人工芝の張り替え費用4千万円「現役生にお願いしたい」、「無理でしょ」 公立高にのしかかる問題 愛知

人工芝グラウンドがピンチ。愛知県立熱田高校のグラウンドに敷かれている人工芝をめぐり、学校側がある大きな問題に直面しています。
名古屋市熱田区にある県立熱田高校。
ここには2022年から県内唯一のモノがあるんです。
「県立熱田高校です。この学校のグラウンド、人工芝なんです」(上坂嵩アナウンサー)
人工芝はグラウンドのほぼ全面に敷かれています。
太平洋戦争末期の1945年の6月9日。
熱田区の軍需工場などが爆撃され、2000人以上の命が奪われたとする熱田空襲がありました。
特に甚大な被害を受けたのは、戦闘機などを製造していた航空機工場があった愛知時計電機。
愛知県によりますと、熱田高校はその跡地に1953年に建てられました。
「創立70周年の記念事業として、人工芝をグランドに設置」

さらに、1971年の熱田高校のグラウンドの様子を見てみると水はけが悪そうな様子が映像に残っていました。
今も人工芝が敷かれていないグラウンドは水はけが悪いといいます。
Q.課題があって人工芝の案が出た
「工場が名古屋の空襲によって、がれきになってしまった。そこに学校が立っているので、水はけが悪くて雨が降ったりすると、なかなかグラウンドが使えない状況がずっと続いていたみたいです」(熱田高校 桑山幸久 校長)
そこで解決策として出されたのが人工芝でした。
「熱田高校が創立70周年を迎えるということで、記念事業として同窓会が中心となって寄付を募って、人工芝をグランドに設置するということになりました」 (桑山校長)
整備には多額の費用が必要でしたが、寄付金や「バンテリンドーム」の張替えに伴う無償提供もあり、人工芝は2022年に完成しました。
生徒たちは――
「整備の時間がなくなるところもだが、大会が芝なことが多いので、近い環境で日々練習できているのはすごいメリットになっています」(熱田高校 サッカー部 部員)
「公立高校で唯一の芝っていうのがあって、けがのリスクとかもい土に比べて凸凹がない分つまずいたりしないので、少なくなっているのかなと思います」(熱田高校 サッカー部 部員)
張り替えに4000万以上、重くのしかかる維持管理費

しかし、この人工芝に今、大きな問題が――
「率直に最初聞いた時には驚きというか、どうしようというところがあって、同窓会から芝を敷くのに維持管理は面倒見られない状況と言われたのは、さすがに疑問を抱かざるを得なかったです」(熱田高校PTA 田中裕喜 前会長)
前のPTA会長の田中裕喜さんは同窓会から維持管理費について、どう工面するか決まっていないことを伝えられたといいます。
現在のグラウンドを見ると、すでに一部が剥げかけていたり、線が薄くなったりしているところもあります。
「使ってくると余計芝が短くなってきて滑ったりして、けがも増えてというのがあるので、もとのようにやりたいです」(熱田高校 サッカー部 部員)
「芝の状態も悪くなってきているので、もうちょっと良くしていただけたらと思います」(熱田高校 サッカー部 部員)
人工芝の維持費は年間200万円から300万円ほどで、10年ごとの張替えには4000万円以上かかります。
ただ、導入時に維持管理は高校側で担うことを県と確認していて、公費に頼ることはできない状況です。
保護者への負担増のおそれも

この多額の維持管理費をどうするのか。田中さんが同窓会側に確認したところ――
「同窓会としては『人工芝を敷くところまでやったので、それ以降の維持管理に関しては、現役生にお願いしたい』と。無理でしょと思いました。金額も何千万とかかる規模だと最初聞いたので、公立高校に通う中で私たち保護者が全額負担というと、とても重く最初は感じました」(田中さん)
PTAで費用を工面するとなると、生徒や保護者への負担につながります。
打開策を見出そうと、田中さんは去年10月、人工芝の管理保全について検討する委員会を立ち上げました。
「全員が熱田高校の人工芝の維持管理に前向きかといわれると、そうではないことも現実だと思っています。『熱田高校の魅力としては残していきたい』という声もいただいている。そこの調律をとっていけるかが今後の課題」(田中さん)
PTAは保護者から追加で会費を徴収し、維持管理費にあてることも含めて検討しているということです。