参議院議員選挙は国政選挙史上初の連休中日が投票日 投票率への影響や注目のポイントを専門家が指摘

参議院議員選挙の投票日は7月20日と、国政選挙史上初めての3連休の中日です。7月7日夜には、名古屋市中区のアスナル金山で、参議院議員選挙の啓発イベントが行われました。選挙の際に行われる恒例のイベントですが、今回は実施時期を早めました。愛知県選挙管理委員会事務局の伊藤寛高さんは「期日前投票をより多くの人にしていただけるように実施している」といいます。投票率はどうなるのでしょうか。
県選管がターミナル駅で選挙啓発イベント

参議院議員選挙の啓発イベントでは、県職員らがポケットティッシュやうちわを配り、有権者に投票を呼びかけました。
今回の参院選の投票日は7月20日。祝日の「海の日」を含む3連休の中日です。いまの憲法のもとで国政選挙の投票日が連休の中日に設定されるのは補欠選挙を除いて初めてです。
「国会閉会日から参院選の投票日は7月20日の一択だった」

この日程になったことについて、政党政治に詳しい愛知学院大学の森正教授に話を聞きました。
愛知学院大学 森 正教授:
「参議院選挙の日程は、公職選挙法に基づいて決められています。公職選挙法の規定に沿うと、日曜日を投票日とした場合には、7月20日しか事実上選択肢がありませんでした」
投票率アップのカギは「1人区」の情勢

参院選の投票日は公職選挙法で「国会の閉会から24日以後、30日以内」と決められています。今回は6月22日に国会が閉会したため、7月16日から22日までが該当する期間です。そのうち、これまで投票日の通例となっている日曜日は、20日しかありません。期日前投票所では、3連休の予定を見据えて期日前投票を利用する人の姿もありました。
有権者:
「実家に帰省する予定があったので」
「3連休で福岡の実家に帰省するので、今回初めて期日前投票を利用した」
森教授:
「3連休の中日というのは有権者にとって、より投票がしやすくなる環境ではない。厳しい言い方になるかもしれないが、投票率を押し上げるプラスの効果は連休中日は残念ながらないと思います」

一方で今回は、投票率が上がる別の要素があると指摘します。
森教授:
「特に参議院選挙の全体の結果を左右するといわれているのが、(選挙区で)当選者が1人のいわゆる『1人区』です」
改選数が複数の選挙区は与党と野党が議席を分け合うことが多いのに対し、1人区はどちらかが必ず落選します。このため与党と野党双方の全体の獲得議席数に大きく影響するといわれています。今回の選挙は改選議席の124と東京選挙区の欠員の補充1の合わせて125のうち、1人区は全体の約4分の1を占める32です。
森教授:
「32のうち各種情勢報道によると、半分近い選挙区が競っているという報道がされています。これは近年の参議院選挙では、なかなか見ない形での大接戦になっているので、こうした接戦の選挙区が多いと、有権者は自分の1票が選挙結果を大きく左右すると考えて、投票率の向上も期待できるのではないでしょうか」

接戦で投票率が上がった例として森教授が挙げたのは、1998年の参院選です。参議院での単独過半数を目指す自民党に、新進党の分裂で選挙直前にできた民主党が挑みました。
選挙期間中、当時の総理である橋本龍太郎さんは当初、恒久減税を決めたわけではないと話していましたが、選挙戦が進むにつれて「恒久的な税制見直しの結果、国民に支持される減税を来年から実施したい」と発言が迷走。自民党への不信感が広がり、予想を覆す接戦になりました。

その結果、民主党は改選前の18議席から27議席に躍進した一方、自民党は61議席から44議席に大きく減らし、単独過半数を確保できませんでした。投票率は前回から14ポイント以上増えて58.84%でした。
愛知学院大学 森教授:
「3年前の1995年の参議院議員選挙の投票率が非常に低かったので、1998年も低いのではないかといわれていました。ですが、民主党が誕生して非常に選挙区が接戦の状況が生まれた。有権者の関心が上がって予想以上に投票率が上がりました」
投票率が上がると組織票の効果が薄まると専門家は指摘

森教授は投票率が上がると「組織票の効果が薄まる」と指摘します。
森教授:
「6月行われた東京都議選では投票率が約5ポイント上がりました。当然、その分だけ当選ラインが上がってくる形になる。そうすると、例えばある組織に依存している政党からすると、組織票だけではなかなか当選ラインに達しないという現象が出てきます。
つまり、投票率が上がったことによって、いわゆる組織に依存するタイプの政党にとっては少し不利に働きます。逆に、支持なし層や浮動票に依存しているタイプの政党からすれば、投票率が上がることはプラスにつながるといえます」
参議院議員選挙は、7月20日投票、即日開票されます。