
“警察かたる詐欺電話”に番組スタッフが出てみたら 相手は「捕まえる」と脅し文句も… 巧妙な“だましの手口”とは

最近被害が急増している警察をかたる詐欺電話。何を、どのように要求されるのか。番組スタッフにもかかってきた、詐欺電話に出て分かった「だましの手口」とは。
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(愛知県 大村秀章 知事)「特殊詐欺の手口は、簡単に見破れないほど巧妙化している。年齢を問わず、誰もがターゲットになる可能性がある」
愛知県ではことしに入り特殊詐欺の被害が急増していて、3月末までの被害額は実に13億6000万円。去年の倍に上ります。
特に今増えているのが、警察をかたり、金をだまし取ろうとする国際電話。
詐欺電話は幅広い年代に…中国出身の人にも
(80代)
「(かかってきたことが)あります。自宅の電話にもあります。これ(スマホ)でもありますけど、外国の数字とか…」
「(Q:国際電話?)国際電話。初めから取らないです」
(30代)「中国の番号からかかってきたことがあります。出たことはないです。これオーストリア。怪しいなと思います。知らない番号は基本出ないです」
中国出身の女性は…
(中国出身(40代))
「(詐欺電話は)たくさんあります。あり過ぎてびっくりしました。『お久しぶりです』とか中国語で話してきて、『日本で困っていて電話しました』って…。『私の名前言えますか?』って(聞くと)、『王さんですよね?』って…、(私は)王じゃないし!」
「(Q:警察官をかたる詐欺電話が増えているが…)それは中国は昔からあるから。1回(電話が)あって、日本でも始まったと思って。『古いですよ』と言ったら、相手は『ん?』と言って」
“警察を名乗る男”の電話に出てみたら…
ことし3月、番組スタッフのもとに1本の電話が…
その実際の音声が…
(通話相手)「もしもし…私、岡山県警捜査二課のタナカといいます」
「岡山県警捜査二課のタナカ」を名乗る男。スタッフの名前や住所も知っていました。犯罪の証拠物件からスタッフ名義のカードが見つかり、関与が疑われると話します。
(ニセ岡山県警)「これからこの事件について、詳しく説明していきたいと思うんですけど。お時間をつくっていただけるのは、お間違いなかったでしょうか?」
(番組スタッフ)「どのくらいかかるんですかね?」
(ニセ岡山県警)「だいたい1時間から1時間半くらいですかね」
(番組スタッフ)「そんなには、ないかなぁ…」
(ニセ岡山県警)「じゃあ捕まえに行きます」
(番組スタッフ)「捕まえるって…」
番組スタッフの対応に態度がひょう変…
(ニセ岡山県警)「うん、捕まえるよ。逮捕」
(番組スタッフ)「捕まえるって、幼稚園児みたいな話ですね」
(ニセ岡山県警)「逮捕・起訴」
(番組スタッフ)「何の容疑で?」
(ニセ岡山県警)「は…?」
(番組スタッフ)「その前に捜査するなら、捜査する義務があるでしょう?」
(ニセ岡山県警)「その前にじゃねぇんだよ!」
(番組スタッフ)「『その前にじゃねぇんだよ』って、どういうことですか?」
(ニセ岡山県警)「その前にじゃにないです、はい…」
(番組スタッフ)「『その前にじゃねぇんだよ』って言いましたね?」
(ニセ岡山県警)「はい、言いましたよ」
(番組スタッフ)「これ、岡山県警に言いますよ?岡山県警の捜査二課って言いましたね?」
(ニセ岡山県警)「はい…」
(番組スタッフ)「岡山県警の捜査二課の電話番号を教えてください」
(ニセ岡山県警)「(電話を切る)」
通話時間は、47分41秒。相手は金を要求する前に一方的に電話を切りました。
警察からと思わせるための『110』
こういった特殊詐欺の調査や対策を請け負う名古屋市中区の「トビラシステムズ」。番組スタッフが受けた電話についてこう話します。
(トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん)
「(番号の)頭が『+』で始まって、『+88』から始まっていて、これは日本国内ではなく海外の電話番号。末尾が『110』となっていて、警察では末尾が『0110』や『110』など、110番を思わせる番号が使われることが多いが、警察からの電話だと思わせるために、末尾に『110』を使った番号」
詐欺電話は、以前は「050」から始まるIP電話が多かったものの、おととしあたりから追跡しにくい、国際電話が急増。
さらに、警察を連想させる末尾「0110」からの着信は、去年に比べ約850倍にも増えています。
先月には、ミャンマーを拠点に、警察官をかたる詐欺電話で現金をだまし取った疑いで、日本人の男2人が逮捕されるなど大規模な詐欺組織は、今や海外から狙っているのです。
(トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん)
