
男子中学生が考案「家事かるた」 皿洗いや風呂掃除きっかけに母親のすごさ実感「家事を甘くみている人」へ

家族みんなで家事をして楽しい家庭を増やしたいと、男子中学生が考案した「家事をする人の気持ちが100%分かる家事かるた」がようやく完成。出来上がるまでには多くの苦労がありました。
「これが届くと思うとうれしい」

■「洗濯物 表にしてから 洗濯機」
■「ゴミ捨ては 集める所からが 始まりだ」
日々家事をこなしていると「そうそう!」と大きく頷きたくなるものばかり。五七五で家事のアレコレを紹介する「家事かるた」を作ったのは、名古屋市内に住む下田大輝(しもだひろき)さんです。
構想から約7カ月。完成した「かるた」を目の前に「これがいろんな人に届くと思うとうれしい」と、はにかんだ笑顔で話してくれました。
「家事を甘く見ている人が多い」

現在中学2年生の大輝さん。勉強と部活に日々励み、インタビュー中も一言二言で返ってくる、あまり多くを語らないタイプ。子を持つ筆者の目からも「年頃の男子中学生」という印象です。
両親と兄(高1)の4人家族の大輝さんが「家事かるた」を制作するきっかけとなったのは、家のルールにありました。大輝さんは食事後の皿洗いや風呂掃除など「決められた仕事をしたら“報酬(おこづかい)”がもらえる」というルールを家族と決めています。
「(中学1年生当時)毎月の報酬は2500円から。それをやらなかったら1回ずつ減給されます。(実際にもらえる額は?)たまにやらないときがあるのでもらえるのは2000円くらい」(大輝さん)
担当の家事以外にも週末に食事を作るなどして追加の報酬をもらう一方で、部活などで疲れて家事ができず“減給”されることも。そうした中で報酬など関係なく毎日様々な家事をこなす母親のすごさに気付いたといいます。
「家事を毎日続けて、細かなところまでちゃんとやっていてすごいなと思います。家事をちょっと甘く見ている人も多いと思います」(大輝さん)
コンテストで優勝…商品化へ
「多くの人が家事について理解したら家族の楽しい時間が増えるのでは」と考えた大輝さん。
当時通っていた子どもにお金やビジネスについて教えるスクールが主催するコンテストで「家事かるた」の商品化についてプレゼン。
40人ほどの参加者の中から、アイデアや実現性などが認められ見事優勝。
商品化へ向けた挑戦がスタートしました。
かるた作りのヒントは、お母さんたちからのアンケート

まずは札にする「50種類」の家事を集めます。どんな家事があるか、知り合いのお母さんなどにアンケートを実施。すると60件以上の回答が集まりました。
「やり残していることが多いから、そこをやってほしいというのが多かったです。洗濯物の脇まで乾いているか確認してもらいたいのと、トイレットペーパーがなくなったら芯をそのままにしないで捨ててほしい。帰ったら靴を揃えるとか、ゴミの分別とか。僕もやっていなかったこととかあったので、自分も今後修正していこうと思いました」(大輝さん)
「料理」「洗濯」「掃除」という大枠だけではなく、名前が付けられていないような細かい家事についてまで無数の声が大輝さんのもとへ届きました。
それでもかるたとして採用できたのは40種類。足りない分は家事に関する本やエッセイなどを読んで参考にして50種類を集めました。
「大変だったことは読み札の文を考えるのが難しかった。かるたの文を五七五にするのが難しくて(完成まで)当初の予定より遅れてしまった」(大輝さん)
絵札のイラストは知り合いのデザイナーに依頼。絵札だけでそれがどんな家事なのか分かるように書いてもらうことも大変だったといいます。
テスト期間や部活の合間に制作…ヘロヘロに

また製品化に向けて、印刷会社との打ち合わせも自身で行いました。学校終わりに印刷会社に出向いたり、メールでのやりとりを続けました。
「1番いい紙の厚さだと予算オーバーしてしまうので、かるたのサイズを小さくして予算内にした」(大輝さん)
また、かるたの札ばかりに意識がいき、入れる箱をどうするかについて当初気付かず。打ち合わせを重ねることで新たに見つかる課題点も多くありました。
学校のテスト期間や部活の練習などもあり、ヘロヘロになることもあったと言いますが、不安より完成させたい気持ちが強かったいいます。
最大のミッション「資金調達」はクラファンで
デザインを決めるのと同じくらい重要なミッション、それは「資金調達」です。
制作費が集まらなければ商品化の実現はできません。目標金額は30万円、クラウンドファンディグで集めました。
「広めるのを1番頑張りました。おばあちゃんが友達を紹介してくれたり友達との会話の中で紹介したり」(大輝さん)
筆者が以前取材し放送したニュースを見たのをきっかけに中学校の先生も支援してくれたといいます。うれしさはもちろんですが、こんな本音も‥。
「(学校の先生や友達からの支援について)恥ずかしかったです。 (普段)そういう一面を見せていなかったら」(大輝さん)
約1カ月半の募集期間で集まったのは目標の倍以上の66万円。全国から172人が支援してくれました。
家族の中でもさっそく変化が「完成した家事かるた」

5月末、印刷会社から段ボール箱5箱分、約200個の家事かるたが納品されました。
「10個セットで支援してくれる人も何人か。数字だけ見るより(実物を見て)もっとうれしい気持ちです」(大輝さん)
いよいよ支援者に送れる!!と思いきや、最後のチェックで「説明書がないと遊び方が分からない」「このまま送ったら箱のふたが外れて中身がとびだしてしまう」など新たな課題点を発見。
急いで説明書を作成し印刷したり、かるたを入れる袋を購入し梱包したりするなどして支援者のもとへ届けることができました。
今回家事かるたを作ったことで、家族の中でも変化があったと言います。母親の香織さんは…。
「かるたの札を思い出して気づいてやってくれたり、やっていなかったとしても、かるたに書いてあるやつだね、と言うと和んだ雰囲気に」(母・香織さん)
家族みんなが協力して楽しい家庭を増やしたいという思いで作った「家事かるた」。今回はクラウドファンディングの返礼品としてでしたが、もっと多くの人に届けたいと考え、購入できるサイト(https://kajikaruta.my.canva.site/)も立ち上げました。
「家事かるたで遊んで終わりじゃなくて、生活で家事をすることにつなげてほしい」(大輝さん)
最後に、大輝さんおすすめの「読み札」を2つご紹介します。
■「空っぽだ 詰め替え作業 誰がやる」(家事だと気付いていなかった)
■「明日いる?! もっと早く 教えてよ」(読み札にするのが大変だった)
(メ~テレ報道情報局 中村春菜)