
「ここは秘密の場所なんです」男子禁制! 潜水艦「はくげい」にある“カギ付き”の女性専用の居住区へ

女性の社会進出は防衛の世界にも広がっている。2018年に性別制限が完全撤廃されたことで、最新鋭の潜水艦「はくげい」にも3名の若い女性隊員が任務についていた。
潜水艦への配属 “女性”に門戸開く

「はくげい」はディーゼルエンジンで発電し、リチウムイオン電池でモーターを駆動する。そんな大事な心臓部を守るのが、女性隊員の片山3曹。「はくげい」の点検や保守を任されている。

2人目は潜水艦の指揮を執る発令所で、電測員を務める博田3曹。レーダーや電波探知装置を使い、目標の捜索や解析を担う。
どのような思いから、潜水艦の乗組員を志すようになったのだろうか。
博田3曹:「潜水艦は海上自衛隊の中でも、ほとんどの行動が“秘”にあたりますので、何をしているんだろう、乗りたいなって思ったんです」

そして「おつかれさまです!」とはじける笑顔で迎えてくれたのが、堺3曹。物資の調達や配布を担う「補給員」で、彼女たちがいなければ鉛筆1本すら支給されないという。
堺3曹:「女性で補給員として乗っている人がいなかったので、どんな所なのか自分の目で見てみようかなと思って」
性別制限が撤廃されたとはいえ、現在1800人ほどの潜水艦乗組員のうち、女性の数はまだわずか。だが、その扉が開いたことに、好奇心溢れる彼女たちはやりがいを感じているようだ。
男子禁制! カギ付きの女性専用の居住区

女性隊員が増えたことで、潜水艦の住環境も改善されていた。
堺3曹:「ここは、はくげいの秘密の部屋なんです」
案内されたのはカギの付いた“極秘空間”。そこは男子禁制、女性専用の居住区だ。
堺3曹:「気を使う部分もあるので、女性だけの場所があるというのは、やはり安心できます」
さらに男性乗組員にも、意識の変化が芽生えていた。
男性隊員:「今まで男所帯でやっていたので、シャワーから出てきたらパンツ一丁とかあったけれど、それはちょっとマズいなと」
男性隊員:「清潔感ですね。身だしなみに気を付けています。少し臭かったら気になるかなと」
潜水艦乗りの信条 「Know Your Boat(己の艦を知れ)」

陽が落ちると、艦内の様相は一変する。窓のない潜水艦では、昼夜の区別がつくよう、夜は赤色灯に変わるのだ。ある夜、赤く照らされた艦内を回る博田の姿があった。手にはチェックリスト。当直員として、計測器など200を超える個所を点検していた。持ち場でない機械類も知ることで、潜水艦の知識が深まっていくという。
前田艦長:「一度、潜水艦に入ったら一蓮托生です。だから自分の持ち場だけでなく、エンジン関係からバルブ1本にいたるまで、すべての場所を知る。さらに言えば、一緒に働くクルーがどういう人間なのか、そういうこともすべて知ることが大事なのです」

潜水艦乗組員の共通の信条は、「Know Your Boat(己の艦を知れ)」。そこには、設備だけでなく、運命を共にするクルーの気持ちに寄り添う意味も含まれている。
航海訓練では、新米の女性隊員に「声が小さい、もう一度」と檄も飛んでいたが、わからないことを相談できる環境が不安を和らげているようだ。潜水艦勤務を希望する女性は、今後増えていくかもしれない。





