懐かしのバブルカーに魅せられた男の奮闘記! メッサーシュミットKR200を1年がかりで修理
1950年代から1960年代にかけて欧州で普及したのが、小型の簡易自動車である「バブルカー」です。今回登場するオーナーの浅井さんは、バブルカーのなかでも飛行機のコックピットのようなフォルムで人気のメッサーシュミットに魅せられました。
この記事では、メッサーシュミットの魅力と惚れ込んだ浅井さんの情熱をお伝えしていきます。
●バブルカーとは?
バブルカーは、1950年代頃から欧州を中心に普及した簡易自動車になります。1950年当時は第2次世界大戦終了から間もないこともあって、当時の自動車はオートバイに屋根を付けたような形で移動手段としては最低限の装備でした。
また、バブルカーには戦後に需要を失った航空機メーカーが参入した経緯がありました。そのなかのひとつだったのが、戦闘機メーカー「メッサーシュミット KR200」です。航空機のキャノピーのようなデザインがKR200の特徴で、コンパクトで個性豊かなデザインは半世紀以上経った今でも人気が衰えることはありません。
●メッサーシュミットの乗り方や運転方法
メッサーシュミットのKR200は、乗車スタイルも特徴的です。そもそもドアが存在しません。小型航空機のようにドーム型キャノピーを横に展開することで、乗車が可能になります。乗車位置はかなり低く、感覚はさながらゴーカートといえるでしょう。
ミッションはマニュアルトランスミッションになっていて、ボディ右側から突き出たシフトレバーを前後に介して、変速を行います。
また、ステアリングは自動車のような円形のものとは異なり、航空機のような水平のハンドルで操作感もゴーカートのようだとオーナーの浅井さんはいいます。
●1年がかりでバブルカーを修理
取材した浅井さんのメッサーシュミットは満足に走行できたことがなく、1年掛かりで修理をしている真っ最中でした。半世紀以上も前のバブルカーを再び走らせようと取り組む浅井さんですが、メッサーシュミットの復活は難航を極めます。
まず、浅井さんが苦労したのは部品の発注先で、ネットで情報を収集しつつコツコツ部品を集めることになります。
ほかにもロット数がわからずに必要以上に購入してしまった失敗談を語ってくれました。
●英語のマニュアルでエンジン修理
ようやくエンジンの修理に取り掛かる浅井さんですが、いきなり大きな壁が立ちはだかります。本業はトラックの整備士の浅井さんですが、メッサーシュミットはドイツのメーカーということもあって、取り寄せたサービスマニュアルをみても何が書いてあるかわかりません。
幸いドイツ語ではなく英語表記なのですが、それでも解読できないので1枚のエンジン組み立て図を元に修理に取り掛かります。
エンジン内部の細かいギアやピストンなど、すべての部品を慎重に取り付けていきます。休日は朝から作業に没頭し、エンジンが組みあがるまでに10日の期間を要しました。約1年の期間を要して組み上がったエンジンを前に満面の笑みの浅井さん。
●1年ぶりに走り出したバブルカー
いよいよ組み上がったエンジンを車体に取り付け、始動の儀式に入ります。まずは耳でエンジンの調子を確認しながら、少しずつアクセルを踏み込んでいくと無事にエンジンが始動。2サイクルエンジンならではの小気味よく響く排気音に、オーナーの浅井さんは思わずにっこり。
アイドリングが安定するまでしっかり暖機運転を行い、いざ出発! 1年ぶりの走行は、修理前に比べると異音もなく、オーバーホールしたかいがあったようです。
快調なKR200でエンジンをいたわりながら、ドライブを堪能した浅井さん。ですが、まだまだ手を掛けなくていけない部分があると語り、一切の妥協がありません。
KR200を「手の掛かる子」と心底惚れ込んでいる浅井さんの愛情とこだわりは、これからも続いていくことでしょう。