「スバル360」通称・てんとう虫、30年愛してやまないオーナーに密着!
1958年に登場した「スバル360」は、スバルブランドの起源となった乗用車。航空機メーカーとして急成長したスバルの技術をフィードバックしています。軽自動車ながらも大人4人が乗車できる居住空間を実現し、多くの国民の支持を得ました。
そんな名車を自分で直して走り続けるオーナーに密着して、車の特徴と魅力を紹介します。
●令和も愛される「スバル360」の魅力
スバル360の魅力は丸みを帯びたルックス。モノコックボディのかわいらしいフォルムから通称「てんとう虫」と呼ばれています。当時としては異例の12年間も生産されたロングセラーモデルです。ほぼ1年おきに熟成を重ねて進歩していきました。
初期型から後期型まで見比べると、フロントマスクの印象に変化が。ボンネットに入れられたスリットは、初期型は9本、中期型では11本、後期型ではなくなっています。
ドアは現在の車では珍しい前開きのドア(スーサイドドア)となっており、スバル360の魅力のひとつとなっています。
●運転操作の特徴(副変速機)
尾崎さんのスバル360は、フロアから伸びた2本のシフトレバーが特徴です。右側のシフトレバーがメインの3速ミッションで、左側のシフトレバーが副変速機(オーバートップ)と呼ばれるものとなっています。副変速機を用いることで1速→1.5速→2速→2.5速など、最終的には3速ミッションを6速ミッションのように扱えるのです。
もともと非力なスバル360のために採用された副変速機。特に上り坂では2本のシフトレバーを巧みに駆使し操っている感覚は、現在の車にはない魅力といえるでしょう。またスバル360は最高出力が20馬力しかありません。「エンジンを回すだけ回して走る爽快感は何事にも代えがたい」と、尾崎さんは語ります。
●エンジンを後ろに積む
エンジンは居住スペース確保のため後席後方に搭載し、356㏄の空冷2気筒2サイクルエンジンは後輪を駆動する仕組みになっています。もともとスクーター用のエンジンということもあって、エンジンはシンプルな造りです。
なおスバル360のボンネット内のフロントスペースは、居住空間を最大限生かすためにスペアタイヤが入るスペースしか用意されていません。現在の自動車に比べると小排気量なこともあって非力な印象。しかし車両重量を385キログラムに抑えることで、4名乗車で最高時速83キロメートルを発揮しました。
●旧車のメンテナンスは必須
スバル360に限らず、旧車はメンテナンスが欠かせません。尾崎さんはマイホームを建てたときに愛車スバル360専用のガレージを構えました。
「できる限り自分の手でメンテナンスしたい」。愛車の塗装からエンジンの組み立てまで自分で行い、完成した車で走るのがなによりも楽しいといいます。また長く乗り続けたい思いは強く、スペアのエンジンを30年間で5台も集めた筋金入りの“スバリスト”です。
愛車のためなら努力もいとわない尾崎さんに、ほかのスバル360オーナーが頼って訪問することもあります。エンジンの不調がないかチェックしてもらったり、スペアパーツを譲ってもらったりと、尾崎さんの仲間からの信頼は厚いのでしょう。スバリスト同士、ガレージで“てんとう虫”の話に花を咲かせているようです。