
消防団員が足りない…「日中のみ」の活動を受け入れる消防団も “高齢化”課題で学生消防団に期待

火災の時のみならず、防災の啓発活動なども行う地域の「消防団」。その担い手が不足しています。この地方も切実な状況です。

1日、名古屋市中区で開かれた、あるセレモニー。
名古屋グランパスの公式マスコット、「グランパスくん」らの姿もありますが、主役はこちらの「バス」。
車体には、大きく「消防団員募集」の文字が書かれています。
「できるだけ多くの市民の方・若い方の目に留まっていただけるように、名古屋市営バスをフルラッピングした」(名古屋市消防局 消防団担当 長谷川有喜消防指令補)
深刻な「団員不足」

必死のPRの背景にあるのは、深刻な「団員不足」です。
地域の防災を担う、「消防団」。
消防署に勤務する職員とは違い、火災や大規模災害発生時に、自宅や職場から現場へ駆けつけて活動を行う、”非常勤”のメンバーで構成された組織です。
一般的に18歳以上であれば、性別や職業を問わず、住んでいる地域の消防団に入ることができますが、団員の数は全国的に少なくなっています。
名古屋市の消防団員は、現在4995人。
十分な活動ができるとされる人数は6845人ですが、1850人、足りていません。
定員に満たない状況が長く続く「消防団」も

名古屋市中区。「松原学区」を活動エリアとする、松原消防団を訪ねました。
定員の25人に対して、現在の団員は21人。
定員に満たない状況が、長く続いているといいます。さらに――
「昔に比べると、団員の高齢化と減少、これが一番大きく懸念されるところ」(松原消防団 宇佐見保也団長)
消防団の定年は75歳で、現在72歳の宇佐見団長もあと2年ほどで退団に。
60歳前後の団員が中心となり活動している、松原消防団。
この先も、定年による退団者が相次ぐ見込みです。
「特に今一番懸念されるのが大規模災害。少ない人数の消防団員だと、行える活動範囲が限られるので、いざとなったときにどのような活動ができるのか」(宇佐見団長)
「日中のみ」活動ができる場合も受け入れる

その地域に住んでいる人が参加するという地域密着型のイメージがある消防団ですが、団員確保のために、「日中のみ」活動ができる場合も受け入れています。
「(松原学区に)昼間は勤めていて、夜は自宅に帰るので。中区ではなくて、緑区や北区など遠くに住む団員も実際にいる。その代わり、ここに住んでいる団員は夜遅くても対応してほしいという役割分担」(宇佐見団長)
Q.「限られた時間の中でも自分のできる範囲で求められるなら力になりたい」でも良い
「そういうことです」(宇佐見団長)
盛んな活動を行う「学生消防団」

南海トラフ地震への”備え”も求められるこの地方。
消防団員の確保が課題となる中、盛んな活動が行われているというのが…こちらの若者たち。「学生消防団」です。
大学ごとに構成される、「学生消防団」。
地域ごとにある消防団とは違い、消火活動には参加せず、防災指導や広報・啓発が主な活動です。
名古屋市では市内8つの大学の分団で構成されていて、現在112人が所属しています。
消防団員増加のカギとなるか

分団の中には、団員の数が定員に達しているところも。
その理由の1つは、就職活動です。
1年以上継続して活動した学生には、市町村長から「活動認証証明書」が交付されます。
消防団としての活動が公的に証明されることから、就職活動にアピールできるんだとか。
地域のためにも、将来のためにも役に立つ学生消防団。
消防団員増加のカギとなるのでしょうか?