
接客をするのは“アバター” アバター利用により多様な働き手の就労を可能に 名古屋市北区の食べ放題駄菓子カフェ

お菓子を食べたりゲームをしたりしてくつろげる空間が人気のカフェ。
でも、それだけではありません。こちらのカフェには、アッと驚く仕掛けがあるのです。
なんと、接客するのはモニターに映る2次元のアバターなんです。
駄菓子カフェが、人が集う場所に

今年3月、名古屋市北区に「アバター菓フェOKASHI tabetai」がオープンしました。
店内にはスナック菓子のほか、チョコレートなどの甘いお菓子がずらりと並んでいます。

友達どうしで訪れた女子中学生2人は「楽しい。お菓子はふだん高いけど…ここは600円(小・中学生の料金)で好きなだけ食べられるから」「時間が無制限だから好きなだけ居られて、ゲームもたくさんあってうれしいです」と感想を口にします。
こちらのカフェはセルフ式で、およそ90種類の駄菓子が時間制限なく食べ放題です。

店内にはおもちゃや200冊以上の漫画や雑誌などがあり、自由に手に取ることができます。

レトロなゲームを楽しめるゲーム機に夢中になっている女性の姿も見られます。
女性客:
「あ~やばいやばい! 頑張れ頑張れ! 何十年ぶりですかね。懐かしくてうれしいです」

初めてこのカフェを利用した女性は午前11時半に来店し、およそ2時間でたくさんの駄菓子を食べました。
「ひとりでこれだけ食べました。お昼ごはんになっちゃいました(笑)」と、駄菓子の空き袋を示しながら女性は振り返ります。
子どものころに食べた駄菓子の味が懐かしかったそうです。
アバターによる接客が、多様な働き手の就労を可能に

さらに、このカフェには一風変わった特徴があります。
「こんにちは。いらっしゃいませ。アバター菓フェへようこそ」
なんと、画面に映る2次元の“アバター”が接客してくれます。店員はいません。
このアバター、AI(人工知能)が稼働させているのかと思いきや…。「え、人?」と驚く女子中学生2人組。

アバター役を務める男性:
「いらっしゃいませ。アバター菓フェへようこそ」
離れた場所で人間が動いたりしゃべって遠隔操作して、アバターを稼働させているのです。
この時間に接客をしていたのは、名古屋市西区の就労継続支援B型事業所「ハッピーハウス」で働く人たちです。施設によりますと、心身に障害があるといいます。

アバター役の女性:
「最初は緊張したんですけど、意外とやってみるとできるんだと思って、自信がつきました」

「アバター菓フェOKASHI tabetai」代表の中村暢孝さん:
「障害者や高齢者、シングルマザーの方など働きたくても働けなかったり活躍したくてもできなかったりという方に対して、働く場を提供できないかというところからここはスタートしています」
以前は、介護施設を経営していた中村さん。
その経験から、アバターを介して接客すれば、対面で話すのが苦手な人や長時間働けない人でも時間や場所を選ばずに活躍できると考えました。

女子中学生:
「じゃんけんしましょ」
アバター役の男性:
「いいですよ!」

男性が「さいしょはグー。じゃんけんぽん!」と掛け声を出しながらチョキを出しました。女子中学生が出したのはパー。彼女は「負けました!」と悔しそう。
アバター役の男性;
「あ、すみません。勝っちゃいました」
女子中学生:
「強い!勝てない(笑)」

アバター役を務める人たちの生活にも変化が表れました。
じゃんけんをした男性は、自宅でも家族と接客の練習をしているということです。
アバター役の男性:
「ライン電話(ビデオ通話)みたいなもので練習したり。とにかく練習しないとわからないこともあるし。若者言葉が難しいので勉強になります」
記者の「笑顔で楽しそうにやられてますね」の問いかけに、男性は「いや、楽しいですから」と応じます。

さまざまな人が働けて誰でも集うことができるカフェを、代表の中村さんは、今後も増やしていきたいといいます。
「アバター菓フェOKASHI tabetai」代表・中村暢孝さん:
「駄菓子って大人子ども男女問わず共通言語で話せる数少ないツール。いろんな人が集まってくる場所になったらいいと思うし、その輪に障害者や高齢者が働き手として入っていける場所になったらいいと思います」