
“コメ”を脅かす最強級外来種「オオバナミズキンバイ」除草剤が効かない⁉ 小さな破片からも再生する脅威の繁殖力

見た目はキレイでも恐るべき繁殖を見せる外来植物が、今じわじわと全国に広がっています。三重県ではついに田んぼに入り込んだと聞いて、現場を取材しました。
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一面に広がる鮮やかな黄色い花。一見花畑ですが…所々に見えるのは稲穂。ここは、もともと田んぼです。
三重県桑名市で起きている深刻な環境問題。田んぼをこの黄色い花が覆い尽くそうとしています。道を境に、右側はごく普通の田んぼ、左側は田んぼのほぼ半分近くまで、黄色い花が広がっていたのです。
農家によると、初めて見つかったのは3年ほど前ですが、最初は誰も気に留めていませんでした。しかし、気付いたときには農業にも支障が出るように。
(被害にあったコメ農家)
「『どうするんやこれ』みたいな感じで、皆さん知っているのは知ってるので『何やあれ、見たことない草が入ってきとんぞ』みたいな」
(被害にあった別のコメ農家)
「これはすごいことですね、やっぱり駆除しないと駄目。水路で水が出入りするんだけど、水が全然出入りできない」
この植物の正体は、南アメリカ原産の外来種『オオバナミズキンバイ』。最大の特徴は恐るべき“生命力”。
あっという間に繁殖して元の環境や生態系を脅かす上、ほんの少しの破片からでも再生するため、駆除も極めて難しく2014年に国から特定外来生物に指定されました。
除草剤で枯らしたはずの茎から“新しい葉っぱ”が
ここに繁殖するオオバナミズキンバイへの警戒をいち早く呼びかけてきたのが、「なごや生物多様性保全活動協議会」の小菅崇之さん。
(なごや生物多様性保全活動協議会 小菅崇之副会長)
「水草が好きで水草を見て、いろいろな田んぼを巡っているが、ここ(三重・桑名市)に来たときに、まず日本のミズキンバイっていう貴重な水草があるのですが、そちらを見つけたと最初は喜んだが、よくよく見てみたら本当に危険なオオバナミズキンバイだった」
「去年はここ、全くこの水路は生えていなかった。なのに、ことし来たらここまで広がってるっていうのは本当に驚きで、どうしようって感じです」
(被害にあったコメ農家)
「繁殖率がすごくて、除草剤ふったり草刈りしても、ちょっとした断面からばーって広がっていって、穂の高さまで来るんですよ」
除草剤で枯らしたはずの茎からは、新しい葉っぱが生えていました。さらに、この植物の適応能力も駆除を難しくしています。
水上でも陸上でも…「形」を変えて繁殖
(小菅さん)
「水の近くにあるときは(葉が)丸いが、陸地にあるものは若干細くなったりする。水陸両用という感じで、水に浮くときに葉っぱが丸い方が安定感が出るのでしょうね」
水上でも陸上でも形を変えて繁殖し続ける。それが、この侵略植物の脅威を一層高めています。
(被害にあったコメ農家)
「重機とか使ったりしてやらないことには、とても人の手だけじゃ追いつかないですよね。取るのもすごい重たいので、こんなちょこっとでも根っこからしっかりしているので、持ってくるとなったら重たいです」
重機を使うことにも問題が。オオバナミズキンバイは、根や茎の切れ端からでも完全に再生できるため、重機で大がかりに撤去したり、田んぼや畑に生えているのを知らずにトラクターなどの農業機械を使ったりすると、他の場所に広がる恐れがあると言います。
(小菅さん)
「トラクターのタイヤの隙間にちょっとだけ破片が付いただけでも、そのトラクターが移動することで、次の田んぼへと広がっていってしまう」
(被害にあったコメ農家)
「トラクター使ったときにこの田んぼで洗って、次の田んぼに入っていくことは無理です。本当はやりたいんだけど、作業上無理です」
今まで以上に深刻な状況…
一旦広がれば完全駆除は極めて難しく、普段の農作業も出来なくなるという、農家にとってまさに悪夢のような状態。コメの収穫にも影響が心配されています。
(被害にあったコメ農家)
「減収になります、お米が悪いし。(お金の面で)マイナスですね、プラスには絶対ならない」
外来種の特別展を開いている、豊橋市の自然史博物館。ここでもオオバナミズキンバイは“最強”扱い。その研究では第一人者の学芸員・稗田真也さんは、桑名市で田んぼに広がった事例は今まで以上に深刻だと話します。
(豊橋市自然史博物館 稗田真也学芸員)
「これまで水路とか池とか湖という水辺に侵入してるということは、よく見られていた。水田の中、田んぼの中に侵入して生い茂っているという事例は、実は多くはない。その点において侵入のステージが進行しているのではないか」
今回の特別展向けに、稗田さんが作った侵略的外来種のトレーディングカード。オオバナミズキンバイは「愛知県では確認されていない」とありますが…
「すごく驚きました…」
(前川智彦記者)
「愛知県豊田市の住宅街の近くを流れる西中山川では、オオバナミズキンバイが大量に繁殖しています」
豊田市の御船町を流れる西中山川と御船川で見つかったのです。稗田さんが、オオバナミズキンバイだと特定しました。
(稗田さん)
「すごく驚きましたが、入ってくる可能性はあるかなと以前から思っていました。ある程度、入ってくることを前提にして、早く見つけて早く対処するという心構えが大事」
稗田さんの助言を受け、豊田市はすぐに駆除作業を実施。手作業で抜いた後、水面に浮かぶ小さな葉や茎の切れ端に至るまで、残らず網ですくい上げました。
(豊田市環境政策課 弘中陽介さん)
「初期の段階なので、現状であればまだ駆除も可能と専門家の意見もありましたので、今回緊急で駆除作業を実施しました」
しかし、相手は恐るべき生命力のオオバナミズキンバイ。実際少し離れたところへ行ってみると…
(記者)
「先ほどの駆除作業の現場から車で2分ほど下流に来た場所です。こちらでもオオバナミズキンバイの繁殖が確認できます」
水害リスク・生態系への影響も…
(稗田さん)
「豊田市で今侵入してる場所の下流に矢作川があるので、その流域などでも例えば水田に侵入して田んぼを覆い尽くしてしまったり、水路や排水施設を詰まらせて水害リスクになる可能性が懸念されます。生態系への被害も想定されます」
三重県桑名市では水田に広がり、コメ作りの妨げにもなっているオオバナミズキンバイ。このような水田での被害が、他の地域でも起きたらどうなってしまうのか。自治体や農協も駆除に向け動き出しています。
(稗田さん)
「実は外来水草の駆除はシンプルなことで、植物を除去することに尽きます。侵入初期の段階の方が(駆除が)容易であると、皆さんもそういう心づもりになっていけばいいのかなと思います」
猛スピードで繁殖し、日本固有の生態系を脅かす黄色い花の侵略植物。
ちょっと注意して見回してみると、あなたの周りにも見つかるかもしれません。
CBCテレビ「ニュースクロス」2025年8月7日放送より