自動車盗の被害が後を絶たない。盗まれた車の不正輸出を防ぐ“最後の砦”として、名古屋税関が水際対策にあたっているが、物流を維持するために全てを検査することはできないジレンマに直面している。
■盗まれた車はどこに行くのか…名古屋港の水際対策
横浜港で税関職員が撮影した映像がある。 コンテナを開けて現れたのは、軽自動車のフロント部分。奥を見られなくするかのように、ボディーを切断した状態でぎっしりと積み上げられている。
職員がさらに調べると、奥にはトヨタのアルファードが隠されていた。 ドアには傷もあり、このアルファードは被害届が出された「盗難車」だとわかった。日本各地で盗まれた車の多くは、このように違法に海外に輸出されているとみられている。
水際対策はどうなっているのかを調べるため、名古屋港の金城ふ頭にある、中古車を輸出するための保管基地『モータープール』に向かった。そこには、輸出を待つ多くの車が整列して停められていた。 モータープールの管理者: 「日本車は整備がされていて品質が良いということなので、海外からの人気は高いみたいで輸出は減らないですね」
中古車オークションで落札されたり、レンタカーの役目を終えたりした車が多いというが、アルファードやランドクルーザーなどの車種は、中古車となっても海外ではとくに人気だ。 このような輸出される中古車のなかに盗難車が紛れていないかチェックするのが、「税関」の役割。名古屋税関の「通関第4部門」が、盗難車の不正な輸出などを阻止する担当だ。 業者から提出された書類を見て、申告する価格が高すぎたり安すぎたりしないかなどを確認するほか、車の実物をみて申告通りのものか検査することもある。
さらに、盗難車と見抜くカギだというのが『車台番号』。アルファベットと数字を組み合わせた車1台1台に割り振られた番号のことだ。 税関職員: 「ホイールハウスのところに車台番号が記載されているんですけども、車体ひとつひとつに固有に与えられている番号で、この番号と申告の番号を確認しています」 警察に盗難被害の届け出があったものではないか、番号に改ざんの跡がないかなどもチェックする。
■コンテナが丸見えに?名古屋税関の“秘密兵器”
横浜港で発見されたような“コンテナの中に入った盗難車”の場合は、どのように調べるのだろうか。愛知県飛島村にある名古屋税関の施設「コンテナ検査センター」を案内してもらった。 ここでは、X線を照射するための巨大な部屋にコンテナを乗せたトラックが運び込まれ、扉を開けることなく中の荷物を調べることができる。 コンテナを上と横から撮影した画像が隣の部屋に送られ、業者からの申告書類と食い違いがないかなどを確認する。
この日に運びこまれた1つのコンテナ。中身は中古の日産「スカイラインGT-R」のはずだという。 画面をそのまま掲載することは許されなかったが、GT-Rの特徴的なリアウイングなどがはっきりと映し出されているのが確認できた。ところが…。 名古屋税関 舛田和樹さん: 「あくまでもこれは車両。こういうセダン型の車両とホイールが入っているというのがわかるだけであって、盗難車両かどうかというのは、この画像からでは一切わかりません。盗難車両かという目線で検査する場合には、(コンテナを)開けて中の車そのものを確認して…」
スカイラインGT-Rは盗難の被害に遭うことも少なくない。そのため、コンテナを開けて直接確認することになった。 車台番号や盗難時にできた傷跡や痕跡などがないかをチェックした結果、盗難車でないことを確認した。最後は“人の目”が決め手となる盗難車輸出の水際対策。
しかし、“どういうケースで大型X線検査になるか”については「内緒」だという。 名古屋税関 舛田和樹さん: 「税関がどういうところを気にしているのか、一般に出てしまうとそれを逆手にとっていろんな書類の改ざん、あるいは不正な書類の申告につながる恐れがありますので」 税関が手の内を明かせないのは、すべての車やコンテナをX線や目視で検査できるわけではないからだ。最新の統計では、名古屋港で扱われる貨物の量は1億5671万トン、中古車の輸出は33万6862台と、いずれも全国1位。 盗まれた車が海外に流れるのを防ぐ最後の砦・税関だが、水際対策には限界がある。
名古屋税関 舛田和樹さん: 「すべての貨物を検査するということになると、物流を止めてしまうことにもつながりますので、それはできない。どうしても税関の検査にあたらずに、そのまま輸出されてしまう事例が生じてしまうということはあると思います」 2026年5月27日放送


