漁業が盛んな三重県の海はいま、海藻がなくなる「磯焼け」が進んでいます。焼けた海を元に戻すため、大規模に行われている公共事業。効果はあるのでしょうか。
【写真を見る】30年コンクリートの塊を沈め続けても止まらない“磯焼け” 三重の海で進む異変 伊勢エビも激減し… 「漁師は勧められない職業」
ピラミッド型のコンクリートの塊、重さは10トン。次々に海へと沈められていきます。空から見ると、数十個が海底に幾何学模様を描いています。
これは、焼けてしまった三重の海を元に戻そうと、30年も続けられている取り組みです。
昔は“1000匹無料配布”するほど獲れていた伊勢エビ 今は…
漁に出るのは、志摩市和具の西世古廉さん33歳。狙いは伊勢志摩・和具のシンボル、伊勢エビです。西世古さんは、漁師一筋40年の父親・光保さんの手ほどきを受ける、まだ見習いの立場。
(西世古廉さん 33歳)
「幼いながら、漁師の人はかっこいいなと思いながら手伝いをしていた。大漁だった時は、なおさらかっこいいですもんね」
沖合5キロに網を入れて置き、翌日引き上げる「刺し網漁」です。
(西世古さん)
「何がかかるか楽しみですね。伊勢エビがかかるといいですけど」
取材した今年3月は、伊勢エビの時期。30年ほど前は獲れすぎるほど獲れて、毎年1000匹を無料で観光客にふるまう「伊勢エビ祭」が恒例行事。まさに、伊勢志摩の象徴でした。
伊勢エビ激減 水揚げはピークの3分の1に
しかし今は、伊勢エビはほとんど獲れなくなりました。代わりにこんな魚が…
(父・西世古光保さん 63歳)
「この“オジサン”という魚の値段がよくなってきた」
沖縄周辺が主な生息域の亜熱帯の魚です。
(父・光保さん)
「昔はこんなにかからなかった」
西世古さんからは、こんな自嘲気味の言葉も…
(西世古さん)
「和具と言えばオジサン。伊勢エビなんて知ったこっちゃない」
県の魚でもある伊勢エビの水揚げは、ピークの3分の1程度にまで減っています。
昔は稼げたが…「今は子どもに勧められない職業」
西世古さんの本業は土木会社のサラリーマン。普段は四日市市で暮らしています。「漁師を継がせたくない」父親の光保さんがそう思う理由は、漁業の先行きへの不安が…
(父・光保さん)
「(昔は)1000万円以上稼ぐ人もいた。それが今は…子どもがやりたいと言っても勧められない職業」
それでも廉さんは…
「やります!関係なし」
漁師は伊勢志摩の歴史と文化を支える象徴そのもの。それを「守りたい」という思いが。
海の異変 “磯焼け”で環境激変
伊勢エビが減ったのは、海底の海藻が激減し砂漠のようになってしまう「磯焼け」のため。伊勢志摩の海は元々、カジメやアラメなどが生い茂る藻場が豊かで、それが伊勢エビやアワビなどを育んできました。温暖化など様々な要因で、海は急速に姿を変えています。
海に潜って生計を立ててきた海女の人々も…
(海女 北井寿々美さん 2025年8月 三重・志摩市)
「平成2年(1990年)くらいからアワビがサザエになった。今年はサザエが獲れない。昔はお金いっぱいになったけど、今はまるっきり」
深刻な「磯焼け」を止めるため 海に沈めたコンクリートブロック
たくさん沈めていたコンクリートの塊は、焼けて砂漠のようになってしまった海に、豊かな海藻を戻すための国を挙げた取り組みです。
(三重県 海づくり班 辻󠄀将治班長)
「コンクリートの表面が小さな多孔質の穴が開いているものもあり、それを漁場に設置して藻場の造成を図っている」
三重県では、30年前から2024年までに27か所でブロックを沈めてきましたが、磯焼けは止まっていません。
特に磯焼けが深刻な志摩市の藻場は、この10年でさらに8割減りました。
沈めたブロックに海藻は定着している?
4月、西世古さん親子の協力で和具の海に沈めてあるブロックの様子を見に行きました。藻場の復活は、西世古さん親子にとっても重要な関心事。
(水中カメラマン 東内宏治さん)
「角張った人工物が見えてきました。大きなコンクリートブロックが、いくつも海底に沈められています」
果たして、海藻は定着しているのか…
(水中カメラマン 東内さん)
「海藻の生え方も非常に少ない感じ」
生えていたのは厄介な海藻「自分らの代では無理だ」
確認できたのは、ピンク色の「カニノテ」という海藻。石灰質で魚などの餌にはなりません。アラメなどの海藻が付着するのを邪魔する厄介な存在です。
(父・光保さん)
「生えてないやろ。やっても無駄。言ったら悪いけど…。1~2年で戻る感じと違うやろ。自分らの代では無理だ」
(水中カメラマン 東内さん)
「5年10年でもどうかな…」
30年にわたってコンクリートブロックを沈め続けても止まらない「磯焼け」。それでも海に寄り添って生きていく親子は、きょうも漁へ出ます。


