接触図ると「車の盗難にも使える」所持は合法のCANインベーダー ネットで売られる“盗みの道具”規制の必要性は

 わずか数分で車を盗む手口「CANインベーダー」が、海外のサイトで販売されていることが分かった。いまのルールでは持っていても違法ではない“盗みの道具”だが、規制の必要はないのだろうか。

■全国で猛威…自動車盗の手口「CANインベーダー」

 駐車場に止められたトヨタ・ランドクルーザーに近づく不審な人物。左前のタイヤの近くに屈みこみ、ライトで照らしながら、作業をしているようだ。 緑色の光が点滅すると、ロックが解除されたのか、運転席へ。車を盗んで走り去るまで、わずか2分あまりだった。

このとき使われたとみられるのが、車のカギ代わりになる装置「CANインベーダー」。モバイルバッテリーのような見た目で、車のシステムを乗っ取り、ロックを解除したり、エンジンをかけたりできる装置だ。 犯行にかかる時間はわずか数分。いま、全国で猛威を振るう自動車盗の手口となっている。

車のセキュリティを専門とする天白区の「セキュリティラウンジ名古屋」では、分析や対策のためにCANインベーダーを入手し、保管しているが…。 加藤学社長: 「“持ってるだけで検挙”する法律は現状ない。いわゆる『闇サイト』と呼ばれるところで高額で販売されている」 かつて自動車盗を繰り返して逮捕され不起訴になった男性も、このように話している。 元自動車盗のメンバー: 「(Q.どうやって車を盗んだ?)CANインベーダーですね。(車に)針を刺すだけなので、誰でもできます。めっちゃ簡単です」 「(Q.CANインベーダーはどう買う?)ネットで買えるんじゃないですか、僕は1回買ったことあります。100万円しないぐらいじゃないですか」

■「車の盗難にも使えます」CANインベーダーの販売サイトに接触

 取材班が見つけた海外のサイト。英語の通販サイトのような見た目のページに、CANインベーダーが掲載されていた。 トヨタやレクサスといった対応車種も説明され、値段は5000ユーロ、日本円でおよそ90万円だ。サイトは日本語にも対応していて、「違法行為に使用することは禁止されています」という注意書きもあった。

サイトに掲載された、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」の連絡先にメッセージを送ってみる。 <記者とのやり取り> 記者:「販売されているキープログラマーやエミュレーターは、どこの国で製造されたものですか?どこの国から発送されるますか?」 「Europe」 記者:「日本でこの機械を使うことは出来ますか?」 「Of course」 記者:「注文したものはどれくらいで日本に届きますか?」 「DHL 3-5days」(国際宅配便で3-5日) 記者:「日本でこの機械(キーエミュレーターやCANインベーダー)を持っているだけで警察に逮捕されることはないですか?」 「Of course not, Don't worry about it. You can use this device to diagnose car security systems and you can also use it to steal cars. It's like a knife.」(心配しないでください。このデバイスは車のセキュリティシステムを診断するのにも使えますし、車の盗難にも使えます。ナイフのようなものです)

サイトの注意書きとは裏腹に、車の盗難にも使えるとアピール。一体何者が運営しているのだろうか。身分を明かして取材を申し込んだが、返事は「NO」だった。 CANインベーダーを使った自動車盗は2020年ごろから急増しているが、いまの法律では装置自体は違法なものではないとされ、持っているだけでは、取り締まりの対象にならない。

2025年8月、経営する自動車販売店でランドクルーザーを狙う被害に遭った宇野さんは、CANインベーダーがいわば“野放し”の状態を変えてほしいと訴える。 G-STYLE 宇野啓介さん: 「結局メーカーが対策しても、それを超えるような道具が開発されて、“いたちごっこ”みたいになっている。それなりに法整備がされて厳しくなれば、CANインベーダーを日本に持ってくることもやりにくくなるでしょうし。(被害が)減るようにしていってもらえたら」

■法整備で規制できないのか…専門家「理論上は可能」

 猛威を振るうCANインベーダーを規制する必要はないのか。元千葉県警の刑事・森雅人さん(46)は、千葉にも多いヤードの対策や自動車盗の捜査を担当していた。 森雅人さん: 「これだけCANインベーダーが多用されてしまって、特定の車種が盗まれている現状がもう何年も続いているので、CANインベーダーの所持自体を取り締まる法律や条例の制定も検討するフェーズには入っているのではないかと思いますね」

捜査の現場を知る森さんは、“CANインベーダーの規制で自動車盗を減らす効果が期待できる”と強調する。 森雅人さん: 「CANインベーダーの所持自体が、正当な理由なく持っている行為が犯罪になると規制されれば、職務質問などで確認する活動は絶対やると思うので、CANインベーダーを持ちづらくする=犯行をやりづらくすることなので、犯罪件数自体も減らす効果はとてもあるのではないかなと思います」 法律の専門家にも、話を聞いた。 大野正博教授: 「正当な理由で所持する方と、違法な理由で所持する方の判別が非常に難しい。CANインベーダーと限定した場合、それ以外の物が今後出てきた時に、“どこまでを射程とするのか”という問題が出てくる」 岐阜県の朝日大学法学部の大野正博教授は、法律上、違法となる範囲をどのように定めるのか難しい部分があるとしつつ、CANインベーダーの特性から、新たな規制が必要ではないかと話した。

大野正博教授: 「CANインベーダーなどの場合だと、短時間でばれにくく犯罪を実行できる。いったん盗られてしまうと、刑法上の規定で対応は可能ですけど、なかなか損害の回復が難しい。CANインベーダーを所持する段階での処罰を検討する時期を迎えているのではないか」 法律を整備することでCANインベーダーの規制をかけることは可能なのだろうか。 大野正博教授: 「理論上は可能であるかと思います。(建物などの侵入で)特殊な解除器具を持っていると違法である、という法律(ピッキング防止法)があるので、必ずしも不可能ではないと思う」

■愛知では「イモビカッター」所持を規制する条例も

 警察庁によると、2025年の全国の自動車盗の認知件数は6386件で、このうち鍵をつけたままの車が盗まれたケースなどを除く「キーなし」の割合は、過去最高の77.8%に達した。この中にはCANインベーダーの手口によるものも相当数含まれているとみられる。 “自動車盗の道具”を規制した例は実際にある。愛知県では2013年『県安全なまちづくり条例』を改正し、自動車盗によく使われた道具「イモビカッター」の所持を規制した(業務その他正当な理由除く)。実際、この条例による逮捕者も出ていて、一定の役割を果たしたとも言える。

条例や法律に基づく規制にはハードルもある。 今回取り上げた「CANインベーダー」は犯罪を目的につくられ流通しているものとみられるが、修理業者などが何らかの類似する機器を車に接続することも考えられ、朝日大学の大野教授は「“正当な理由”など、違法とする範囲をどう定めるかが課題だ」と話す。 また、元千葉県警の森さんは、CANインベーダーを規制しても「新たな手口が広がる“いたちごっこ”につながるかもしれない」と懸念している。ただ2人とも、“それでも、規制を考えるタイミングに来ている”と法整備の必要性を指摘している。 2026年4月22日放送 ※東海テレビ「ニュースONE」では、自動車盗についての取材を続けています。car@tw.tokai-tv.co.jp まで情報をお寄せください。

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