石破内閣は「変わり身? 解散」と専門家 衆院選のポイントは裏金問題抱える自民党が都市部でどう訴えるか

10月9日の臨時閣議で衆議院を解散することが決まりました。石破内閣の早期解散と総選挙のポイントについて、政党政治に詳しい名古屋外国語大学の高瀬淳一教授に話を聞きました。
「〇〇解散」あなたは何と名付ける?

――過去には「バカヤロー解散」や「消費税解散」「アベノミクス解散」とさまざまな解散劇がありましたね。今回の解散を名付けるとしたら、高瀬さんはどのように考えますか。
「『変わり身?解散』と呼びたいと思っています。理由は2つあって、1つは解散総選挙の時期、裏金議員の後任について変わり身が早いという印象があります。もう1つはほかの政党も党首の顔が変わっていることです。顔は変わったけれど、中身は変わっているのか? と。与党野党の中身をしっかり見てほしい、という気持ちを込めて付けました」
落選する自民党の議員さんが増える可能性

裏金問題に関わった議員を公認するかどうかの問題が挙げられると思います。当初は裏金に関わった議員を公認する方針でしたが、石破総理の対応が変わってきています。
6日の時点で石破総理は、旧安倍派幹部の下村博文さん、西村康稔さん、高木毅さんなど6人を非公認すると発表しました。そのほかの裏金問題に関わったとされる40人ほどの議員については、公認するが比例代表への重複の立候補は認めないとしていました。しかし8日、非公認の議員を追加するか検討を本格化したのことです。
――日々、言っていることが変わってきているという印象があります。今回の判断について選挙にどのような影響を与えそうですか。
「『相当程度の非公認が生じる』と最初言っていたので、少ない印象はあります。それでも『原則公認比例重複なし』とのことで、落選する自民党の議員さんが増えるとみています」
議席の確保とけじめの折衷案が現在の方針

――しかし自民党としては、ある程度議席数を確保したい。当初の方針通り公認したほうが、議席は確保する可能性は上がると思いますが、いかがでしょうか。
「上がります。ですが、同時に『自民党はお金の問題に甘い』と、野党からの厳しい批判や有権者からの厳しい声が大きくなるため、何かけじめをつけなければという判断だと思います」
――議席の確保とけじめの折衷案が現在の方針ということですね。
「問題を起こしている議員の大半が旧安倍派なので、自民党の総裁選挙では高市さんに投票した方が多かったのではないかと思います。そのような方をすべて非公認として無所属にしてしまうと、新しい党を作ってもいいのではないか、との動きが出るかもしれません。そのため、石破さんとしては自民党として議席を確保することを考えると、一定数だけ非公認にし、あとは少し厳しい対応ということで妥協したのだと思います」
有権者が注目すべき判断材料は
――当初、石破総理は早期の解散についてどちらかと言えば否定的だったと思いますが、実際は早期の解散となりました。理由は何が考えられますか。
「選挙に勝てるか、勝てないかが基準になっていると思います。石破首相は議論がお好きな方なので、議論をしたかったのかもしれませんが、時間をかけている間に野党共闘が進む、あるいは自民党の中で反石破に何か動きがあるかもしれないと考え、早期解散に踏み切ったのではないかと思います」
――石破総理は納得のうえで踏み切っているのでしょうか。
「自分が首相を務めるためには、議会で過半数の支持を得る必要があります。そういった意味での妥協といいますか、理想を追求する面と選挙に勝つという現実的な面の折衷案だと思います」
――理想と現実の狭間で、結局変わり身をしてしまったんですか、と。
「そうですね。しかし、有権者の声を聞くことは決して悪いことではありません。総理大臣が変わりましたので、早期に解散をすることは石破さんとしても納得しているのではないかと思います」
――有権者は何を判断材料にして投票に行ったらいいでしょうか。
「今、自民党に対する批判がとてもクローズアップされていますが、政権交代のことを考えると、野党は政権をとったら何をするのか。石破さんはお金の問題以外で何をしようとしているのか。特に地方重視が表に出ていますが、都市部の方は地方以外にも目を向けてほしいと思うこともあると思います。そのような点はしっかりと確認するべきだと思います」