養鶏の一大産地で鳥インフルエンザ 生産者「対策にも限界が」 食卓への影響は 愛知・常滑市
愛知県常滑市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが確認されました。対策に追われる生産者の思いと、食卓への影響を取材しました。
愛知県常滑市で感染が確認された鳥インフルエンザ。県内での感染確認は約2年ぶりです。
県によると1日、養鶏場から「死んだニワトリが増えた」と家畜保健衛生所に通報があり、遺伝子検査で鳥インフルエンザへの感染が確認されました。
県は養鶏場のニワトリ、約14万7000羽の殺処分を進めましたがーー
5日には別の養鶏場でニワトリの死亡を多数確認。ここでも鳥インフルエンザの陽性反応が確認されました。
県は半径3km圏内の農場に対してニワトリなどの移動の自粛などを求めています。
「対策にも限界」
今回鳥インフルエンザが確認された養鶏場から200mほど離れたところで鶏卵を生産する花井さん。
7万3000羽を飼育していて、いつ感染が広がってもおかしくないと日々不安を感じているといいます。
「同業者として一蓮托生ということもあるので、1月1日の報道を聞いた時には天国と地獄のような心境でいた」(花井養鶏場 花井千治さん)
今はウイルスの侵入を防ぐため、空気の出入り口を不織布でふさぎ、消毒を行っているといいます。
「人間でいうとマスク代わり。空気が入る所に不織布を張って、定期的に消毒をするという対策。絶対すき間はあります。そういったことを考えると、限界なのかなって。対策できることについては」(花井さん)
生産者としては非常に悲痛な思い
県によると、今回常滑市で感染が確認されたのは「H5N1型」と呼ばれるものとみられています。
7日、アメリカでこの型のウイルスに感染していた人が死亡したことが明らかになりました。日本では人への感染は確認されていません。
花井さんは、感染の拡大を防ぐためにはニワトリの殺処分は仕方ないと話します。
「ニワトリから豚へ、豚から人へというようなインフルエンザの変異があるので、それを阻止するためにニワトリを殺処分するということだと思う。パンデミック(感染爆発)が起きないように、ニワトリには申し訳ないが、犠牲になってしまっている。生産者としては非常に悲痛な思いです」(花井さん)
ニワトリの体調が整わないまま冬場を迎える
相次ぎ感染が確認された愛知県常滑市を含む知多半島のエリアは県内でも東三河と並ぶ養鶏の一大産地です。
「県内の約30%の養鶏農家が知多半島エリアで飼育していて、羽数で言うと40%強にあたる羽数を飼育しています」(愛知県養鶏協会 内田清政さん)
愛知県養鶏協会の内田さんによると、県内で卵を産む生後6カ月以上のメスの飼育数は約660万羽。このうち4割以上が知多半島のエリアに集中しているといいます。
去年は長引く厳しい暑さから一転、急激な寒さに。ニワトリの体調が整わないまま冬場を迎えました。このため、病気にかかりやすくなっているのではと心配しています。
「鳥インフルエンザのワクチンもあるけど、まだ国内では許可されていません。野鳥や野生動物の侵入を防止する柵を作ったり、消石灰を農場内にまいたりしながら、要するに防疫体制を強化している状況でしか今のところ防衛ができない」(内田さん)
対策に追われる養鶏農家。内田さんは風評被害に懸念を募らせ、1日も早い収束を願います。
「養鶏場の皆さんは、この時期になると『早く過ぎてくれ、早く過ぎてくれ』という切実な気持ちで生活されています。鳥インフルエンザが発生した人たちや、発生にビクビクしながら経営を続ける人たちを励ましていただけたらありがたいです」(内田さん)
食卓への影響は…
私たち消費者とって心配なのが、食卓への影響です。
「JA全農たまご」が公表している卵の相場を見てみると、去年の名古屋地区のMサイズ1kg当たりの卵の価格は、去年の8月ごろから上昇しはじめ、12月には300円にまで上がりました。
記録的な猛暑でニワトリが夏バテし、産卵数が減った影響です。
一昨年も「エッグショック」といわれ、卵の供給が不安定になりました。このときは一時360円まで上がったので、その時よりは落ち着いていますが、今回の鳥インフルエンザの発生で、今後の価格見通しはどうなるのか。
愛知県養鶏協会の内田さんによりますと「愛知には、静岡や関東地区の卵も入ってくるので、現時点ではそこまで価格に大きな影響はないとみている。ただ、もともと1~6月は全国的に卵が不足するといわれていたので、感染が広がれば名古屋の相場はもう一段上昇するのでは」としています。