「警察をかたることで権威を示されるので、それで信じる一つの要因になってしまう」
詐欺電話 やりとりの実態は…
これはトビラシステムズが記録した詐欺電話。発信元は中国の成都です。
(ニセ携帯電話会社)「はい、こちら(携帯会社名)カスタマーセンター担当ヒラモトがお伺いいたします」
(調査会社の女性)「あ…もしもし」
(ニセ携帯電話会社)「この番号から迷惑メールの送信、また被害の通報を受けていまして。携帯電話の不正利用・不正契約がされている可能性があります」
(調査会社の女性)「はい」
(ニセ携帯電話会社)「福岡県警察本部捜査二課に内線番号で緊急通報としておつなぎいたします」
こう話すと、携帯電話会社から「内線」で「福岡県警」に電話をつなぐ「ありえない展開」に。
(ニセ福岡県警1)「福岡県警本部。事件ですか?事故ですか?」
(調査会社の女性)「事件です」
この詐欺電話、携帯電話会社・福岡県警・警視庁といった複数の人物が次々登場する「劇場型」と呼ばれる手口。警察官を名乗る男に指示され、LINEのビデオ通話でやりとりを続けることに。
すると…
(警察官を名乗る男)「いったんですね、私が警察手帳見せますね」
男が偽物の警察手帳を見せてきます。
巧妙に不安をあおる詐欺の手口
(トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん)
「偽物の警察手帳を見せるとか、偽物の逮捕状を見せて信じ込ませる。そのためにビデオ通話を悪用する手口」
さらに、事態は急展開。
(ニセ警視庁)「こちら警視庁にのヤマザキ。緊急連絡になります」
(ニセ福岡県警1)「こちらサトウ。どうぞ」
(ニセ警視庁)「別件にて捜査中のマネーロンダリング事件に関与あり。大規模なマネーロンダリング事件の口座関与のため、直ちに取り調べを行い調書は検察および警視庁に送信願います。また本事件の捜査を拒否した場合、特別捜査本部が強制捜査をし、逮捕・拘留・口座凍結となります。どうぞ」
(ニセ福岡県警1)「犯罪に使った銀行の通帳とキャッシュカードが200点以上押収されています。その中からですね…(女性の名前)さん名義のカードと通帳が検察官に押収されています。こちらって身に覚えないですか?」
(調査会社の女性)「身に覚えないですね」
犯罪に関与したと逮捕をちらつかせ、不安を煽るニセ警察官。
そして…
別のスタッフが受けた詐欺電話でも…
(ニセ福岡県警1)「捜査をするにあたって、金融リストの作成を行います。そうしましたら、おおよそでいいので(口座に)入っている金額を伝えてください」
(調査会社の女性)「300万円ぐらいだったと思いますね」
最終的には捜査の名目で、指定された口座にいったん300万円を振り込むよう要求してきました。
(トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん)
「『あなたが犯罪に巻き込まれている、容疑がかかっている』ということで、『あなたのお金の流れを調査します』ということで、専用の口座に振り込むよう指示される。信じてしまうと、そこに振り込んでお金をだまし取られる」
そしてもう一つ、これは別の番組スタッフが受けた詐欺電話です。
(通話相手)「お疲れさまです。外で大丈夫ですか?今イヤホンか何か付けられている状態ですか?」
(番組スタッフ)「今イヤホン付けて電話しています」
(通話相手)「うん、分かりました」
警察官をかたる男は“LINE”を通じて、指定口座に220万円を振り込むよう指示してきました。
怪しいと思ったら接点を持たない
(ニセ岐阜県警)「さっそくやって終わらせてしまいましょう。UFJ(銀行)のアプリ、起動させていただけますか?」
(番組スタッフ)「はい、起動させました」
(ニセ岐阜県警)「では宛先をお伝えします。×××銀行×××支店普通口座…。口座名義人を確認して、こちらに教えてください」
(番組スタッフ)「岐阜県警の方でしたよね?名前だけもう一回聞いていいですか?すみません、不安なので…」
(ニセ岐阜県警)「オオクラサトシと申します」
(番組スタッフ)「さっき警察に行ったんですけど…詐欺ですよね?これ
(ニセ岐阜県警)「…。(電話切られる)」
(番組スタッフ)「切れちゃいました」
(トビラシステムズ セキュリティリサーチャー 柘植悠孝さん)
「話せば話すほど相手の巧妙な話術に乗せられてしまうので、接点を持たない。怪しいなと思ったらすぐ切る」
トビラシステムズでは、先月から国際電話と末尾が「0110」の番号に自動で警告文を表示したり、着信拒否したりする詐欺対策のサービスも始めています。
警察をかたり、金をだまし取る悪質な詐欺電話。携帯電話を持っているだけで誰もが被害者になりうる状況が広がっています。