を聞きました。

セントレアの総従業員数が2021年で最少に
―――セントレアの総従業員数のデータでも人数が減少しています。現場の感覚としても人手が減ったという声は上がっているのでしょうか。
さまざまな業界全般的に人手不足といわれる中で、特にコロナで航空機関連もしくは飛行場関連の事業者の方は、離職された方や出向された方が多いです。なかなか空港の従業員が戻ってきてないという声はいろんな事業者から聞いています。
―――空港スタッフの人手不足はかなり難しい問題になっているのですね。
喫緊の課題です。インバウンドで観光産業は、入り口として空港が活況になってきたところです。2023年春先からは国交省でさまざまな検討委員会が行われているようです。
建設業や運送業に比べて平均年収が少ない

上西 伴浩さん
―――そもそもなぜ空港スタッフの人数が足りなくなってしまっているのでしょうか。
飛行機が空港に到着して出発するまでの限られた時間の中で、さまざまな地上支援作業が行われていますよね。これを「グランドハンドリング」(グラハン)といいます。例えば、バスで輸送したり給油したり、ターミナルでは搭乗手続や荷物の搬送などグランドハンドリング業務に従事する企業が多々あります。
そこで以前から問題になっていたのは、平均年収の問題です。国交省の資料になりますが、グランドハンドリングに携わる方の平均年収は326万円だったのです。ところが、一般的な建設業に従事する方の平均年収は451万円。大型トラックの運送事業での年収は463万円になります。こういった待遇の問題もあるので、国としてはある程度改善策を出した方が良いのではないかと議論されているようです。
―――華やかなイメージを持っていましたが、待遇のところでは少し問題になってしまっているのですね。
待遇や作業的な内容、福利厚生を含めた問題かと思います。今後、国で何らかの改善策を打ち出そうというような動きがあると思われます。
SNSを駆使した採用活動も
―――国も動き出しているので、空港スタッフの人手不足はすぐに解決できそうな気がしてしまいますがどう感じますか。
実際にいくつかの事業者の方に取材してみました。例えば、採用したくてもなかなか応募が来ない中でSNS を有効活用したり、インターンシップを従来のとは違う形式をとったりなど工夫して採用活動を行っています。また、航空業界や飛行場の業界に従事していなかった方でも、燃料関係や運送関係の経験者の方に直接声をかけて採用するように力を入れています。
そういった採用活動を積極的に行っている事業者が増えていると聞いています。
―――業界のみなさんによる人材確保の努力の結果、長期的には人手不足の問題解消できそうですか。
日本全般の話になりますが中長期的には人口が減り、生産年齢人口も減っていきますのでそう簡単な話ではありません。一方で、人が今まで行っていた業務をDXもしくはロボティックスの力を借りる動きもあります。各空港での自動チェックインやスマートレーンの導入によって業務効率化を行えば、バランス良く空港を運営できるのではないかと思います。