
「体感160キロ」「魔球のような変化」若者中心にハマる“キャップ野球”とは? 名古屋のチームを取材

10月13日はスポーツの日。野球やサッカーだけではなく、今では多くのスポーツが生まれて、人気を集めています。ふとネットやSNSに目を向けると、「こんなスポーツもあるのか」と驚くことも珍しくないでしょう。今、20代の若い世代を中心に注目を集めている「キャップ野球」もその一つです。

ピッチャーが投げたボールをバッターが打ち返す野球とルールは似ていますが、「キャップ野球」で投げるのはボールではなく、ペットボトルのキャップ。
さらにバッターが使うバットはプラスチック製。私たちが想像する野球に比べてスケールが小さく見えますが、実は数年前から全国大会が開かれ、今では参加チームも40チームを超えるなど、年々人気を集めているんです。
名古屋にもチームが

「全国大会などの大きな大会では、元プロ野球選手を解説に呼んでテレビ局がライブ配信することもあります。競技のレベルも年々上がってきているし、ここ数年でいいピッチャーも増えてきたと感じています」(United Nagoya 後藤有汰さん)
こう話すのは、名古屋に拠点を置くキャップ野球チーム「United Nagoya」の副代表、後藤有汰さん(20)。2024年春、名古屋大学や名城大学などの様々な拠点からキャップ野球の選手たちを集めて「United Nagoya」を創設しました。
「キャップ野球の部活やサークルがある大学も東海地方にあるんですが、試合や練習するにはそれだけでは足りないのが現状です。なので、それらが集まって試合に出場できる連合チームとして『United Nagoya』を作りました」
30人ほどが在籍するこのチームは、去年行われた全国大会「兵庫蓋ノ陣2024」でベスト8を飾っています。
キャップ野球とは?

そもそもキャップ野球とはどういうスポーツなのか。
2022年に発足した日本キャップ野球協会によると、キャップ野球は基本的に1チーム5人(ピッチャー・キャッチャー・内野手×2・DH)で行うスポーツで、ピッチャーからホームベースまでの距離は9.22m。ファールラインの全長は13mと非常に小さなフィールドで行います。
野球のピッチャーからホームベースまでの距離が18.44mなので、その間でキャップ野球ができると考えると、その小ささを実感できるでしょう。
両チームは攻撃側と守備側に分かれて点数を取り合う所は野球と同じですが、ランナーはおらず、野球盤のようにバッターが打ったキャップの飛距離に応じてアウト・ヒット・ツーベース・スリーベース・ホームランが決まります。
ピッチャーの後ろにいる2人の内野手は打者が打ったキャップが少しでも遠くに行かないように妨害して守備をします。
ストライク・ボール・アウトカウントは野球と同じで、3アウトで攻守交替。それを交互に6回まで繰り返して最終的に合計点数の高いチームが勝利となります。
投げ方はデコピンの要領で

ボールとキャップでは投げ方も違います。キャップを親指と中指で挟んで構えたのち、デコピンの要領ではじいて投げます。
さらに、キャップの表裏やリリースの角度、はじき方を変えることなどで様々な変化球を投げることができます。
魅力は変幻自在のピッチング

そしてこのピッチングこそが、キャップ野球の魅力だと後藤さんは話します。
「野球よりピッチャーとバッターの距離が近いので、体感速度で言うと、160キロくらいのスピード感で臨場感があるし、下手したら変化球の方がストレートより速いこともあります。変化球が簡単に投げられて、すごく大きく曲がる魔球のような球を自分の手で投げられる。そういう所にロマンがあるなと思います」(後藤さん)
ピッチャーが投げるキャップの速度はだいたい70~80キロほどだといいます。それでも野球経験者の筆者が打席に立って体験してみると、ストレートでも目で追うのがやっとなほど。変化球に至っては、野球のどの試合でも見たことがないまさに“魔球”のような切れ味で、バットに当てることすらできませんでした。
誰でも気軽に

キャップ野球の魅力は他にも…。
「キャップ野球は普通の野球と比べて身長やパワーに寄らないというか、身長が低くても、野球を経験していなくてもすごいピッチャーはゴロゴロいるので、競技のハードルは低いかなと思います」(後藤さん)
「United Nagoya」には後藤さん含め、野球経験者の大学生も多く在籍していますが、野球経験や年齢に寄らず、どんな人でも楽しめると後藤さんは話します。
「もともと卓球部ですが、野球も好きなんです。でも大学の野球部はレベルが高いなと思って…。キャップ野球では卓球部で培った反射神経を生かして野球ができるので、すごく楽しいです」こう話すのは、卓球部出身の松岡哉知さん(19)。
「中学時代にキャップ野球をYouTubeで見て、カッコいいなと思って参加しました」と語る森柊磨さん(16)は、なんと高校生。学校の放送部と掛け持ちして練習に参加していると言います。
実際に彼らは試合でもピッチャーを務めることがあるそうで、チームでも大きな戦力となっています。
ちなみに、一般的に男性が多いですが、全国的には女性の選手もいて、男子に混ざって公式戦に参加することもあるそうです。
東海地方では実質1チーム

魅力が満載で広まりつつあるキャップ野球ですが、それでも東海地方でキャップ野球の大会に出場しているチームは「United Nagoya」のみ。キャップ野球サークルがある大学はありますが、東海地方で活動しているのは実質1チームとなっています。
「チーム数が少ないので、大会や試合などで関東や関西に遠征することも多いです。でも、それで日本全国の人と交流できる機会が多く、そこはやっていてよかったと思います。最終的には競技人口が増えて、東海地方でも各大学ごとにキャップ野球のチームができるのが理想なので、これからもキャップ野球の魅力を発信していきたいと思います」(後藤さん)
ちなみに大学生が中心の「United Nagoya」ですが、年齢問わずメンバーを募集していて、中には中学生や20代の社会人もいると言います。
気になる方はX、インスタグラムのDMから連絡を受けつけているということです。
(メ~テレ 杉野公祐)