
2000年東海豪雨から25年 注目された内水氾濫 半地下の部屋は要注意!【暮らしの防災】

2000年9月11日、名古屋市周辺は記録的な豪雨に見舞われました。この豪雨で、庄内川の越水・新川の破堤=外水氾濫(がいすい はんらん)、下水などから溢れた水=内水氾濫(ないすい はんらん)で、名古屋市内と周辺の街のあちこちが水に浸かりました。この時、都市型水害として注目されたのが、この「内水氾濫」です。
2000年東海豪雨

2000年9月11日未明より、庄内川・新川流域では、記録的な豪雨となり、名古屋地方気象台によると、名古屋では、11日午後7時に時間最大雨量93mmを記録、11日未明から12日までの総雨量は567mmとなり、観測史上最大の降雨となりました。
庄内川の越水・新川の破堤、下水から水があふれる内水氾濫により、名古屋市周辺で19平方キロメートルが浸水しました。この水害によって約29,000人の住民が避難を強いられ、18,000戸を超える住家が被災しました。
外水氾濫 内水氾濫

氾濫には「外水氾濫」と「内水氾濫」があります。
外水氾濫川は、水が堤防から溢れる、あるいはそれによって川の堤防が破堤した場合等に起こる洪水のことをいいます。
内水氾濫は、主に以下の2つがあります。
1:一時的に大量に雨が降り、排水施設(下水道など)で雨水を排水できずに宅地や道路、農地などにあふれることです。河川から離れた場所でも発生することがあります。都市部では、あふれた水が一気に地下街や地下鉄などの地下空間に流れ込んだり、マンホールから吹き上がったりします。
2:水路や支川などが合流する川の水位が上昇したことにより、支川から合流先に水が流入できなくなり、支川などから水があふれることです。
内水氾濫で名古屋市内・周辺自治体で浸水被害

内閣府のまとめによると、愛知県内各河川の破堤は45カ所に達しました。浸水した家屋は県内で約68,000棟を超え、伊勢湾台風に次ぐ浸水害となりました。この豪雨で10人が亡くなりました。
盲点、半地下の部屋は要注意

都市型水害とも言える内水氾濫は、短い時間の集中豪雨によりどこでも起きえる水害です。
夜中に発生すると、1階で寝ている人は「気づくとベッドや布団の周りが水浸し」となる可能性があります。気づかないと水死してしまう恐れもあります。
最近は土地や空間の有効活用で、建物の地下を利用しています。この地下や半地下にある部屋や店舗などには、止水板などの対策がしていない場合、氾濫した水が流れ込みます。
1階の部屋以上に死亡事故につながる可能性が高いと言えます。このようなスペースを利用している方は、豪雨の時、早めの避難が必要です。
国土交通省の対策

庄内川での越水・新川の破堤を受けて、川を管理する国土交通省は、堤防を強化(高くしたり厚くする)したり川底を掘り下げて流量を増やしたりするなどハード面の対策を行っています。
またソフト面では豪雨災害を忘れず、その教訓を活かす啓発イベントの実施・水防災に関する情報サイト(流域治水ポータルサイト)の作成などを行っています。
地域住民との関係を深め、この災害の記憶を後世につなぎ、気候変動による水害の激甚化に備えます。川に関わる人が協力し合って流域全体で水害を防ぐ「流域治水」を進めています。
特に「自分の命は自分で守る」ことを考えるきっかけとなる取り組みを進めていて、その様子は、「東海豪雨25年」の特設HPでみることができます。(検索は「東海豪雨 25年」)
いまのインフラの多くは時間雨量50ミリに対応

「内水氾濫」という言葉は、最近の防災ニュースで頻繁に使われています。しかし2000年東海豪雨の頃、メディアの防災担当者にとっては、新しい言葉でした。
それ以降、内水氾濫の発生が増えたので度々使われるようになり、いまでは普通に使われるようになったのです。
それはなぜか。実は、昔に作られたインフラ(道路など交通システム、排水システムなど)の多くは、時間雨量50mmを想定しています。昭和の頃は、このクラスの雨に耐えられれば概ねOKと考えられていました。
しかし、いまは雨の降り方が変わってきました。豪雨、線状降水帯など、激しい雨が降るケースが出てきました。このためハードで防ぎきれなくなっているのです。
ハードの整備には時間がかかります。このためソフト面で被害を減らすことが求められています。防災マニュアルやハザードマップなどを活用した日ごろの備え、災害発生前の早い避難、地域ぐるみの防災です。
そして、毎回、書きますが避難しても災害が起きなかったときは「予報がはずれてよかったね」の文化づくりです。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。