中国での軍事パレードに中国・ロシア・北朝鮮の3カ国首脳が勢ぞろい なぜこの時期なのか専門家が解説

9月3日開催される中国の抗日戦争勝80年の記念行事に、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、さらに北朝鮮の金正恩総書記が並ぶ予定です。中国とロシア、北朝鮮の3カ国の首脳が顔をそろえる歴史的な舞台となりそうです。
なぜこのタイミングで、3人の首脳が顔を合わせるのでしょうか。ロシア政治が専門の筑波大学名誉教授の中村逸郎さんに話を聞きました。
3カ国とアメリカが“真正面からぶつかっていく”事態になるのでは

――9月3日に中国、ロシア、北朝鮮の3人の首脳が顔を合わせることになりますが、どんな意味合いがあるのでしょうか。
筑波大学名誉教授 中村逸郎さん:
「軍事パレードでこの3者が並ぶことで、軍事協力という意味合いが非常に濃くなります。この3カ国が、欧米と対決姿勢を鮮明にしていくということで、歴史の大きな転換期になると思っています。
3カ国と欧米が真正面からぶつかっていく事態になるのではないかと予想されます」
――プーチン大統領、習近平国家指席、そして金正恩総書記のそれぞれの思惑をどのように考えたらいいでしょうか。
「北朝鮮については、金正恩委員長が中国とロシアという列強の首脳の横に並ぶということは、まさに本格的な国際舞台のデビューです。中国については、ロシアと新しい天然ガスのパイプラインの敷設で合意したことで、ロシアから原油のみではなく、パイプラインを通じて天然ガスが格安で入ってくるという大きなメリットがあります。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナへの戦争でウクライナ全土を手に入れたい、支配したいというのが最終的な目的です。それを達成するために、北朝鮮や中国からの軍事協力を得ることができるということです」

ロシア・モスクワの都心には、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の等身大パネルが設置され、観光客の撮影スポットになっています。この現状に中村さんは「中国とロシアの蜜月関係をアピールするもの」と見解を示します。
筑波大学名誉教授 中村さん:
「プーチン大統領からすれば、国際的に孤立しているかのように見られていますが、中国のバックアップがあるとアピールしたいのだと思います」
――ロシアとウクライナの戦争では、アメリカのトランプ大統領がロシアにかなり配慮したような和平の実現に向けての交渉も進めていました。中国との関係をより強める方向なのでしょうか。
「プーチン大統領からすれば、ウクライナと停戦するにあたって手柄を誰に与えたいのか、取らせたいのかというのが思惑です。トランプ大統領におくるのか、それとも習近平国家主席に花を持たせるのか。習近平国家主席とは15年近い付き合いがあることから、この仲介役を果たしてもらおう、と」

――もし中国が仲介役を買って出るとするならば、ロシアにある程度有利な条件で停戦を持ち出してくるのでしょうか。
筑波大学名誉教授 中村さん:
「一時停戦したときの戦闘を止めるのを、誰かが監視しなくてはいけません。プーチン大統領側からすれば、中国から平和維持部隊を送ってほしい。しかし、ウクライナからすればそれは譲歩できません。
あくまでも欧米から平和維持部隊を送ってほしいとのことで、停戦を巡ってやり取りが進んでいます。中露の間で中国が平和維持部隊を送るところで、いったん停戦の流れが出てくるかもしれません」
――アメリカのトランプ大統領はかなり具体的に行動に移していましたが、習近平国家主席も、具体的に行動する可能性はある程度高いのでしょうか。
「平和維持部隊を送ることを3月から中国政府が表明していたので、事実上は認めるかたちでプーチン大統領は妥協します。トランプ大統領からすれば、恥をかかされてしまうという事態も考えられます」
――欧米諸国との対立というのも、より鮮明になりそうですね。
「中国、ロシア、北朝鮮が国際舞台で大きな力を持ってくる。この3カ国は何をしでかすか、よく分からないです。恐怖の幕開けとなる歴史的な転換期になり、世界は今後、“弱肉強食”という時代を迎えるかもしれません。国際法や国際機関がどれだけ機能するのか、非常に難しい時代に突入すると思います」