豊田合成の「音が見える実験室」にカメラが潜入 電気自動車の静かさを決める「ゴム」を研究

エンジンをもたないEV=電気自動車は、もともと静かなイメージがありますが、そのEVの車内環境をより静かで快適にするための技術開発が愛知で進んでいます。開発の現場は「音が見える実験室」で、その実験室にカメラが入りました。
新型ウェザストリップの開発背景

エンジンとモーターを使い分けるハイブリッド車(HV)は、エンジン音が静かなEVモードで運転しても、高速道路では風切り音が問題となります。そんなEVの静粛性を高める製品開発に力を入れているのが、愛知県清須市にある豊田合成です。
豊田合成は1949年にトヨタ自動車工業のゴム研究部門から独立し、「ウェザストリップ」などのゴム部品を扱っています。ウェザストリップは窓の周囲に取り付け、気密性を高める重要な部品です。従来のウェザストリップでは、リップと呼ばれる突起部分から音が漏れていましたが、改良を加えることで問題を解決しました。
防音実験と新型ウェザストリップの効果

豊田合成は防音室での実験により、改良されたウェザストリップの効果を検証しました。車の脇には、さまざまな周波数帯の音を一度に流せるスピーカーをセット。128個のマイクを使って車内の音を詳細に測定します。

110デシベル(2メートル前でクラクションを鳴らした時と同じ)の音を流して、音の大きさを視覚化してみると、画像のように窓の周辺が赤色に表示されました。音が大きくなるほど赤色になり、小さいと青色に。窓から音がかなり漏れているのが分かります。

ウェザストリップの断面図を見ると、リップと呼ばれる突起に振動が伝わり、車内に音が漏れていました。そこでリップを2枚にして、音の振動を2段階で小さくする仕組みを採用。結果として、音の大きさが3デシベル減少し、人の耳でも聞き分けられるほどの改善が確認されました。
レクサス「RZ」に採用される新型ウェザストリップ

この改良版ウェザストリップは、新型EVのレクサス「RZ」にも採用され、車内の静粛性向上に貢献しています。豊田合成は、自動運転や車をリビングルームにする構想に向けて、さらに静粛性を高める部品の開発を進めています。

豊田合成 ウェザストリップ開発部
大塚洋史部長:
「車室内の静粛性はこれから自動運転や車をリビングルームにするという構想もあるので、まだまだ貢献できるところがあると思います。差別化して費用対効果の良いものをタイムリーに供給していきたいです」
日本経済新聞社 名古屋支社 門岡春花記者:
「コストなどの課題からEV需要は鈍化傾向にあります。ただ、カーボンニュートラル実現のためにはEVの普及は必要不可欠になります。自動車部品メーカーには、EVの付加価値を高められる製品の開発などが求められていて、豊田合成の今回の静粛性を高めたゴム部品もその1つだといえます」