“見かけない備蓄米”はどこへ?流通が進まないワケを調査 トランプ関税で日本のコメの未来が変わる?

備蓄米はこれまで3回の入札で約31万トンが順次放出されていますが、コメのスーパーでの価格は去年に比べて2倍と依然として高止まりしています。
名古屋の街で『備蓄米』について伺うと…「見たことがない」、「備蓄米が出てもコメの価格が下がっていない」という声が聞かれましたが…
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(大石邦彦アンカーマン)
「スーパーなどではなかなか見かけないという備蓄米。こちらのお店にはあるそうです」
やってきたのは、名古屋市緑区の『コープ大高インター店』。並ぶのは5キロ4000円を超えるお米ばかりですが…
(大石)「備蓄米はどれかというと、お米屋さんが言っていたのは備蓄米という表記はないので、値段を見てほしいと。3500円を切っていると備蓄米の可能性があるとのことですが…これは福島県産のお米が3000円台。これが備蓄米かなあ…」
「備蓄米」の表記はなく…入荷してもすぐに売り切れ
備蓄米の表示に明確なルールはありませんが、備蓄米の9割以上を落札したJA全農は、消費者の混乱を避けるため卸売業者などに「備蓄米」と表示せずに販売するよう求めています。
(50代)「(Q:備蓄米かどうかの見分け方は知っている?)見分け方、分からない」
(70代)「(Q:この辺りは備蓄米が入ってる?)(備蓄米は)この辺りでは聞かない」
表記の分かりづらさに加え、まだ潤沢に店頭に行き渡っていない政府放出の『備蓄米』。この店では定期的に入荷できているといいます。
(コープあいち コープ大高インター店 寺島健人 店長)
「既存の取引先で準備ができたところから、コンスタントに週に1回程度入荷している。(Q:入荷して売れ行きは?)当日か翌日の午前中には売り切れる」
店頭に並べば、すぐに売り切れてしまう『備蓄米』。しかし、国内全体への流通になぜ時間がかかっているのでしょうか。
備蓄米をスーパーに届ける、岐阜市の卸売業者を訪ねました。
JA全農などの落札業者から届くまで…約1か月
(大石)「備蓄米が小売りになかなか流通しない問題が発生していますが、備蓄米はありますか?」
(ギフライス 恩田喜弘 社長)「あります。けさ入荷したものもある」
『ギフライス』では今週に入り、ようやく2回目に放出された備蓄米が届いたといいます。
(大石)「ここだけで7トン、今入ってきましたね。8トン目が入ってきました」
(大石)「今後このコメを、作業的にどうするんですか?」
(恩田社長)「今週から入庫しているので、随時精米かけて今週末から。『令和6年産秋田県産めんこいな』として単一原料米で出荷する」
2回目の備蓄米は4月中旬からJA全農などの落札業者に引き渡されたということですが、その後、卸売業者の『ギフライス』に届くまでに約1か月かかっています。
(大石)「これまでなぜ備蓄米は小売りに届かなかった?」
(恩田社長)「JA全農での仕分け作業で卸売業者に落札結果が降りてくるのも1週間から10日かかる。それからコメ(の輸送)を申し込む。(申し込みから)最短でも1週間~2週間後しかコメが来ないので、入札が終わってから約1か月は入庫してこない」
恩田社長によりますと、大量の備蓄米が全国の卸売業者に分配されるため、米の量や、運ぶ日程の調整などに約1か月はかかってしまうということです。
できるだけ集中してやっているが…すぐには届けられない
ギフライスの場合、初回の備蓄米はJA全農の聞き取りに対して600トンを要望しましたが、割り当ては36トンしかありませんでした。しかし、2回目に放出された備蓄米は230トンの入荷が出来るということです。
(大石)「このコメが消費者に届くのはいつごろですか?」
(恩田社長)「今週入ってきたものを金曜日から出荷する予定」
届いた備蓄米は、精米や袋詰めなどの作業を経て、スーパーなどの小売店に運ばれます。ギフライスでは、できるだけ早く流通させようと、5日程度で出荷する予定ですが、卸売業者にはすぐには届けられない事情もあるようです。
(大石)「備蓄米が入って、すぐ精米して出すってことはできないんですか?」
(恩田社長)「見てもらうと分かる通り、いろいろなコメを精米している。100種類は最低でもある」
(大石)「100種類のコメを取り扱っていて、それを精米している合間に、備蓄米を入れていかなきゃいけないんですね。備蓄米だけとはいかないですか?」
(恩田社長)「できるだけ集中してやっているが、ずっと(備蓄米だけ)というわけにはいかない」
すでにある在庫の精米作業と並行して備蓄米の作業をするため、受け入れのスケジュールや、入荷してからの作業の調整も必要だということです。
トランプ関税の影響も…懸念される日本のコメ
ギフライスの倉庫には、もう一つ、気になる米がありました…
(恩田社長)「アメリカ産カルローズ。日本のコメよりはちょっと細長い中粒種という形。炊飯して(日本のコメと)ブレンドされたら全然分からないと思う」
ギフライスでは現状は業務用としてしか扱っていませんが、仮に小売業者に販売した場合、備蓄米の販売価格より安くなると言います。恩田社長は懸念を口に…
(恩田社長)「(アメリカに)関税を下げられて、例えば1キロあたり300円とかで入ってくると、逆に日本のコメが余る環境になると個人的に思う」
(大石)「トランプ関税の交渉の行方が、日本のコメの未来を変えるかもしれないですね」
収束が見えない「令和の米騒動」。備蓄米が解決の一手となるのか。はたまたアメリカからの黒船が食卓に並ぶのか。国の対応が問われています。