“モネの池”舞台のご当地映画『名もなき池』でトラブル 主演俳優・伊達直斗さんが怒り「この台本ChatGPTで書いた、って言われた」「想像した通りグズグズに」 岐阜・関市

岐阜県関市が補助金2000万円を出して制作を依頼した、ご当地映画を巡りトラブルが起きています。
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出演料の未払いや、市の了承なしでの公開。主演俳優がCBCテレビのインタビューに応じました。
「映像を見て『えー!』って。びっくり、がっかり」
芸歴42年のベテラン俳優、伊達直斗さん59歳。伊達さんは主演を務めた一本の映画に不信感を募らせています。
(俳優 伊達直斗さん)
「しゃべっている2人がいて、1人が半分しか映っていない。このカメラ、ズームできないんです(と言われた)。ズームできないカメラで映画撮るわけ?(出演料は)半分もらったっきり。残りの半分はもらっていないです」
問題の作品は岐阜県関市の“ご当地映画”として制作された「名もなき池」。
エメラルドグリーンの水中を魚が泳ぐ様子が印象派の画家モネの作品に似ていると人気の通称「モネの池」を題材に、刃物の町関市の刀鍛冶を描いた作品です。制作を依頼した関市も街のPRに大きな期待を寄せていましたが…。
(報告:吉田翔 記者)
「市役所も撮影に使われたという、ご当地映画を巡って今トラブルが起きています」
コトの始まりは、おととしの春。市が観光PRを目的に映画の企画を募集し、採用された作品の1つが「名もなき池」でした。
内容を確認できないまま上映へ…
市は、この映画を企画した兵庫県の会社「イロハスタンダード」に制作費として、おととし8月と去年12月に1000万円ずつ、合わせて2000万円の補助金を支給しました。
しかし、どんな作品になったのか確認もできないまま、映画の上映が行われようとしているのです。
(関市 森川哲也 副市長)
「誠意ある対応が見られていない」
(市の担当者)
「(2000万円を)回収できなければ法的手段に出ます」
主演を務めた伊達さんは…。
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「アングルが最悪。カメラがぶれている。想像した通りグズグズになってしまった」
伊達さんは通常の映画制作では考えられないことばかりだったと話します。
人工知能が書いた台本は「感情もなければ何もない」
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「現場に行ったら『この台本、ChatGPTで書いた』って言われた。それで、こんなに(内容が)薄っぺらな台本なんだと思った」
撮影前にスタッフや出演者に渡された脚本。表紙に「ChatGPT」の文字が。
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「苦痛になりながら読んだレベルの本で、人間が立体的に描かれていない、感情もなければ何もない」
映画として成立させるため、主演俳優である伊達さんが、脚本のほとんどを修正しました。
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「衣装と呼べる人がいない。美術小道具がいない。照明部がいない」
衣装や照明などのスタッフがおらず、出演者の多くは私服で撮影。さらに…。
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「突然、撮影がなくなることがあるんですよ。次は温泉で撮影だが、連絡が来て温泉で撮影できないって。前もって言っておらず、そのシーンが撮れなくなった」
そして俳優にとって重要なアレも。
伊達さんは今月上旬に監督と連絡が取れなくなり、1月に支払われるはずの残りの出演料は未払いのままです。
市は補助金2000万円の返還を求める方針
こうした状況に制作費を出した関市では。
(関市議)
「映画の内容は確認したわけでしょ?全然していないんですか?」
(市の担当者)
「市としては内容は把握していません」
(関市議)
「なぜ外部の審査員を入れなかった?」
(市の担当者)
「理由はございません」
(関市議)
「現地(イロハスタンダードの本社)に訪問した?」
(市の担当者)
「私は行っておりません」
「私も行っておりません」
関市のチェック体制にも問題はありそうですが、市は映画をつくったイロハスタンダードに補助金2000万円の返還を求める方針です。
(市の担当者)
「このような事態になってしまったことについては申し訳ないと思う。関市に興味を持ってもらえる映画を期待したけど、このような結果になり非常に残念」
こうした状況に関市民は…。
(関市民)
「市の職員が本気で企画したのか(疑問に)感じた。そうすれば本当にいい作品を作ろうという姿勢で対応できたと思う。がっかりした」
「映画を作ることを知らなかった。(2000万円の)返還は必要だと思う」
「見に行かないですよ。見たら血圧上がりそうで」
こうした中で渦中の映画「名もなき池」は、あさって兵庫県は淡路島の映画館で初公開される予定です。
しかし、主演俳優の伊達さんは…。
(名もなき池 主演 伊達直斗さん)
「(完成した作品は)見ていないです。編集に手伝いに行くと何度も言ったけど一切無視。(初上映は)見に行かないですよ。見たら血圧上がりそうで。楽しみにしているよという方がいたので、こんな形になり申し訳ない」
マイナスの評判ばかりが先行している“ご当地映画”。公開で作品そのものが、どんな評判を呼ぶのかにも注目です。