
農協職員とバレーボール選手の二足のわらじ “JAぎふリオレーナ”のエースに密着 声援を背に挑む大会

岐阜県の農協の職員として働きながら、バレーボールに打ち込む選手。二足のわらじをはく生活に密着しました。

岐阜県内にあるスーパー。
てきぱきと接客をこなす女性、バレーボール選手なんです。
岐阜市に本拠地を置くバレーボールチーム「JAぎふリオレーナ」。
国内トップリーグ・SVリーグの一つ下のカテゴリー、Vリーグに所属しています。
ひときわ大きな声を出していたのが、入団3年目でエースの水野梨加選手(25)。力強く柔軟性のあるスパイクが持ち味です。
「誰かが1点決めたら走り回る『盛り上げ役』。自分で言うの恥ずかしい…(笑)」(水野選手)
とある平日の朝8時半。水野選手がやってきたのは、JAぎふが運営する山県市のスーパー。
実は選手全員がJAぎふの職員として、直営店のスーパーや本社に勤務。フルタイムで働いているんです。
水野選手も午前中は品出しやレジ打ちを行います。
「一生懸命バレーを頑張って、昼間はお仕事。大変だと思う。こんなおばあさんたちの相手は」(来店客)
午後からは…店の公式SNS用に、新商品などの撮影や編集作業。
「少しでもお客さんが来てくれるように、写真をデコってかわいくして(SNSに)あげています」(水野選手)
さらにSNSでは自ら動画に出演し、イベントのPRをすることも。
水野選手に会いに、店を訪れるファンもいました。
「サイン要りますか?」(水野選手)
「書いてくれるんですか!?めっちゃかっこよくてちょっとヤバイです」(ファン)
「バレーがしたくてたまらない」

午後5時、勤務を終え練習場へ。約8時間みっちり働いた後ですが…。
「やっとバレーボールができる。早くバレーボールがしたくてたまらない。大好きで」(水野選手)
待ちに待った、バレーボールに触れられる時間。
練習ができるのは3時間ほど。量をこなせない分、質の高さを心がけます。
指導するのが、今シーズン就任した川口太一監督(30)。
愛知の星城高校出身で、現在の男子日本代表キャプテン・石川祐希選手と共に、史上初の高校6冠を成し遂げた経験を持ちます。
「(選手たちは)練習で疲れていても、次の日は朝から仕事をしなければいけない。仕事では疲れていることを表に出せないので、体と心を休める時間がないのは大変だと思う」(川口監督)
練習を終えた後は、夕食。スタッフが作ってくれたごはんを、仲間と共に食べる至福の時間。
夜10時ごろ、ようやく帰宅。これが水野選手のルーティンです。
忙しい毎日を送る中、原動力となっているのがファンの存在です。
「『きょうもがんばっていたね』と言われるのがうれしくて。『水野選手を見ていると元気をもらえる』という言葉が一番心に刺さっている」(水野選手)
大会で2018年以来の本戦出場を目指す

JAぎふには、大事な大会が控えていました。
「ファンも『今年のJAぎふリオレーナは違う』と言ってくれているので、その声にこたえたい」(水野選手)
8月下旬、静岡県で開かれたバレーボールの国民スポーツ大会、東海ブロック予選。
フルタイムで働きながら競技に打ち込む「JAぎふリオレーナ」は、2018年以来の本戦出場を目指します。
順当に勝ち上がり、迎えた決勝。相手は昨シーズンのVリーグ・レギュラーシーズン1位「ブレス浜松」。去年、決勝のこの舞台で敗れた因縁の相手です。
JAぎふは、第1セットを奪ったものの…。
エース・水野梨加選手の調子が上がらず、ブレス浜松に王手をかけられてしまいます。
後がない第4セット。劣勢の場面でも水野選手がチームを鼓舞します。
「自分もメンタル的につらかったけど、自分が引っ張っていかないといけないと思って」(水野選手)
水野選手の声かけが勢いをもたらし、第4セットを奪い返します。そして最終第5セット。
「出だしが勝負だと思うので、出だしから積極的に攻めていく」(水野選手)
エースがついに本領発揮。序盤から果敢に攻め、一時6点のリードを奪います。
リードを保ったまま、迎えたマッチポイント。
去年の雪辱を晴らし、JAぎふが7年ぶりの本戦出場を決めました。
「応援メッセ―ジをたくさん送ってくれたり、実際に職場に来て『仕事とバレーがんばってね』と言ってくれたり。そういう言葉が自分の中で力になっているので、これからもがんばり続けたい」(水野選手)