かつては“死の病”と恐れられたHIVやエイズ。治療薬の開発で普通の生活が送れるようになっていますが、今も課題が。
【写真を見る】かつて「死の病」と呼ばれ…20年前HIVに感染した男性の今 1日2粒で“普通の生活”できるのに消えない偏見 「性的接触あれば、誰もが感染リスクある。検査し早期発見を」
名古屋医療センターの感染症内科。この日1人の男性が診察に訪れました。岐阜県に住むKさん(50代)。Kさんは「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」に感染しています。
(Kさん)
Q.手のひらなどにブツブツが出たりは?
「全くないです」
この日は2か月に1度の検診。“命をつないでいる薬”を、もらう日です。
(医師)
「薬は1日1回で、食事に関係なくどう飲んでもいいです」
かつては“死の病”と恐れられた「エイズ」
HIVは1980年代に確認された、後天性免疫不全症候群「エイズ」を引き起こすウイルス。感染だけでも免疫は低下しますが、その後発症してエイズになると、治療が困難なため、「死の病」として恐れられました。
しかし、ウイルスを抑え込む薬の開発によって、性交渉でも人にうつすことはなく“普通の生活”を送れるようになりました。
(名古屋医療センター 横幕能行エイズ総合診療部長)
「ほとんどの人は、1日に1回1粒。ある程度決まった時間に、食事に関係なく薬を飲めば完了」
Kさんの場合、かつては大きな錠剤を毎日10錠も飲む必要がありましたが、今は2錠でよくなりました。
(Kさん)
「(当時の薬は)大きかったりカラフルだったり…明らかに『何かすごいものを飲んでいる』という感じだった。人前では飲めなかった」
Q.今の薬で副作用などは?
「全くない」
風邪のような症状が長引き病院へ 当時のことは「覚えていない」
20年以上にわたり薬を飲み続けているKさん。感染がわかったのは2003年。風邪の様な症状が長く続き、病院へ行って判明しました。性交渉が原因とみられます。当時については…
(Kさん)
「正直覚えていない。それくらい追い詰められていた。思い出したくないとい
うのも多分ある。半年薬を飲み始めてからは(症状が)気にならなくなった」
薬によってウイルスは検査で見つからないレベルまで減りますが、完全に消滅させることはできません。
1粒6000円程の薬を生涯飲み続ける必要がありますが、HIVの陽性者は障害者の扱いで医療の自己負担が1割になるため、経済的な負担は減らせます。
「性的接触があれば、誰もが感染リスクのある病気」
いま最大の問題は、感染していることを知らないまま、エイズを発症する人が減らないことです。
(名古屋医療センター 横幕能行エイズ総合診療部長)
「エイズを発症して初めて(HIV陽性と)診断されたのが約3割で高止まり。国際的に見ても高止まりしているのが、日本の課題になっている」
日本のHIVの新規感染者数は減り続けていますが、約3割はすでにエイズを発症した状態で見つかり、その割合は横ばいです。
(名古屋医療センター 横幕能行エイズ総合診療部長)
「性的接触があれば、誰もが感染リスクのある病気。検査を受けてほしい」
偏見は今も…「僕らはどうあがいても体の中にウイルスを持っている」
Kさんは検査の大切さや、もはや「死の病ではない」ことを伝えたいという思いから、取材に応じてくれました。
(Kさん)
「きちんと服薬すれば、『何の問題もなく生活できる』という先輩方の情報があるのに、『もうだめだ』『もう終わりだ』と絶望する人が多いのはすごく悩ましい」
命の危険はなくなったものの、偏見は今も存在すると感じています。
(Kさん)
「僕らはどうあがいても体の中にウイルスを持っているので、それは消せない。ただHIVと共に生きているだけで、偏見を持たれ差別を受けるのは、とても苦しいし…何とかならないかなと」
99%HIV感染を防げる予防薬 対象は“感染していない人”
薬でエイズの発症を防げるようになった中、今は“感染そのものを防ぐ”方法もできています。
(プライベートケアクリニック名古屋栄 野口靖之院長)
「PrEPは、抗ウイルス薬を飲むことで、性交渉であれば99%HIV感染を防ぐことができる」
専用の薬でHIVの感染を防ぐ「PrEP(プレップ)」という予防法。しかし対象は“感染していない人”に限られるという注意点があります。
(野口院長)
「感染した状態で飲み続けると、薬剤耐性を誘導する可能性がある」
感染を知らずに個人輸入などで薬を手に入れて飲み続けると、ウイルスが薬の効きにくいものに変異する恐れも。
自治体では「無料検査」も
こうした中、このクリニックでは匿名で無料の検査を受け付けています。
また名古屋市も、年3回の無料検査会を開いていて、次回は名古屋で7月5日(日)に実施します。6月22日(月)からWebでの予約を受け付けます。
医学の進歩で、もはや“死の病”ではなくなったHIVやエイズ。いまだ偏見もありますが、Kさんは「正しく恐れる」ことが自分や社会を守ることにつながると話します。
(Kさん)
「HIVに感染したからといって、罪悪感を感じながら生きる必要はない。非陽性者には、今(偏見・差別で)苦しむ人がいるときちんと知り、HIV陽性者を特別な目で見ないで接してほしい」


