魚を獲り続けてしまう悪質なゴミ 生分解性プラスチックの活用で「ゴーストフィッシング」から海を守る
海の中を漂い、環境に悪影響を及ぼす海洋プラスチックゴミが問題となっています。
微生物によって海の中にあっても分解されやすいプラスチックを開発した群馬大学の鈴木美和さんに話を聞きます。
ゴミ問題
――画期的なプラスチックがどのようなものか教えてください。
私たちが研究している「生分解性プラスチック」というものです。自然環境にいる微生物によって水や二酸化炭素まで完全に分解されるプラスチックになっています。
今回私たちが開発した技術は、生分解性プラスチックの分解する時期やスピードをコントロールする技術です。
――このような技術はこれまでにはなかったのでしょうか。
もともと生分解性プラスチック自体はありました。ただし、生分解性プラスチックを使っている間に分解されてしまい、使用できなくなることがありました。さらに分解するスピードが遅すぎて、普通のプラスチックゴミのような問題を引き起こしてしまうという問題もあったのです。
分解する時期やスピードをコントロールすることによって、古くなって傷が入ると分解が始まり、完全に水と二酸化炭素にまで分解されるという技術を開発しました。
意図せず海洋生物を捕獲する「ゴーストフィッシング」も防げる
――今後、私たちが使用するプラスチックに変わっていくのでしょうか。
そういうわけではありません。ゴミによる環境問題を解決するには、私たちが使うプラスチックの量を減らすことが必要です。リサイクルできるものは最大限リサイクルすることも大切なことです。ただし漁網や農業用のマルチフィルムのような、自然環境で使ってそのまま環境に流出しやすいものは、生分解性素材が良いかと思います。私たちが開発した「タイミングよく分解する技術」も活用できると考えています。
――実際にうまく置き換えることができると、どれくらいのゴミの削減につながるのでしょうか。
環境省の調査によると、日本から年間排出される海洋プラスチックゴミのうち、漁網やロープは容積ベースで3割を占めるといわれています。
漁網などはもともと魚を獲るように作られているので、海中に流出後も魚を獲り続けてしまい個体数が減少したり、食卓に届く魚の量も減ってしまったりすることがあります。これを「ゴーストフィッシング」といいます。こうした問題も改善できるのではないかと考えています。
できるだけ早く実用化できるように、現在は技術のブラッシュアップを図っています。