2月の衆院選で、期日前と当日で2回投票しようとしたとして、愛知県内の男性が書類送検されました。この「二重投票」の摘発が相次いでいます。なぜでしょうか?
私たちの未来を託す大切な選挙。
1人1票のはずですが――。
愛知県の男性が2月の衆院選で「二重投票」をしようとしたとして、公職選挙法違反の疑いで書類送検されました。
愛知県警によりますと、男性は期日前投票をしたにもかかわらず、投開票日当日の2月8日に別の投票所でもう1回、投票しようとした疑いが持たれています。
「SNSで身分確認をされずに投票できることを知った。こんなにいいかげんなら、2回投票してやろうと思った」
警察の調べに対し、男性はこう話して、容疑を認めているということです。
身分証の提示を求められず

実際にSNS上では、「なんで本人確認なしで投票できるのか」「身分証の提示は不要。なりすましも二重投票も、実は簡単」などという投稿も見られます。
警察によりますと、書類送検された男性も、期日前投票をした際、住所・氏名などの個人情報を宣誓書に記入しましたが、身分証明書の提示は求められなかったといいます。
「大切な1票が、こんなにいいかげんに管理されていると思うと怒りを感じた」
投票日当日にもう1度投票しようとしましたが、立会人が気付いたため、2回目の投票はできなかったということです。
多くの自治体では「円滑な投票所運営」を理由に、身分証の提示を求めておらず、法律でも決まりがありません。
名古屋市選挙管理委員会も、口頭で個人情報の確認をしていますが、身分証での確認はしていません。
市議会で対策求める声も

6日の名古屋市議会では、身分証の確認を求めないことについて、議員から対応を求める声が。
「実際に不正行為が発覚している以上、選挙の公平性を確保していくための対策は必要不可欠だと思われます」(名古屋市議会 赤松哲次 議員)
名古屋市選挙管理委員会は「なりすまし投票は犯罪だと周知を行い、本人確認は適切に行っていく」と答えるにとどめ、厳格な確認については言及を避けました。
ある捜査関係者は「このままだと悪意を持った集団による、なりすまし投票を防ぐことができず、選挙結果を左右する重大な事態になりかねない」と危惧しています。
投票を2回するなどの「詐偽投票」の摘発者は、相次いでいます。
警察庁によりますと、2月の衆院選では、全国で8人でした。
2025年の参院選では25人で、2022年の7人から3倍以上に増えました。
「SNSの投稿が不正を助長」

選挙行政を研究する中京大学の桑原英明教授は、SNSの投稿が不正を助長させていると話します。
「ネットでなりすまし投票などの事例を知って、模倣することもあると思う」(中京大学 総合政策学部 桑原英明 教授)
身分確認を厳格に行おうとすると、身分証を持っていない人が投票できなくなったり、投票所での手続きが増えたりして、職員に負荷がかかることや投票率が下がってしまう恐れがあるといいます。
しかし「公正な選挙のためには制度の見直しが必要」と指摘します。
「仮に組織的に情報を集め、なりすまし投票をしている実態があるとすれば、非常に深刻な問題。数の問題だけではなく、原因がどこにあるのかを選挙管理委員会と警察がしっかり連携して明らかにして、従来のような"性善説"に立った本人確認について、しっかりとデータに基づいて再考する。国民的な議論は不可欠だと考えます」(桑原教授)
「詐偽投票」とは

「詐偽投票」には二つあります。
まず「二重投票」で、同じ人が2回投票する行為です。
もう一つは「なりすまし投票」で、ある人が他人になりすまして投票する行為です。
どちらも公職選挙法違反となり、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます。


