ショッピングモールで「車中泊の訓練」実施 プライバシーは守れるけれど…エコノミークラス症候群のリスク潜む 過去には死亡例も
災害時に強いられる避難生活。もしもに備え、愛知県岡崎市でこれまでにない“車中泊の訓練”が行われました。プライバシーが守られる一方で、災害関連死につながる危険も潜んでいる車中泊。訓練に参加した人たちが感じた課題とは…?
ショッピングモールの駐車場で“車中泊の訓練”実施
11月3日午前7時前。愛知県岡崎市にあるイオンモール岡崎の駐車場には、開店前にもかかわらず、たくさんの車が止まっていました。朝早くから開店を待つお客さんかと思いきや、みなさん“車の中で”一晩過ごしたというのです。
実は、ここで行われていたのは“車中泊の訓練”。さかのぼること14時間前…。21家族66人が集まり、災害に備えて訓練に参加したのです。
災害時には多くの人が集まる避難所を避け、感染症やプライバシーを守るため車中泊をする人も増えています。そのため、実際に車中泊を体験し、基本的な知識とスキルを身につけてもらおうと、岡崎市が初めて開催したのです。
岡崎市防災課長 小林也寸志さん:
「車中泊って生活の基本である衣食住全てが変わる。季節によって音や光といった環境で準備が変わるので、日頃の経験が必要」
万全の準備をして訓練に臨む家族が多い中、ほとんど準備をしないまま参加している親子がいました。これには理由があるようで…。
「今年の1月1日(能登)地震のとき、地元が新潟で、車で数時間スーパーの駐車場で待機することに」と話すお父さん。不安な思いをしたことで、同じことが起きても対処できるようにと、あえて少しの食料と毛布しか持たず、訓練に参加したといいます。
こちらは「このわかめご飯はお湯で15分、水で60分かかります!」と、防災に役立つグッズを流暢に紹介してくれた、小学4年生の青木悠樹(あおきはるき)くん。
2023年6月2日に岡崎市で大雨が降った際、悠樹くんは豪雨被害に遭いました。それ以来、災害用の備蓄をはじめたり、防災イベントに参加して知識をつけたそうです。
悠樹くんは車中泊でもよく眠れたといいますが、お母さんはシートの段差が気になった様子。
ほかの参加者たちも「結構まぶしかったので、もう少し暗くできるような布なりカーテンがあると」「もうちょっとマット的なやつがあったら。常備しておけるの」など、車中泊訓練を通して、さまざまな課題を見つけていました。
車中泊で気をつけたい「エコノミークラス症候群」 要注意な人&予防法は?
災害時に車中泊を選択する人が増えていますが、車中泊にはエコノミークラス症候群などのリスクも潜んでいます。
エコノミークラス症候群とは、同じ姿勢が長時間続くと発症するもの。足の血行が悪くなることでて血のかたまり「血栓」ができ、それが肺などの血管につまると、胸の痛みや呼吸困難を引き起こす恐れも。2016年4月に発生した熊本地震では、車の中で避難生活を続けていた女性が亡くなりました。
新潟大学 特任教授 榛沢和彦医師:
「じっとしていて血液の流れが悪いこと、食料が来ないことがあるので、どうしても脱水になりやすい。血栓ができやすい状況が災害後の車中泊でそろってしまう」
榛沢医師によると、エコノミークラス症候群になりやすい人には、「40代以上の人(特に女性)」「出産や手術の経験がある人」等があげられるということです。
予防するために重要なのは「ふくらはぎの筋肉を動かす」こと。つま先とかかとを交互に上げ下げする“つま先&かかと上げ運動”や“ふくらはぎのマッサージ”ならば車中泊など狭い空間で避難しているときでも行えます。手がふさがっている場合は、足の甲でふくらはぎをたたくのもいいそうです。
こうした運動を日中は2~3時間おき、夜間でも4~5時間おきに行うことを榛沢医師は推奨しています。そのほか、水分を十分に取ることや、ゆったりした服を着ることも、エコノミークラス症候群の予防につながります。
避難しなければならない状況は突然やってくるので、日頃からしっかりと準備をしておきましょう。