針がないのに注射ができる 衝撃波で薬が一瞬のうちに体内に 4年以内の実用化に向け研究中
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いくつになっても注射の時の痛みは嫌なものですが、実は今、針のない注射器の研究が進んでいます。針なしでどうやって薬を体内に入れるのか。医療業界の常識を覆す画期的な研究を取材しました。
「衝撃波」を利用して注射
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病院で予防接種を受ける兄弟。弟は「針が怖いから、嫌い!」と嫌がります。もし針のない注射器があればどうでしょう?
医師:
「われわれも正直、注射を打つときにすごく緊張しています。針刺し事故が少しでも減らせると思います。画期的ですね」
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そんな針のない注射器の研究をしているのが、名古屋大学の市原大輔助教授です。とても注射器には見えませんが、上腕に押し当ててスイッチを押すと、薬の粒が飛んでいくのだとか。
針の代わりに使うものは「衝撃波」です。衝撃波は、物体が高速で動いた時などに生じる波のこと。実は市原さんの専門は航空宇宙工学です。「衝撃波を弱める、あるいは打ち消すという方向で研究をずっと展開している」といいます。
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実験の様子を見せてもらいました。
電極の端から流した電流が中央に集まり、小さな爆発が起こります。その爆発の際に生まれるのが衝撃波です。実際に電流を流してみます。
「3、2、1、パチン」
フィルムの真ん中に穴が開きました。爆発の衝撃波でフィルムの破片が吹き飛んだのです。
薬を衝撃波で飛ばす「針のない注射器」
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通常、その破片は速度を落とさず飛んでいくのですが、ある日「(電圧の)設定値を誤ってしまって、予期していない衝撃波が出た」と市原さんは話します。
そのときのフィルムを見ると穴が開かずに、膨らんだだけ。計測データも予想外のものでした。
市原助教:
「(データを見ると速度が)下がっているので(フィルム中心部の)変形が始まって、どこかでトップスピードになってそのあと止まりました」
フィルムを変形させる程度の小さな爆発でも、衝撃波が生まれていることが分かりました。そこで思いついたのがフィルムに垂らした薬を衝撃波で飛ばす「針のない注射器」だったのです。
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用意したのは、人の皮膚のかわりとなる透明なゲル。フィルムの中心に薬をたらして装置にセットします。上にかぶせたゲルの中に薬が撃ち込めれば成功です。
3、2、1、パチン――。
薬はゲルの中に入りました。そのスピードは、ほんの一瞬。痛みを感じる暇もないのでは、と話します。
市原助教:
「圧力が一瞬で跳ね上がる衝撃波の特徴は(注射器に)非常にマッチしていると思います」
4年以内に実用化の目途をつけたい
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実験を重ねた結果、薬は皮下注射と同じ、皮膚から2ミリの深さに打ち込むことができました。市原さんは4年以内に実用化の目途をつけたいとしています。
日本経済新聞社 安西明秀記者:
「針のない注射器は、自己注射が必要な糖尿病患者や不妊治療患者らの負担を減らす医療機器としても期待されます。今後は既存の注射器と比べた薬の効果を実証していく段階ですが、臨床試験など経て実用化されれば、製造する医療機器メーカーの事業拡大のチャンスにもなりそうです」
市原助教:
「夢はドラッグストアで買ってもらいたい。貼り薬やばんそうこうなどが売っている並びに、この注射器が(あると良い)。それを家に帰って打てるようにしたいです」