新米が流通しても価格は高止まりの理由…専門家が分析「コメ不足の不安でJA・業者が取り合いに」

「令和の米騒動」が続いていますが、今年も新米の時期になりました。コメの価格はなぜ高止まりしているのでしょうか。そしていつ安くなるのでしょうか?
愛知県弥富市や津島市などでコメ作りを行う「鍋八農産」は、バンテリンドームナゴヤ約29個分の広さの田んぼで「あいちのかおり」や「コシヒカリ」などの品種を年間約600トン生産しています。
「去年に比べて全体を4%くらい増産した。今年の品質は高温障害があるが、収量は安定しているのではないか」(鍋八農産 八木輝治 代表)
東海農政局によりますと、既存の農地を主食用米の栽培に回す農家が増加し、コメの収穫量は7年ぶりに増加に転じる見込みです。
鍋八農産も、加工米を作るための農地を4%ほど主食用米に切り替えて、生産量を増やしました。
このままコメの値下がりが期待されますが、農家としては価格が下がり過ぎても困るのが本音です。
理想価格は、5キロ4000円台。
「5キロ4000円台は経営がしやすい。機械の更新、肥料・燃料の高騰にある程度太刀打ちできる。この価格が日本の農業を維持していくという理解をしていただけると、心苦しいですけど大変助かります」(八木代表)
販売価格も去年より↑
コメの販売価格はどうなっているのでしょうか。
名古屋市昭和区の「お米の服部」では、「コシヒカリ」や「あきたこまち」などの新米が並んでいますが、6月にはコメ不足の影響で「備蓄米」も販売していました。
「値段が去年より明らかに高く入ってきているので、販売価格に転嫁せざるを得ない状況。仕入れ値が高いので僕らも買い控えている」(お米の服部 服部純 代表)
この店の5キロ当たりのコメの販売価格は、去年の同じ時期と比べて1000円ほど高いということです。
「希望としてはもう少し下がってもらいたい。5キロ3000円台に収まれば比較的手に取りやすい価格帯だと思う」(服部代表)
下がらない理由を専門家が分析

新米が流通し始めてもコメの価格が大きく下がらない理由のはなぜなのか。
コメの流通に詳しい専門家は、今年の夏の暑さや水不足で、収穫量がどうなるか分からなかったことが原因だといいます。
「夏の段階ではコメが余るかどうかわからなかった。むしろ去年不足したので、コメを買い取る業者やJAは『今年も集まらないかもしれない』とかなり不安になっていた。”取り合い”をした結果、高い価格で買い取り契約が済んでいる状況」(流通経済研究所 折笠俊輔 主席研究員)
「今年もコメが足りないのでは」という不安感が、価格を押し上げてしまったといいます。
「新米が出回ってくる中で、相当余りそうな状況になり、頑張って値下げしてでも売り切らないといけないという形になってくると、今より数百円は安くなってくる余地はあるのかなと。11月以降にある程度出回りが本格化するタイミングで結構余りそうだとなると、年明けぐらいに5キロ4000円台前半ぐらいまで下がってくる可能性がある」(折笠さん)
それでは、コメの「買い時」は?
折笠さんは、必要な分を必要なタイミングで買うのが一番お得になると話します。
「東海地方は東からも西からもコメが入ってくる。欲しいタイミングで店頭で見かけて良さそうなコメがあれば、買うと損はしない地域。三重や岐阜などコメ作りが盛んな地域の直売所にいくと、スーパーよりお得にコメが買えることもあると思う」(折笠さん)
すでに価格が下がったところも

岐阜市にあるコメの卸売業者「ギフライス」によりますと、今年の新米の価格はすでに下がってきているようです。
生産者が中間業者や卸売業者などに提示する新米の取引価格は、この1~2カ月で1割ほど下がっていて、今後、スーパーなどの店頭にも影響が及ぶ可能性があります。
現状は5キロで税抜き4500円前後ですが、年末ごろに税抜き3980円くらいになるのではないかといいます。
来年春ごろには、「次の新米に向けて在庫をさばきたい」という理由で、さらに価格が下がる可能性もあるということです。