懐かしの路面電車が家の庭に!? 名古屋の市電を買い取り保管している男性に密着
鉄道模型や引退車両の部品や小道具などをコレクションする鉄道マニアはいれど、本物の車両を個人所有しているようなマニアはそうはいないのではないでしょうか。市電マニアの加藤幹彦さんのお宅へお邪魔し、長年大切にしている名古屋市電の車両を見せていただきました。
●およそ76年間、名古屋市の生活を支えた名古屋電気鉄道
現在では全国17都市19路線しかない路面電車ですが、かつて名古屋市にもあったことをみなさんはご存知でしょうか。明治31年の1898年に開業し、当初は笹島から県庁までの2.2キロの区間のみでしたが、その後市営化をし、ピーク時には107キロの路線を張り巡らせ、廃線となる1974年まで、名古屋市の重要な交通手段として活躍してきました。
●大切な思い出が詰まった実物「名古屋市電1825」を個人保管
当時、市内で教員をしていた加藤さんにとって市電は生活の一部でした。趣味で街を行き交う市電の写真も撮るほど市電が好きだった加藤さんは、廃線後、実際に通勤で使っていた名古屋市電1825を市と交渉して買い取り、庭に保管。秘密基地として活用しています。
自動ドアの機構はオミットされていますが、スライド式は当時のもの。広々とした車内、つり革もそのままです。
料金表もきれいに現存していて、当時は切符1枚25円でした。当時のままのブザーは、名古屋市在住で加藤さんと同年代の方は見覚えがあるのではないでしょうか? 運転席のレバー類もほぼ当時のままで、資料としても貴重です。
●定期的に行われるこだわりの詰まった念入りな手入れ
保管を始めておよそ半世紀、ただ置いているだけではこんなにきれいには維持できません。日々の手入れと定期的なメンテナンスが加藤さんの趣味であり、生きがいとなっています。
車内を掃除機で掃除
屋外保管でどうしても塗装面に劣化がでてきてしまうため、4、5年おきに劣化が進んでいるところを中心に塗り直しているそう。ちなみに、使っている塗料は車両の色に合わせて特別に調色してもらっています。
保存期間のわりにシートがきれいなのは、交通局に出入りしている業者に頼んで張り直してもらっているから。
名古屋市電1825を秘密基地としても運用しているため、訪れる友人や鉄道マニアのお客さんが訪れるため、快適に過ごせるようにエアコンを設置するなどのアレンジも。加藤さんの手によって、末永く保管されるだけでなく、同じ趣味の仲間と集まれる交流現場として今も活躍しているのです。