放置スーツケースを引き取り、新たな形へ 岐阜の企業「需要の高まりを感じる」

空港やホテルなどでスーツケースが捨てられ、放置される事案が相次いでいます。社会問題となりつつある中、岐阜市の企業がこうしたスーツケースを回収し、新しいカタチに生まれ変わらせる取り組みを始めました。
「こちらに積まれた100を超える大量のスーツケース、色も大きさも様々ですが、実はホテルなどから回収された放置スーツケースなんです」(記者)
山積みされたスーツケース。これらのほとんどは、ホテルや空港で捨てられ、放置されたものだといいます。
中部空港で放置されるスーツケースは、年間で70件から80件にのぼります。
中部空港の連絡通路に空のスーツケースを廃棄した疑いで、7月には、愛知県内の30代男性が、警察に摘発されています。
警察の調べに対し、男性は「ごみとして捨てた」と容疑を認めています。
搭乗時間の直前にスーツケースが規定のサイズを超えて機内に持ち込めなかったため、中身を出して廃棄したとみられています。
最大30個も放置された月も…

スーツケースが“放置”されるのは、空港だけではありません。
「海外の観光客が増えている2023年度から少しずつ増加をしていて、月に多い時には30個程度、スーツケースが残置されていたこともありました」(JR九州ホテルブラッサム新宿 副支配人 藤本康介さん)
東京・新宿駅から徒歩3分のホテルでは多い月で約30個ものスーツケースが“放置”されるといいます。
なかには、大きな穴があいたものや、新品の近い状態のものまで。
ホテルの決まりでは、“忘れ物”として、1カ月保管することになっていますが――。
「スーツケースは大きいサイズなので、保管スペースであったり、スーツケースの処分は粗大ごみ扱いになるので、別途業者に手配をして、費用負担がかかってくる。そういったところが非常に大変。ホテルとしては苦労があります」(藤本さん)
スーツケースの引き取りを始める

こうした中、ホテルが導入したのが――
「クリアファイルに案内と一緒に置いています。シールは3枚。場所としてテレビの下に置いています」(藤本さん)
今年から始めた「スーツケースの引き取り」です。
料金は3000円で、廃棄かリユースかを選べます。
導入後は、フロントに相談する宿泊客が増えたといいます。
「今後より一層、海外からの訪日観光客の数は増えていくと思うので、ホテルとしてもそれに見合った対策を検討していきたいと思っています」(藤本さん)
“放置スーツケース”をリユースする岐阜の企業

“放置スーツケース”に悩むホテルが始めた「引き取りサービス」。
再活用を希望した場合に行きつく先は、岐阜市に本社を置く「日本鞄材」です。
“放置スーツケース”をリユースする取り組みを始めました。
「きっかけは全国のホテルから置き去りスーツケースに困っているという声をいただくことが多かったので始めたサービスになります。毎日多くのスーツケースを全国のホテルからいただきますので、需要はだんだん高まっているなと感じています」(日本鞄材 リユース事業 中村亜依香さん)
元々はスーツケースのレンタルや修理などを行っていましたが、“放置スーツケース”に悩まされていたホテルなどの声を聞き、全国からスーツケースを回収するように。
発展途上国で収納家具として生まれ変わるなど“新たなカタチ”へ

今では100を超えるホテルと契約を結んでいて、1カ月に届くスーツケースの数は、200個ほどになるといいます。
「大きいスーツケースが非常に多くて、キャスターやハンドルが破損しているものが多くみられます。全国のホテルが口々に『置き去りにされるスーツケースに困っている』というふうには聞いていたが、実際に届いてみて、これだけの量、困っていたんだなというのが印象的です」(中村さん)
回収されたスーツケースは整備されたあと、発展途上国で「収納家具」として生まれ変わるなど“新たなカタチ”で再利用されています。
「捨てられるスーツケースがもったいない。まだ使えるものがすごく多い印象なので、そういったものを活かして、ひとつでも必要とされる方に届くといいのかなと思います」(中村さん)